ゼロ
第3話です!
なかなか戦闘シーンが難しい!
頑張って書いてますので感想ください!!
待ってます!
「起きてください航さん。おーい。航さんったら起きてくださいよー」
「うーん、あと五分・・・。」
俺はモゾモゾと布団の中に潜ろうとする。
しかし、日向ちゃんは俺の布団をぐいぐい引っ張って、惰眠を貪る俺を叱る。
「朝ごはんできてますので早くしてください!」
「うーん・・・。」
「そうですか。起きないですか。それなら・・・。」
そこで日向ちゃんの言葉が途切れる。
ん?なんだ?日向ちゃん。やけに静かになったな。今がチャンス!
俺は再度眠りに落ちていこうとする。
だが、彼女がそんなことを許してくれるはずもなかった。
ビリッ!
寝ている背中を強烈な痛みが襲う。
「うひゃあ!なな何をした?」
「さあ?なんでしょう。まだ寝たり無いというなら永遠に眠っていただこうかと思いますが・・・。」
「いえ!起きます!起きますので許して!」
「起きてくれてよかったです。では、朝ご飯もうできてるので、顔洗ったらすぐにリビングに来てくださいね。」
そう言って部屋から出て行く日向ちゃん。
今なら二度寝できるかもと思ったが、さっきの謎の痛みで目が覚めてしまい眠れそうにはない。
俺はハアと一つため息をつき、ノロノロとリビングへと向かった。
リビングの食卓には豪華な朝ごはんが並んでいる。
贔屓目なしに美味そうだ。
俺は日向ちゃんの向かいにある椅子に座る。
「美味そうだな。」
「はい。美味しくできていたらいいんですけど。では、頂きましょうか。」
「おう。」
「「いただきます。」」
二人で一緒にいただきますを言い朝食を食べ始める。
俺はまずは味噌汁を一口すする。
「お、うまいな。この味噌汁。俺好みだ。」
「え!本当ですか!ありがとうございます。嬉しいです!」
「でも、意外と言っちゃなんだけど日向ちゃん料理できたんだな。」
「ええ。このひと月で特訓しました!」
エヘヘと笑う彼女に俺は不覚にもドキドキしてしまう。
マジかよー!
俺のために料理練習してくれたとか日向ちゃん健気すぎて惚れてしまいそうだぞ。
この子、絶対良いお嫁さんになる!
俺が言うんだから間違いない!(根拠なし)
「日向ちゃんは良いお嫁さんになりそうだな。」
「え・・・」
しまった。思っていたことがポロリと口から滑ってしまった。
「あ、いや変な意味とかではなく単純にそう思っただけなんだけど・・・。」
「いえ!感激です!私将来は好きな人のお嫁さんになって、いつまでもラブラブに暮らすことが夢なんですよ。だから、良いお嫁さんになれるなんて言葉うれしすぎて泣いちゃいそうです。」
「お、おう。そうか。それはよかった。」
「まあ、航さんのお嫁さんにしてくれても良いんですけどね・・・。」
チラチラッと俺に意味深な視線を送ってくる彼女だが、俺は目をそらし、ごまかすためにもう一度お味噌汁をすすって「うまい」などと小さくつぶやく。
彼女はそんな俺の態度に不満だったのか「むー」と言いながら頬を膨らましている。
いや、そんな顔されても・・・。
そりゃあ、日向ちゃんみたいなかわいい子に求婚まがいのことをされてうれしくないわけ無いよ。
だけど、彼女、本来なら中学生に通う年齢なんだよな・・・。
俺は高校生。
そして残念ながら俺はロリコンではない。
彼女を恋愛対象に見ることができるのはまだまだ先の話だろう。
成長した日向ちゃんに期待しながら俺は残りの朝食を食べ進めた。
その後俺たちはあっという間に朝食を終え、お茶をすすっている。
すると、日向ちゃんが俺に向かって
「航さん。今日は日曜日ですけどなにか予定はありますか?」と聞いてくる。
予定はない。
ぶっちゃけ今日に限らずほとんどの休日がそうだ。
俺は知合いが絶望的なまでに少なく片手で足りるほどの人数でありしかもそいつらの大半が根暗で、およそ人と遊んだりなんかしない奴ら。
俺自身もインドア派なので積極的に外出などしない。
