小片《ピース》
ずれてバラバラに散ってしまった小片。
それによって生きているのは自分。
小片がなければ腕も、 顔も、 体も、 何もかもが存在しない――。
自分は生きているのか?
全ての小片を奪われるまで死ぬことのできないこの自分が、 生きていると言えるのか?
答えは胸に聞け、 彼女が言った。
胸、 これも小片で構築された偽者。
実体は、 どこか昔へ置いてきてしまった。
取り返せるのかと、 考えない。
今は、 死なない為にも戦うだけ。
自分と同じ偽者を相手に――。
―――――
目覚めた世界は偽者だらけ。
そう思っていたら自分も偽者。
何が本物で、 何が偽者?
見分けるのは誰で、 見分けたもの自体もどう分類される?
知らない、 知ることができない不安に、 苛立たしげなぬるい風が吹く。
全ては謎のまま、 見知らぬ土地に投げ出された。
真実を求めるのか、 虚偽の世界に身を任せてしまうのか。
判断は全て自分でしなければいけない、 例え誰であろうと――。
誰の指図も受けずに、 自由に、 それは夢のような言葉であり、 同時に束縛である。
さて、 自分の意思をどこまで通せるのか、 それは本人のみぞ知る――。
―――――
この境界線の先に、 あなたはいるのだろうか。
見えるのに触れない。
傷ついていくあなたを見ても助けられない。
辛い、 できることを探してみても、 誰も知らない。
文献にも載らない物事に、 対処できない自分に、 あざけるように鋭い風が吹く。
何もできない。
そうやって自分の伸びを遮らせてはいけない。
できることを探せ。 誰かが囁く。
自分を卑下しないで進む。
それは、 今の自分にできること――。
―――――
気付けば世界は本物と偽者に分かれていた。
それを知ってから、 自分は本物だと分かった。
目の前には、 まるでパズルのような小片になって砕けていく偽者。
触ろうにも触れない。
それは何なのだろうか、 知りたいと思った。
自分が偽者なのか、 本物なのか。
誰かかが、 それを知ることを待つ気はない。
全ては自分の手で、 それが自分である。
自分は自由に、 自分なりに、 それこそが自由であり、 自分である――。