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兆文  作者: 駄文暴威
4/5

やるようんち

「終わった 死んだ 暴落や」

ピークで3000万を超えていた俺の資産はとうとう10万円になってしまった。

その頃、調子に乗って専業へと転身したが、それからわずか1年と8カ月で俺の専業生活は終わりを告げようとしていた。

資産は残り10万円。

1週間以内に引き落とされる家賃やネット代等を差し引くと、生活費は1万円足らずしか残らない。

その間に就職が決まり給料が出るまでしのぐのは厳しい状況にあった。

専業どころか人生がジエンドしそうな勢いだ。

「もう死のうかな」

そう書き込もうとしたときに、ふとあることを思い出した。

ワラワラ生放送でおなじみの光景である。

わたしは、必死にぐぐった

秒速でぐぐった。

そして、一通りの準備を整えると、住民となっているスレッドに書き込んだ。

「破産して食費も満足に出せない。再就職するまで恵んでください。お願いします」

一緒に、ヤマゾンのほしいものリストのリンクを貼り付けた。

就職して給料がもらえるようになるまでの生活の助けとなるようなリストを列挙している。

反応は冷ややかなものだった。

「自分でなんとかしろや」

「自己責任」

「古事記は帰れ」

といった、当たり前のような言葉が並んだ。

その中に一人

「送った」

とだけ、書いた人が現れた。

私は胸を躍らせ、すぐさま

「ありがとうございます!就職活動がんばります!」

と書き込んだ。


数日して、就職活動に励み、面接も何回かこなしているころだった。

次の掃除屋に勝負をかけようと履歴書を書いているところに、宅配便がやってきた。

配達人は、荷物をさっと置くと、サインをもらって帰って行った。

宛名には、マイケル暴威とある。

コメントに「やるようんち」と書いてあった。

中身は、米五キロ。

これに塩をかければ一カ月は凌げるはずで、非常にありがたかったが、それと引き換えに何かを失った気がした。

「クソッ、俺が糞野郎ってことかよ!」

しかし、糞野郎であることは間違いなかった。

株で破産し、食料を恵んでもらう30過ぎの男が立派であるはずもない。

甘んじて受け入れ、塩っ辛いおにぎりを毎日食べることとした。

掲示板では、「お米ありがとうございます!おにぎり毎日食べます!」と勤めて明るく振舞った。

応援や罵倒のレスの中に、送り主と思われる「いいってことよ!」というレスが混じっていた。


臥薪嘗胆の日々を送っていると、ある引っ越しやから連絡がきた。

「明日からきてください」

なんと採用の通知であった。

すぐに掲示板に報告した。

「おかげさまで就職が決まりました。復帰目指して頑張ります!」

心無い書き込みもあったが、みんなおおむね祝福してくれ、将来へ不安が和らいだ。


数日後、宅配便が届いた。

またもや、マイケル暴威である。

今度はカップラーメン24個入りであった。

「いつかはお前もアナルグラム」

という意味深なコメントが添えられている。

「アナルグラムってなんだ?アナルは宇宙の親戚か?」

まったく意味がわからなかった。

すぐに降参して、素直に質問することにした。

「マイケル暴威さん、またもやプレゼントありがとうございます。ところで『いつかはお前もアナルグラム』とはなんですか?」

「これがわからないとまた破産」

マイケル暴威と思われるレスはそれだけである。

外野はわいわい面白がって書き込んでいた。

すると、目につく書き込みが一件あった。

「アナルグラムってアナグラムってことじゃね?」

アナグラムとはいったい何に対してのものなのか。

もしかして「やるようんち」のことだろうか。


「兆や!兆や!!!ちようるんや!!!」


私は、そこでようやく理解し、キーボードにその言葉を打ち込んだ。

そして、頭が冴えてきた私はもう一つ新たな発見をした。

「マイケルだけに冗談がお好きですね!」

「ちゃうちゃう!マイケル応援や!」


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