だから休日に予定なんか入るわけないのである。
しかし、ここで素直に「ないよ」と言えたら良いのだろうが、俺の中にあるちっぽけなプライドがそれを邪魔する。
「いやー、今日はたまたまなんの予定もないよ。本当にたまたま、偶然なんだけどね?」
「ふーん、そうなんですか。たまたまなんですか。」
彼女は懐疑的な表情である。
「うん、たまたま。」
なんかばれてる気もするけど押し通す。
「まあ、良いです。それなら、今日は私の行きたいところにつきあってください。」
「おう、別に良いがどこに行くんだ?」
「えっとですね、私ここに身一つで来ちゃったので服も何もないんですよ。だから生活に必要なものを買い揃えにいこうかな、と思いまして。」
「なるほど、それは行かないとダメだな。そんじゃあ、朝食片付け終わったら行くか?」
「あ、はい。片付けは私やるんで置いといてもらって良いですよ?」
「イヤイヤ、片付けは俺がやる。朝食作ってもらってんだからそれぐらいはさせろ。その代わり、昨日の洗濯物を干しといてくれないか?」
「ええ、良いですよ。ありがとうございます!」
「いや、こっちも洗濯物をやってもらうわけだし。おあいこさ。」
「そうですね!おあいこです。」
ふふふと微笑し、洗濯物へと向かう日向ちゃん。
新婚夫婦の生活みたいだ、という感想が頭に浮かんできたがすぐに頭を振って払い落とし、俺は朝食のあと片付けに取りかかるのだった。
俺たちの住むこの街には住宅街メインの場所と商業施設メインの場所とに二分されおり、俺の家から日用品を買いに行くとなると電車で二駅ほど揺られることになる。
たった二駅なので十分もすれば目的の駅に到着した。
「着いたー!」
「おう、着いたな。」
駅の改札口前ではしゃぐ日向ちゃん。
白いワンピースを風にたなびかせて笑う彼女は本当にかわいい。
今日は長い髪の毛をツインテールのように赤いゴムでまとめている。
その髪型も相まってかいつもより幼く見えて、つい手を伸ばしてしまう。
「え?航さん。これって・・・?」
「い、いやならいいんだが。」
「いえ!嫌じゃありません!うれしいです!」
そういって、飛びつくように俺の手を握ってくる。
俺も少し照れくさかったがキュッと握りしめてやる。
二人して顔を赤く染めているが気にしないことにした。
「よし。それじゃあ、まずはどこに行く?」
「えーと、ですね。まずは、洋服を買いに行きたいので・・・こっちです!」
「オッケー。そんじゃ行こうか?」
「はい!」
手をつなぎながら俺たちは意気揚々と歩き出した。
「いやー買いましたねー。」
「そうだな。満足したか?」
「はい!ありがとうございます。」
あれから、俺たちは洋服や歯ブラシなどの日用品、を買いそろえほくほく顔で帰宅している。
「航さん。ホントによかったんですか?」
「うん?何が?」
「奢っていただいた服ですよ。あれ、結構高かったでしょ?」
日向ちゃんに似合う服が多くて困ったが、中でも似合っていたいくつかの服を買ってあげた。
はじめ彼女は自分で払うと言ったが、俺はどうしてもそこは譲ることができず、なかば強引に買ってあげたのだった。
「ああ。気にすんな。俺が買ってあげたかっただけだし、日向ちゃんによく似合ってたしさ。服も日向ちゃんみたいに可愛い子が着てくれたら喜んでるよ、きっと。」
少し照れくさかったが自分の気持ちを正直に言う。
すると彼女は顔を赤くして俺の腕に抱きついてくる。
「航さん!大好きです!」
「おう。ありがとね。」
えへへ、えへへ、と二人してだらしなく笑顔になる。
遠くに見える斜陽が赤く街を染め上げている。
俺たちの顔も赤くなっていることであろう。
それは夕日のせいか恥ずかしさのせいか分からないけど。
でも、俺たちは紛れもなく幸せな時間を過ごしていた。
このときまでは・・・。
それまで街全体を照らしていた美しい夕日が突然厚い雲に覆われ、あたりは暗くなる。
