もふ怪談3 ぬくもり
これは実話を素にしたものである。
冬。ぬくぬくを楽しむ最上の季節。
だが、暖房はダメだ。
俺からぬくぬくを奪ってしまう。
最低限にしないとな。
ある冬。パソコンの前で情報の海を彷徨っていた。
猫は懐くと膝の上で寝たりする。
酷いときは腹を出してあられもない姿になっている。
またある時には腕枕にてキーボードを片手で扱う羽目に陥る。
さらに別の日にはマウスを叩いて邪魔してくる。
その円らな瞳に逆らえない、魔性の攻撃だ。
通常は、マウスの関係で左腕を犠牲にしていた。
ぬくぬくな上、もふもふ。心も体も暖かい。
だが、2、3時間もすると離れて行ってしまう。
その時の喪失感。
温もりは消え、もふもふという心の癒しまでが消え失せる。
心身ともにダメージを負う。
――もうちょっと一緒に!
そんな願いをし、それが叶った。叶ってしまった……。
2、3時間経っても寝ていた。
爪砥ぎしながらゴロゴロ喉を鳴らし。
冬場は厚手の物を着てるため、爪砥ぎ攻撃も通用しない。
そして、こてんっと再び寝転がる。
4時間5時間動かない。
男性は女性と比べ膝を閉じておく習慣が少ない。
軽いとは言え4㎏はある。足も疲れてくるもんだ。
かわいい。かわいいんだが……。
冬。寒いとトイレが近くなる。
男は女性に比べて我慢できる。
それにも限度というものがある。耐えられなくなる。
かわいい。かわいいんだが!!
6時間。
我慢の限界に降りてもらった。
助かった。そう思った。
だが甘かった。
もふもふは、もふが二つ重なっている。
もふもふの攻撃も重なっていた。
一歩踏み出した時だ。
びりびりした。
足が痺れていた。
そりゃ6時間も猫を抱いていれば、痺れもする。
トイレが遠かった。
間に合った。
そう!間に合ったのだ!
決して漏らしてはいない。
ちょっとだけだ!
分不相応な願いは身を滅ぼす。ほどほどが良い、ほどほどが。
連載にしとけば、よかったな。