第2話 「ありがとう」
この文章を読んでくださる方に、たくさんの感謝を。
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僕は学生服を着て、友人(僕は彼をむっくんと呼んでいた)の葬儀に列席し、見よう見真似でお焼香をした。
小学校の先生や、かつての同級生とその母親などが目に入ったが、大人達は皆見慣れぬ喪服姿なので、あまり懐かしく感じない。
棺に横たわるむっくんは穏やかな表情ではあったが、白く、小さく見えた。
僕は泣いた。
ハッキリとは思い出せないが、恐らく大きな声を出していたと思う。
泣きながら小さな式場を出ようとする僕にむっくんのお母さんが、ありがとう、と泣きながら声をかけてくれた。
なぜそんな感情になったのか今では悔やまれるばかりだが、むっくんがもう帰ってこない事を思うと僕はその「ありがとう」が我慢できず、「ありがとうってなんだ」と小声で叫び、彼女を突き飛ばすように式場から駆け出した。
僕はその事を今でも後悔している。
駆け出した僕は式場の近くの公園で泣いた。
僕とむっくんとの共通の幼馴染みが列席者を代表して僕を探しに来てくれた。
友人は泣きじゃくる僕を慰めてくれた。
僕は、むっくんがいなくなってしまった事だけではなく、むっくんの母親以外他の誰も泣いていない冷たさ、死への恐怖、その理不尽さを傍らの友人に訴えた。
自分勝手な僕を、友人はまた静かに、慰めてくれた。