先ほどまで陽光の反射をきらめかせていたビル群達が今は圧迫感をもって迫ってくる。
嫌な雰囲気だ。
日向ちゃんもそれを感じ取って周りを見渡し始める。
周りには帰宅途中のサラリーマンや幸せそうなカップル達が見える。
いたって普通の日常風景だ。
だが、俺たちには分かる。
今この場所に悪意ある存在が隠れていることが。
なんの根拠もないが多くの戦場をくぐり抜けてきた俺の勘がそう告げてくる。
どこだ・・・。何を狙っている・・・。
俺は立ち止まらずに周りに目を配る。
ここで安易に立ち止まると気づかれる恐れがあるのだ。
あくまで自然に振る舞い続けなくてはならない。
すると、右手に大きな教会が見えてくる。
この教会はこの街で最大規模を誇り、多くの信者がお祈りをする場所である。
しかも今日は日曜日。
多くの信者がまだ参拝に訪れているはずだ。
今も数人の信者とみられる男達が教会へと足を踏み入れようとしている。
全員が長いローブを着ていて、見た目はいかにも敬虔な信者といった感じであるが俺は彼らから何か得体のしれないものを感じて目を離すことができずにいる。
すると、彼らのうちの一人と目が合った。
背筋が凍った。
恐ろしく冷たい目をしているのだ。
ただの信者にしては冷たすぎる目。
あれは、本物の戦場で本気の殺し合いをしている目だ。
あいつらは今から何かをするに違いない。
俺には分かる!
俺が彼らの元に走り出そうとしたとき、ほぼ同時に彼らも行動を起こす。
彼らは一つうなずき合うと教会のドアをぶち破るようにして押し入り、銃を取り出す。
そして、獣がうなるような凶悪な声を上げた。
「おい!お前ら。俺たちはお前らを神の御前で血祭りに上げることにした。一人残らずぶち殺してやるから祈りでも捧げとけ!まあ、神などこの世には存在しないがな!」
がははは、と汚い笑い声をあげる男の元へ神父と思われる男がゆっくりと近づいていく。
周りの信者やシスターからは「神父様!」という叫びが上がるが軽く手をあげそれを制した。
神父と男が対峙する。
神父は暖かなまなざしでテロリストと思われる彼らを見つめ、語り出す。
「神はいますとも。私たちには分かります。神はいつでも私たちのそば元におられ、時に守り、時に試練を与えるのです。今も私たちには神がついてくださっています。その限りに於いて私たちは恐れや不安を知らずにいられるのですよ。あなた方もなにかに迷い、その果てにここにたどり着かれたのでしょう。これも神の導きです。どうか、あなた方も神を信じてみてはいかがですか?」
実にゆったりとした聞き心地のいい声で語りかける神父。
シスターや信者達はシスターの言葉に感激し、涙を流している。
だが、残念ながらその男には響かなかったらしい。
男は実に楽しそうに銃を神父に向ける。
「なるほど。確かにそうだ。神はお前達を守ってくれているとも。なら、これで打たれても大丈夫だよな?だって、お前達は神様がまもってくださるんだもんな?面白い!科学対宗教。物理か信仰か。どちらが正しいのか今裁きの時。我ら『ゼロ』の力を思い知れ!」
引き金が引かれるかに思われたそのとき、日向ちゃんが教会に飛び込んだ。
「待ちなさい!この外道ども。神聖な教会でこんなことが許されると思っているの?」
日向ちゃんが肩を怒らせてゼロのメンバー達にくってかかる。
俺も遅まきながらに突入する。
さっき買ったものが邪魔で動きづらい・・・。
俺がもたついている間にも日向ちゃんはずんずんと敵に向かって進んでいく。
敵の数は五人。
一人リーダーと思われるやつ以外は全員手には銃を持っている。
彼らは突然の乱入者に銃を向ける。
「おい、お嬢ちゃん。ヒーローごっこならよそでやりな。痛い目を見ることになる。まあ、ここに入ってきた時点で家に帰すつもりもないが・・・。」
「あまり私を見くびらないで。」
彼女から大気を振るわすほどの殺気がほとばしりあたりが静けさに包まれる。
もはやこの場は彼女によって支配されていた。
誰もが口を閉ざし、息をする事も忘れる。
