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いのちのこと  作者: 細野 安廣
3/13

第3話 「不確かな人間」

あなたに感謝が届きますように。


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小学校の水泳の時間、体のわるい子は水泳帽に日の丸がつく。

いざと言うとき水中で目立つのだ。


僕は小児喘息と不整脈を持っていたので、プールの時間は人と違った帽子を被っており、劣等感と優越感の入り混じった奇妙な自意識を抱いていた。


むっくんは、僕の記憶では、水泳の時間いつも体操着で見学していたように思う。すごく走るのが上手なむっくんが水泳の時間にヒーローになれない事が勿体無いような、自分だけ泳いで申し訳ないような複雑な気持ちを、プールサイドの彼が視界に入る度に僕は抱いた。


そして数年後彼は亡くなり、僕は生き続けた。


僕の不整脈は高校1年の身体測定から診断されなくなった。喘息は低気圧が来たり、季節の変わり目になると発作が出たが、年々おさまっていった。


僕は高校に通っている間に、なるべく沢山の本を読み、沢山の音楽を聴いた。本の中に、音楽の中に、むっくんが亡くなった不条理を解きほぐす何かを探した。

しかし、そんなものはどこにも見付からなかった。


それでも、部活動をし、クラスメイトとバンドをつくり、恋人をつくり、勉強し、色々な人と出逢い、僕なりに輝きのある高校生活を過ごした。


そして僕は国文学科のある大学に進学し、虚しくなり、2年でやめた。


いつしか、むっくんの記憶は意識の底に沈みこみ、僕はミュージシャン崩れのフリーターになり日々アルバイトをしたり、曲を書いてライブハウスでロックバンドのギターを弾いたりする、不確かな人間になっていた。



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