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ある日

第1話です。

一人称がややこしくなってしまいました!

申し訳ありません。

しかし、丹精込めて作り上げた作品なのでどうかたのしんで読んでください!


今日の天気は快晴。

星占いも一位。

ラッキーアイテムのイヤリングまで付けてきた。

運勢的に今日の私は絶好調のはずだった。


なのに、なぜこんな事になってしまったのか・・・。


今目の前にいるのは覆面で顔を隠した三人の屈強な男達。

彼らの手にはアサルトライフルほどもある大きな銃が握られている。


私たち銀行職員は両手を上げ、彼らの指示されたとおりに動くしかない。


男は今も一番窓口にいる女性職員の顔に銃を突きつけながら、怒声で指示を出す。


「おい!これにありったけの金を詰め込め!早くしろ!動かねえとぶっ殺すぞ!」


男は手に持っていた大きなボストンバッグを女性職員にたたきつけるようにして放り投げる。

「はい。」と、か細い声で答えた彼女は涙ながらにお金を詰め込み始める。


私たち残りの職員は両手を上げたまま、ただ呆然とその光景を眺めていたのだが、強盗犯である男達二人がこちらに歩み寄ってきて私たちを一カ所に固めるべく誘導を開始しだした。


「おい!お前ら。こっちに歩け。下手なまねをすれば撃ち殺す。」


男達はそう言い放ち私たちに銃口を向ける。


私たちは抵抗することもなくゆっくりと促されるままに歩き、受付スペースの床に座らされる。

訪れていたお客達も同様におびえながら男達の指示に従い、座り込んでいた。


それから数分してもまだ解放されていない。

どうやら金の詰め込み作業は少し手こずっているようだ。


いらだった男が威嚇代わりに一発天井へと発砲する。

耳をつんざくような轟音。

あまりに大きな音で耳をふさぐ。

その直後ガタッという音が聞こえたので私は音のした方に目を向けた。

どうやら詰め込み作業を行っていた女性職員があまりの恐ろしさに気を失ってしまったようだ。


「おい!起きろ!何してんだ!」


男は女性職員の頬を何度もペチペチとたたくがいっこうに起きない彼女。

すると女を起こす事に諦めたのか男はぐるりと首を回しこちらに目を向ける。


一瞬目が合ってしまった。


私はサッと目線をそらしうつむき加減になる。

絶対に目を付けられることだけは回避したかったが、無情にもその願いは叶わない。


「おい、そこのイヤリングをしている女。こっちに来て作業を続けろ。」


私は懸命の抵抗を試みる。


「わたしですか?」


「そうだ。お前だ!早く来い!」


「でも・・・。」


ズドン!という発砲音が響く。

私は反射的に目を堅くつむるが、すぐにまぶたを上げる。

またも。威嚇射撃だったらしい。

天井が白煙を上げながら焼き焦げている。

男は覆面から覗かせる血走った眼で私を捕らえながら口を開く。


「早くしろ。次はお前の土手っ腹に穴が開くことになる。」


彼の目には有無を言わせぬ確かな迫力があった。

私は無言でコクコクと首を縦に振り、彼の方へと近づいていく。

その間も男は油断なく私に銃口を向け続けている。

私は窓口に入り、脅されるままに札束をバッグの中に詰め込み始めようとした。


そのときだった。


ウィン、という機械音とともに自動ドアが開く。

フロアは静まり返っていたのでやたらとその機械音が響いた。

私は誰が入ってきたのか、と不安に思い顔を上げる。


それはなんと掛け値無しのイケメンだった。

腰ほどまで流れる束ねられた黒い髪。黒縁めがねがよく似合う落ち着いた顔立ち。スラッと伸びた長い足が黒いパンツに似合っている。

こんな殺伐とした強盗現場には似つかわしくない爽やかさをたたえた青年だ。

イケメン好きな私は自分が強盗現場にいるということも忘れて見惚れてしまっていた。

男達も私同様、謎の侵入者である彼に驚き呆然としているようだ。


私たちが呆然としている間も彼は歩を進め、男達の前で立ち止まった。


そこでようやく、思い出したかのように銃を彼に突きつけるリーダー格の男。


「おい、兄ちゃん。今の状況分かっているよな?分かってるならおとなしくそこに座っといてくれんか?」


銃口を彼に向けたままにあごをしゃくる男。

私だったら「はい!」といってダッシュで人質に紛れたいところだが彼は違う。


恐ろしい強盗犯の言葉などまったく意に介さないようなそぶりであたりを見渡す。

不思議なほどに冷静な様子だ。


そんな嘗められた態度を見た男は激昂して叫ぶ。


「おい!あんま調子ノンなよ!見せしめだ。俺たちに逆らったらどうなるか見せてやる!」


怒りのあまりそう言い放った男が引き金に掛かる指へと力を込めていく。

私は想像される最悪の光景を見たくない思いで目をつむる。


やめて・・・!