そんな静寂の中、彼女は一人滔滔と話し出す。
「ここで引き返すのであれば私はあなたたちを拘束するに止めてあげる。まだ、誰も傷つけてはいないみたいだから。でも、引かないのなら・・・しかたない。ここから五体満足ででられるとは思わない事ね。」
普段の彼女からは考えられないほどに不遜で冷淡な口調だ。
だけど、俺からするとこちらの彼女の方が見慣れている。
施設にいるときにはずっとこんな感じだったから・・・。
気圧されていたテロリスト集団『ゼロ』の男達。
だが彼らもさすがに我慢の限界に達したのだろうか、銘々に叫び出す。
「ふざけるなよ!嬢ちゃん。」「おい、なめんな。くそがき。」「殺すぞ!女。」「死ねクソガキ」
罵詈雑言を全身で浴びる彼女だったが不意に片頬を上げて
「なら、交渉決裂、ということで良いのですね?」とニヒルに言う彼女。
リーダー以外の四人は当たり前だ!などと言って銃を構える。
日向ちゃんは大人でも怖じ気づく危機的状況にいるというのに笑みを溢している。
「なるほど。では・・・後悔しないでください・・・ね?」
彼女は言葉を言い終えると同時にかき消えた――と感じるほどの高速移動を行い『ゼロ』メンバーの一人の背後に回る。
彼女はその男の背中を掌打でぶっ飛ばす。
「まずは一人。」
彼らテロリストは彼女を視界に捕らえようと振り向くがその頃には彼女はすでにもう一人の背後に回っている。
先ほどと同様にぶっ飛ばし気絶させる。
「二人。」
視認さえ許さない高速移動。
彼女の得意技だ。
彼女の両脚はある手術によって義足になっている。
機械仕掛けの彼女の足は人間離れしたスピードを生み出し、たいていの敵はこれだけでなすすべもなく倒されてしまう。
当たり前だ。
銃であろうが何であろうがその姿を捉えることができなくては役に立たぬどころかただのお荷物だ。
今それが顕著に表れている。
テロリストどもは銃を構え必死に彼女に銃口を向けようと躍起になっているが、その間に彼女は近づき、ぶっ飛ばす。
「三人。」
また一人やられた。
彼女はゆらりと最後の銃を持った男に向き直る。
男は恐怖に駆られてヒッと情けない声を上げる。
「許してくれ!悪かった。俺が悪かったから許してくれよ!死にたくない!お願いだー!許してくれー!」
往生際悪くもそんなことを叫び出す男。
俺ならば問答無用でたたきのめしているのだが、日向ちゃんは少し考えるそぶりを見せる。
その隙をテロリストが見逃すはずもない。
ニヤリと嗤い銃口を構えて
「死ねー!」
そう言いながら銃弾を放つ。
ズドン!
「「「きゃあ!」」」 「うぐ・・・あああ!」
シスター達の悲鳴が教会中をこだまし、そのわずか数秒後にうめき声が聞こえ出す。
誰もが日向ちゃんの呻きだと想像した。
だが奇しくも、うめき声を上げているのは銃を撃ったテロリスト張本人だった。
男は足から大量の血を流して、その場に倒れ込む。
日向ちゃんはそんな男に近寄っていった。
「甘いわ。私に銃での攻撃なんて効かないのに・・・。痛いでしょう?安らかに眠りなさい。」
そう言って彼女は男に手をかざす。
「は!」
彼女の短い裂帛とともに電撃が放出され、男は白目をむいて気絶した。
――静寂が訪れる。
時が止まってしまったような感覚がこの場を覆う。
だが、その静寂はそれまで静観していた男によって突然破られた。
「いやはや。素晴らしいですね。あなたたち二人は。さすがプロフェッサー神崎の最高傑作だ。」
抑揚のある美しい声で鷹揚にしゃべるリーダー格の男。
俺たち二人についてかなり調べているようだ。
俺たちの作り手にして、帝国一の頭脳の持ち主神崎教授まで知っているとは・・・。
俺は相手の情報量の多さに驚きながらも探りを入れる。
「おい、あんた何者だ。」
俺は器用な方ではない。
探りを入れるのも回りくどいことは嫌いなのだ。
