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シャウトの仕方ない日常  作者: 鏡野ゆう
異世界ブルーインパルス~異世界で稲作はじめました?

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第七話

「今日はこいつらの磨き作業をやってみようと思ってるんですよ」


 神森の言葉にドラゴンを見る。今は行儀よく横一列に並んでいるが、気が合わない者同士が並んでいる場所もあるようで、ガウガウと言い合いをしているドラゴンもいる。鼻からは火がチロチロと出ているし、いつまで大人しくしていてくれるのか不安な状態だ。


「できるんか? おとなしゅう磨かれてくれそうにないけど」

「まあブルーの機体と違って生き物ですからねえ」

「キーパーというより動物園の飼育係やな」

「言われてみればそうですね。飼育係なんて小学校のメダカのお世話係以来です。こっちに来る前に、動画サイトで動物園の日常業務を見ておくべきだったかも」

「それ、あまり参考にならへんような」


 あえて参考にするとすれば、象とかシャチの飼育係ぐらいか?


「機付長、持ってきましたよ~~」


 坂崎が四駆の後ろにリヤカーをつけて引っ張ってきた。そこにはブラシやバケツなどが山積みになっている。


「夢や思うて好き放題やな」

「さすがに魔法で転送とかできないみたいなんで、ここは地道にリヤカーに乗せて引っ張ってきました」


 ニコニコしている坂崎の言い分にあきれてしまった。


「一体どのへんが地道やねん。四駆でリヤカー引っ張るて、おうちゃくしまくりやん。それで? ホースはあるみたいやけど、かんじんの蛇口はどこにあるん?」

「隊長の夢だから、そのへんにあるだろうって班長が言ってました」


 ドラゴンたちが並んでいる場所から少し離れた位置を指でさす。


「ほんまかいな~~」


 いくら隊長でも無理なのでは?と思いつつ、坂崎の指が向いたあたりの地面を探す。すると雑草の間に金属性のフタがあるのを発見。フタを開けてみるとちゃんとした水道付きの蛇口がある。


「おお、あるやん。これ、さすが隊長なんか班長なんか、どっちやろな」

「なんとなく班長な気がしますけどね」

「せやんなあ」


 ベースは隊長の夢だが、そこに青井の夢が干渉しているといった感じか。まだ二回目だというのに、なかなか複雑な夢構造になってきた。


「そのうち隊長の夢が乗っ取られたりしてな」

「あー、それ否定できないっすね。田んぼづくりでも班長、あれこれ必要なのに道具が足りないって大騒ぎなので」

「やっぱり隊長、そのうち熱だしそうやわ」


 そんなことを呟きながらリヤカーに積まれている道具類をのぞき込む。


「お、亀の子たわしもあるやん」


 俺がそれを手に取ると、五番機君がガウガウ言いながら近寄ってきた。本人は軽くジャンプしているつもりなんだろうが、その巨体のせいか着地するたびに地響きがはんぱない。五番機君がジャンプするたびに、リヤカーの中身も一緒に飛び跳ねた。


「あかんあかん、リヤカーの中身が飛び散るやん!」


 俺が注意してもどこ吹く風な様子のまま、こっちに顔を突き出してくる。


「なんやねん。これはたわしや、食べるもんちゃうで?」

「それ多分、たわしでこすってほしいんだと思いますよ」

「ほんまかいな。やったとたんに怒って火を噴いたらどないすんねん」

「ほら、水族館の動画でもあるじゃないですか、カメさんの甲羅をたわしでゴシゴシするやつ。それと同じですよ」


 言われてみればそんな動画を見た記憶がある。だが目の前にいるのは亀ではなくドラゴンだ。亀なら手足をばたつかせてもそれほどダメージをくらわないだろうが、目の前にいるヤツがばたついたらシャレにならない。


「夢でもダメージくらったら死にそうやん?」

「大丈夫ですよ。そのまま何もしないでいるほうが、腹を立てて火を噴きそうじゃないっすか」

「なにかあったら責任とってくれるんやろな、坂崎君や」


 そう言いながら、おっかなびっくりたわしを五番機君の鼻先にもっていく。たわしを見た五番機君は、顔を横に振ると首をこっちに見せた。


「そこをこすってほしいみたいです」

「あー、なるほど。ここは足も手も届かへん場所やもんな。りょーかいや」


 たわしで首をこすってやると気持ち良さそうに目を細める。鱗があるのできれいにするにはそれなりにコツが要りそうだが、痒い場所を掻くだけなら問題なさそうだ。それを見ていた他のドラゴン達が騒がしくなった。どうやら自分もやってほしいらしく、騒ぎながら全頭がこっちに近づいてくる。


「おいおい、それはあかんと思うわ。そっちはそっちでやってもらわんと」

「ですよね。それぞれの担当キーパーはここの道具をさっさと持って行くように! 早くしないとうちの五番機組が圧し潰されて大変なことになる!」


 神森が指示を出した。それぞれのキーパー達が道具を持って、こっちに来ていたドラゴンを元の場所につれていく。どのドラゴンもキーパー達にゴシゴシしてもらって気持ち良さそうだ。すぐ隣の六番機君は爪を切ってもらっているようで、器用に片足で立っている。


「お化けみたいなニッパーがあるのは爪を切るためなんか」

「葛城さん、こっちに残っていたらドラゴンの爪を切れたのにって、めちゃくちゃ残念がりそうですよ」

「たしかに」


 葛城が田んぼ作業から戻ってきたら、さっそく話して聞かせてやらな。

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