表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャウトの仕方ない日常  作者: 鏡野ゆう
異世界ブルーインパルス~異世界で稲作はじめました?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/77

第四話

「ふぁぁぁぁぁ?!」

「どうしたの?!」


 俺の声に嫁ちゃんが驚いて一緒に飛び起きてた。


「めっちゃすごい夢みたわ。なんやドラゴンみたいなんで飛んでたで」

「え、それすごく楽しそう。私も一緒に見たかった」


 それはちょっと無理やと思うわ、と思いつつ、隣で爆睡している息子に目を向ける。


「あんだけ大声で飛び起きたのに目を覚まさへんて、みっくん、なかなかの大物ぶりやな」

「だよね~~」


 窓のカーテン越しに外が明るくなってきているのがわかった。もう二度寝は無理な時間やなあ。


「もー寝られへんわ。せっかくやし今日は俺が朝飯つくるわ」

「わーい、お任せしちゃお~~」

「はいはい、ほな、もうちょっと寝とき」



+++



「おはようさ~~ん」


 いつものようにブリーフィングルームに入って声をかける。すると、すでに来ていた葛城がこっちに顔を向けた。なんやめちゃくちゃ笑顔やけど、どないしたんや?


「あ、おはようございます。聞いてください、今朝、すごい夢を見たんですよ。それも俺だけじゃなく全員が」


 ニコニコしながら話しかけてきた。


「それってもしかしてドラゴン出てきたやつちゃう?」

「それです。もしかして影山さんも?」

「バーティカルクライムロールして飛び起きてもうたわ」

「あ、俺達もそこでの影山さんの叫びで目が覚めました」

「俺達? もしかして全員が同じ夢みたん?」


 その場にいた全員がウンウンとうなづく。


「なんとまあ。てことは、今回の夢はあそこで終わりっちゅうことなんか」

「で、班長はご立腹です」

「へ? なんでなん?」

「当たり前だろ? なんであんな中途半端なタイミングで目が覚めるんだよ。色々と計画していたのに台無しだ」

「いや、それ、わいのせいちゃうやん? 夢の配信元は隊長やし?」


 夢の中で話していたことが事実だとするならば、だが。


「沖田、今夜は絶対にあの夢の続きを見ろよ?」

「無茶を言うな」

「俺は夢の中でも忙しいんだからな」

「だから無茶を言うな」


 隊長が青井の剣幕にタジタジとなっている。


「今夜も娘さんとまた同じ映画を観たらええですやん?」


 俺がそう言うと隊長は大きなため息をついた。


「言われなくても続きは観る。昨日は途中で娘が寝てしまったからな」


 その場の全員が「ナイス、娘ちゃん」と呟いたのは言うまでもない。


「で、班長の計画てなんなん?」

「もちろん夢の中での俺達のフライトに関することさ」

「もちろんなんや……」

「当然だろ。そういうことに気をかけてこその総括班長だからな」


 相手は隊長の夢で、しかも異世界なんやけどな。まあ青井らしいっちゃ青井らしいが。


「だそうですわ、隊長」

「……好きにしてくれ。そのへんは青井に任せる」

「てことで隊長のお許し出たで」

「じゃあまずはドラゴンなんだが、夜間飛行に備えて小型ランプを作ろうと考えている」

「もしかしてナビゲーションライトのことですか?」


 葛城が質問をする。


「当たり。ちょっと調べてみたんだけど、海外の警察騎馬隊では、暗くなってからのパトロール用に馬の尻尾にライトをつけてるんだ。あんな感じのを目指している」

「へえ、初耳です。なんだか楽しそうですね」

「だろ?」

「だが電源はどうするんだ?」


 現実主義の隊長が質問をはさんだ。


「そこは沖田の夢だからな。なんとかしてもらう」

「誰に?」

「もちろんお前に決まってるだろ。まあガンバレ」

「どうがんばるんだ……」


 途方に暮れている隊長を前に、青井はニコニコしている。


「鞍にベルトをつけるところまで思いついて夢に反映されてるんだ、そのぐらい何とかなるだろ?」

「何とかなるようなことなのか?」

「そりゃなるだろ、お前の夢なんだから」


 隊長が俺を見る。なんでそこでこっちに目を? 良い案が浮かばないので、とりあえずは無責任に応援しておくことにした。


「がんばれ隊長!」

「……」

「ああ、それとだ影山」

「え、わい?」

「そう、お前のほうも色々と問題がある」


 一体どんな問題が? ああ、五番機君が鼻から火を噴くことか。たしかにあれは問題だ。


「これからは沖田には、俺の提案に対処してもらわないといけない」

「ほうほう」

「だから無限おにぎり出現まで気にかけるヒマはないと思うんだ」

「わい、夢の中でも嫁ちゃんのおにぎり食わな飛ばへんで」

「それは分かってる。そこでだ」

「そこで?」

「あの草原に田んぼを作ろうと思う」


 は?


「……なにを作るて?」

「田んぼだよ田んぼ。農業したことないけど夢の中なんだ、どうにかなるだろ。場所だけはあるからな」

「俺の夢の中で稲作するな」

「俺はいろいろと忙しいんだから、自分で食べるおにぎりの準備くらい自分でしろよ?」


 隊長のボヤキは無視された。


「準備て稲から育てるんかい……」

「水の確保が大変そうですね。日本の場合は水稲(すいとう)ですから」

「オール君、なに冷静にゆーとんねん」

「寝る前に稲作の手順を調べておかないと」

「だからなんでそんな冷静に」

「安心してください。ドラゴンで忙しい班長の代わりに、俺と影山さんで稲作はなんとか進めていくので!」

「任せたぞ、オール君!」

「はい!」

「だからなんで……」


 夢の話なのに、なんでそんなに具体的に計画が進んどんねん。しかも何気に全員が乗り気やし。


「勝手に俺の夢で稲作するな……」

「じゃあそういうことで!」

「……」


 いや、隊長は完全に巻き込まれやな……ご愁傷さんやで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