さいしょのはなし
“ハッピーエンド”
悪を断罪し、正義を掲げたものが向かえるとつの幸せな最後。
そう表すに相応しいであろう映像がテレビに映されていた。
“花を愛でて君に恋する”
恋愛シュミレーションゲーム所謂乙女ゲームのひとつであり、アニメ化されるほどの人気が出たほどである。
“花を愛でて君に恋する”略して“花君”は一見王道に見えるが、奥が深く世界観に引き込まれることが有名となり人気が出た乙女ゲームであり、体のどこかに生まれながら花の刺青があるものたちの間で行われる恋愛物語である。その刺青を持ったものは必ず稀有な才能をたった一つだけだが開花させる。そのため花の刺青を持ったものは男なら“花君”女なら“花姫”と呼ばれ大切に育てられると共に将来を約束された未来のために鳥籠の中で過ごすような毎日を送らされる。もし、逃げようものならば他国にその才能を渡さまいとみつけしだい殺される。そんな死と隣り合わせなダークファンタジーが副題となっている。
物語は、ヒロインである美月(デフォルト名)が国のために地球から召喚され“花姫”となるところからはじまる。
舞台である国(アルスラール国)では未成年の中では“花君”が5人、“花姫”が1人ととても少なく“花姫”増やすために召喚が行われた。
召喚された“花姫”が、美月であり国の一番の権力者である王家しかもたない【魅了】の才能を開花させたのである。美月は、魅了の才能に戸惑いながら魅了を解く鍵である【本物の愛】をしっていく話である。【本物の愛】を知ると、【魅了】の才能をコントロールすることが出来き、ヒーローである5人の“花君”と幸せなエンドになるこどが出来るのである。
1人1人のルートもあるが、逆ハールートもありそれも人気のひとつだった。
メインキャラクター、王子である“ハンスト=バル=アルスラール”、才能は【魅了】次に、公爵家が次男“ベリセト=バル=フリークラード”、才能は【作曲】、伯爵家が嫡男“シンリス=バル=カルスラール”、才能は【作画】、大商会が嫡男“クリス=マンダリータ”才能は【鑑定】、最後に騎士が家の嫡男“サラルート=バル=ディアニスト”、才能は【剣技】である。
そして、悪役少女役の“マリアーヌ=ファン=ニアニール”、才能は【支配】である。
ミドルネームに“バル”が入っていれば貴族の男性であり、反対に“ファン”が入っていれば貴族の女性であることが示されている。また、氏がある場合は、平民より上であり、氏に国名が入っていれば王家であることが分かる。
そのため、ヒーローのうち1人が王族であり、3人な貴族、あと一人が平民より少し上の階級と言える。
悪役少女も同じである。
才能についてはランクがあり、精神系が一番上であり次に物理系、最後に感覚系である。つまりこの六人の才能にランクをつけると、【魅了】>【支配】>【剣技】>【作曲】=【作画】=【鑑定】の順である。
なぜ、【魅了】より【支配】が下なのかと言うと【魅了】が好意的なのにたいし【支配】は、無理矢理も可能なため敵意があっても【支配】できるが、効果が薄いためである。
“花君”について簡単に説明するとこんな感じである。
このゲームについては、ヒロイン派と悪役派と対立しており、色々なところで口論等が飛び交っていた。
かくゆう私もその一人であり、悪役派である。
しかし、そこまで過激であるかと問われればNOである。
ただ、悪役少女が不憫に見えるため悪役派で有るだけだった。悪役少女を救いたいとも思っていたがどう仕様もないことである。
先ほどテレビで放送されていた“花君”のエンディングでは、悪役少女は最後に幽閉され国のためにただただ使われ、日の光を一生見ることが叶わなくなった。
私はエンディングの最後に悔しくて涙を流した。
普段は、なかなか泣くことはなく無感動であったがこのエンディングでは、泣かずにいられなかった。
マリアーヌの最後が悲惨すぎたためであり、私じゃやっぱりマリアーヌを救うことは出来ないのだと再確認したためである。
普段、表情筋を動かさないことと何年ぶりかに泣いたことが重なり、疲れた私の意識はそのまま闇に落ちていった。
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ガサ
自分の部屋では聞くことのない音が聞こえたため、急いで起き上がると目の前には森が広がっていた。
「…(えっ!!)」
私は、大きな驚きの声をあげたつもりだったが、私の喉から発せられたのは掠れた音だけだった。
喉に手をやる際に見えたものに対するさらなる驚きに固まってしまった。見えたのは女性特有の柔らかそうな手ではなく、角張った男の手だったのだ。
「(え、えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!)」
数秒後には、今世紀最大の音のない悲鳴が私の中に響き渡ったとかわたらなかったとか……