そんな私の祈りもむなしくドン!という鈍い音が響く。


うそ・・・。


この音の意味するところを想像して私は頭の中が真っ白になっていくのを感じている。

見たくない。見たくない。見たくない。

そんな思いとは裏腹にうっすらとまぶたを上げてしまう私。


だけど、そこには驚きの光景が広がっていた。



なんと、倒れているのは強盗犯たる男の方なのだ。

イケメンの彼は全くの無傷。

どうなっているのかさっぱり分からず、私は勿論、残り二人の強盗犯も愕然としているようだ。


しかし、そんな周りの様子になど一切関心を見せないで彼はゆるりと体の向きを変え、もう一人の見張り役の男に近づいていく。


男は驚いていた自分を戒めるように歯を食いしばり、銃の照準を彼に合わせる。

さすがに場慣れしているようでこういう機転の速さはさすがの一言だ。


だが、彼は銃口を向けられていることをなんとも思っていないのか、スタスタと歩き近づいていく。


男は自分の間合に入ったのかニヤリと片頬を上げて嫌みな笑いを浮かべる。


「これで終わりだ。」


低いドスのきいた声でそうつぶやくと同時に引き金が引かれた。

轟音がフロアに響く。

今度こそ本当に発砲したようだ。

距離にして十メートルほどしか離れていなかった両者。

銃のことについては素人の私から見ても外れるとはとうてい思えない距離だった。


ぐらり、と傾く彼の体。

男は狂気の色を浮かべる血走った目をイヤラシくゆがめ嗤う。

その場にいた誰もが彼が撃たれ、その場に倒れることを想像したに違いない。

だがしかし、今回もまたそんな想像はあっさり裏切られる。


力なく傾いたように見えた彼の体はなんと銃弾を躱していたらしい。

彼の後ろにあった小さな花瓶が破砕音とともに砕け散る。


ありえない!

銃弾を躱せる人間が存在するなんて。


そんな驚きを感じたのは私だけではないらしい。

強盗犯達も一様に口をパクパクさせて目を見開いている。


男が動揺している隙に彼は目にも留まらぬ速さで距離を詰め、強烈な一撃を顔面へと見舞う。

プロレスラーのような巨躯が空中を舞い、壁に叩きつけられた。

男はかろうじて息はありそうだが、あれではしばらく動けないだろう。


ここまで一分ほどで二人の強盗犯を無力化してきたことからも分かるように彼はとんでもない手練れのようだ。

今も、至極リラックスした様子で最後の一人の強盗犯を見据えている。


強盗犯はこれまでの彼の戦いぶりに圧倒されてか、小刻みに体が震えているのが分かる。

それでも逃げないのは、わずかばかりの強盗としてのプライドがそうさせるのであろう。


彼はそんな強盗に憐憫も嘲りも感じさせない無機質な瞳を向け、一歩一歩ゆっくりと近づいていく。


男は必死に銃口を彼に向け、照準を合わせようとするが震えでうまくいかない。


その間にも一歩一歩ゆっくりではあるが確かに近づいてくる彼。

残り五メートル。

男は「うわー!」と叫びながら一発銃弾を放つが彼の長髪をたなびかせただけで終わる。

残り三メートル。

もう目と鼻の先だ。

ここまで来てもまだゆったりとした動きを変えない彼。

強盗は恐れるままに二発銃弾を放つが当てることができない。

残り一メートル。

銃口が彼の眉間に触れる。

彼は無機質な黒い瞳を強盗犯に向けながらボソッとつぶやく。


「撃ってみろ。」


「うぉおお!なめんなよ!撃ってやるからなあ!」


「早くしろ。」


「うるせえ!そんなに死にたきゃ死ねぇええ!」


威勢の良い言葉を叫びながら引き金を引いた強盗犯。

ズドンという鈍い音が聞こえる。

ゼロ距離からの発砲。

一般人なら避けるまもなく蜂の巣になっているであろう。

だが、彼は紛れもなく一般人などでは無い。

強盗犯も恐れをなすような化け物である。

なかば予想通りに彼は男からのゼロ距離の銃撃を首の動き一つで躱している。


「う・・・な!」


男からうめきとも驚きともつかぬ声が漏れる。

これで動揺するなという方が無理な話だ。

なぜならゼロ距離からの銃撃を躱されてしまったらもう男には攻撃するすべが無い。

彼には勝てないということを骨の髄まで思い知らされてしまったわけだ。

彼は絶望に囚われ硬直する。


彼はあくまで無機質な表情を保ちつつ男の手首を握り銃を奪い取る。

そのまま、抱え込むように腕を持ち、一本背負いの要領で投げ飛ばした。


「ゴフッ・・・!」


背中をしたたかに打ち付けた強盗犯。

しばらく、苦しそうに咳き込んでいたがすぐに仰向けになりぐったりとしてしまった。


圧倒的だった・・・。


たった一人で三人もの強盗を返り討ちにしてしまったのだこの青年は。

私は畏怖の念を彼に抱きながら精悍なその横顔に見入っていたのだが、視界の端にチラッと光る何かが映る。

青年の胸元にはどうやらバッチがついているようだ。

見るとそのバッチは校章のようである。

目を細めてその校章をよく見る。


はじめは見たことの無いバッチだな、と思っていたがその校章が象徴する高校の名前に思い至ったときに、私は今日何度目か分からない驚きに見舞われた。


そんな・・・そんなまさか彼は・・・。


「まさか彼は帝都第一士官学校の生徒なの・・・?」


颯爽と出口の方へと去って行く彼の背中に向けて私はそうつぶやいたのだった。















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