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第1話 「あなたへ」
むっくんが生きていた証を、ここに残します。
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20年前、友人が白血病で亡くなった。
幼稚園、小学校、中学校と同窓生だった。僕たちが幼稚園児だった頃、その友人の家でよく遊ばせてもらった。彼のお母さんにも本当に優しくしていただいた。友人と一緒にファミコンをした事と、キン肉マンの消せない消ゴムで遊んだ事が、今でも思い出される。
彼は足が速かった。
しかし、怪我をすると血が止まらなくなるからと、あまり外では一緒に遊ばせて貰えなかった。
それがどう言うことか幼い僕には分からなかったが、ただ彼といると楽しかったし、運動の苦手だった僕は彼に憧れを抱いていた。
僕達は小学校、中学校と一度も同じクラスにならなかった。
部活動や高校受験でなんとなく時は流れ、なんとなく彼とは疎遠になった。
僕が高校1年の初夏、彼の葬儀の案内が我が家に届いた。
僕はその事を母から伝えられたはずだが、その瞬間をいくら思い出そうとしても、思い出せない。