「単刀直入な物言い。あなたも気が長い方ではないようだ。良いですね。気に入りました。教えて差し上げましょう。私は逢坂徳馬。『ゼロ』における幹部をやっております。以後、お見知りおきを。」
恭しく礼をする逢坂徳馬。
まるで英国紳士のように美しい所作だ。
彼は顔も端正に整い、髪も綺麗にパーマがかけられた美しい黒髪。
一見ただの好青年にしか見えない。
彼は顔を上げ、俺たちに向き直るとにっこりと笑みを浮かべる。
「今日は良い物を見せていただきました。さすが、技術的特異点『シンギュラリティー』に到達されているお二方だ。彼らのような雑魚では四人がかりで一人も倒すことができないなんてね・・・。実に面白かったですよ。ではそろそろ私はお暇させてもらいましょうか。」
「いいえ。逃がさないわ。ここで必ず捕まえる。」
「ああ。逃がすわけがないだろう?大切な情報源だ。ここで捕まってもらう。」
「無駄だよ。君たちはまだ気づいていないのかい?私の正体を。」
くっくと腰を折り曲げて嗤う逢坂だが俺たちは何が何だか分からず首をひねる。
「ははは。君たち『シンギュラリティー』といえども見破れないのかい?これは期待外れだな。では、ヒントを上げよう。私はこの場所にいてこの場所にいない。もう分かるだろう?これ以上失望させないでくれ給え。」
手を広げ、首を横に振る逢坂。
俺にはサッパリ分からなかったがどうやら日向ちゃんには思い当たる節があったらしい。
ハッと眼を見開く。
「まさか・・・3Dホログラム?」
「ご名答。」
3Dホログラム。
誰しもが聞き、想像したことのある科学技術。
離れた場所から自らの姿を転送、操作することであたかも自分がその場所に行って、見たり聞いたり話したりできる夢の技術。
この技術は提唱されてから約半世紀にわたって研究、実験されていたがその技術的難易度は不可能に近く、長きにわたって不完全なままだった。
だが、今目の前にいるこいつはどうだ。
一見、生身の人間にしか見えないほどのレベルであり、現にここにいる誰もそいつがホログラムだとは気づいていなかった。
これが意味するところを理解して、俺は震撼する。
――『ゼロ』はすでにシンギュラリティーに到達している!
シンギュラリティーとは技術的特異点であり不可能を可能にする予測不可能な臨海点突破を指す。
人がシンギュラリティーに至ると、人は想像を超える高い知能と、耐性、理解力、記憶力を備えた新しい存在へと生まれ変わる。
そうなると、今まで不可能であったものが突然可能になる。
このホログラムにしても同様なのだ。
神崎先生曰く、今の帝国には俺たち二人しかシンギュラリティーに到達している者はいない、という話だった。
だが、今のホログラムから推測するに『ゼロ』幹部メンバーのうちの数人はもう到達している可能性がある。
そしてほとんど確実にそうだ。
逢坂がなぜホログラムであることを明かし、わざわざ俺たちに見せつけるのか。
簡単だ。
俺たちに対する牽制を行っているのだ。
自分たちにもお前達と同格の者がいる。
せいぜい気をつけることだな・・・と。
もしかすると、逢坂自身もシンギュラリティーに至っているのかもしれない。
俺はほとんど確信に近い思いで逢坂に問いかける。
「お前はシンギュラリティーなのか?」
逢坂は鼻で笑う。
「さあ、どうだろうな。しかし、まあその問いかけがお前の口から出て来たと言うことは私の今日の目的は果たされた、というわけだ。」
そこまで言うと、突然映像が荒くなり始める。
「おっと・・・どうやらここまでのようだ・・・また・・・どこかであ、おう・・・さらばだ。我が愛しきシンギュラリティーよ。」
そこまで言うと、綺麗さっぱり消え去ってしまった。
まるで今の出来事がすべて夢のできごとだったみたいに。
「なあ、日向ちゃん。」
「なんですか?航さん。」
「君は必ず守り抜くから。何があっても。」
「ええ。私もです。」
俺たちはどちらからともなく手を握り、歩き出したのだった・・・。
いかがでしたか?
また感想ください!
次話でお会いしましょう!