それは山奥とはほど遠い近未来誰も昔話など知らずーほんぺんー
それは山奥とはほど遠い近未来誰も昔話など知らず
未来ばかりを
手元ばかりを見つめる時代
彼女は銃刀法違反を犯すこともなく厳重に小型の縦長アタッシュケース
を背に縛り付けて物珍しそうに空を覆い隠す建物
その間をまるで巨大な昆虫のように動き回る車を見ていた
しかしそんなことをしている場合ではないと思いながら足を進めると
ふとした路地には時代の異物のような古くさい喫茶店なんかがあってまた足を止めて通行の邪魔をしてしまうのであった
年の頃は二十過ぎかまたは十八と言っていいほど若く
背中で髪をポニーテールに結ぶがそのゴムは今時の可愛いを肥満させたものではなく紫の渋い染め物で実に頬を小麦色に染めている彼女の
行動からは、想像できないほどおしとやかな物に感じる
一見すると犬の首輪にも見えるが、それがあることで雰囲気が引き締まって見えるのは気のせいではないだろう
彼女は道を知っているのか先ほどまでやたらとキョロキョロと辺りを子供のように見渡していが、進み始めると近所とでも言うようにずんずんと先を迷う事なく進んだ
不意に彼女が立ちど待ったとき
それは普通の人間ではハーフマラソンを四倍したくらいの距離であったが
彼女は先も変わらずただ何ともなしに迷いなく気の扉を開けた
それは店先に
「モンブラン」
と書かれた喫茶店であり
果たして彼女はここに来るために、わざまざここ以外の地方から来たのだろうか
中にはいると迷わずトイレに向かう
店の店員もそれが見えなかったのかそれともよほどずぼらなのか
立ちながらセカセカとさきほどと同じように仕事を続行している
彼女はトイレに入ると傍らにいささか短いライフル銃をおくと
今時珍しい座る方の便器の貯水タンクの陶器の蓋をその腕も伸ばして開けた、そこにはいっさい水など入っておらず
ただし渋色の座布団に黒い電話が一つご丁寧に
でんと置かれていた
彼女は迷わず受話器を取るも
普通なら一周びっしりと書かれているダイヤルも一つ真ん中に赤黒いのがあるだけでしかもプュッシュ式であった、
彼女がそれを押すと数秒もせずに無音の電話が突然繋がる
その受話器からは異様に明るい昔の南米の音楽が流され静かなトイレの喫茶店を嫌に賑わすが、反響を使った高価な防音設備のため響かない
「もしもし」
それはまるで熟れたトマトのように誠実で水を得たようなみずみずしく全てを受け入れそして流す残忍さもあるように思える実にこの時代にはない
率直な良い声だった
「ちょっとうるさいわね」
果たしてそれは、この騒音に言っているのかそれとも彼女に言っているのか、声の主はおじさんのような貫禄の良い声をしたおばさんのような声で
「あんたの知りたい情報は何だい」
とまるで人を値めつけるような態度で、電話越しから威嚇でもするように話しかけた
「ちょっとその態度はないんじゃない」
それはこの引き締まった恐るべき体力を有する女ではなく
電話越しから彼女と同年代と思われる若い男の声であった
「あっリンタロウ」思わず彼女はその声に反応を示す
「そう、ままがごめんね、そんなつっけんどうで」
それは、母の態度とは百八十度違う親しげ度マックスな声であったが
「何言ってんのさこれは彼女のためを思って」
とさきほど前の威圧な声から、何とも優しげな声になった
「ごめんね、ずきんちゃん、それで用件なんだけどさ」
ともうあの演技は必要ないと思ったのか
それともあの後では調子が悪いと考えたのかは、分からないがしかし彼女は話し始める
「あんたの父と母それにお祖父さん叔母さんまで殺した奴の正体なんだけど、もしかしたら怪物かも知れない」
この時代、いやこの時代になる少し前
人間は機械による戦争では後々取り返しが付かなくなることを恐れ
彼らは機械に変わり生物同士を戦わせてその勝負を決めることが決定た
それは人ではない生き物、昔で言うキメラのような化け物
国同士をあらそう戦争を、一個のスタジアムの中で勝負を付けた
しかしその場所は、地下二十階相当で、誰も上に上がることが出来ない上での設計、そして爆破が義務付けられた決定事項のまさに殺し合いの
コロシアムに他なかった
国は生物兵器に全国力を使い挑んだ
その末起きたことは、政府にしか分からないが
しかし今の現状から見て、それは皆相討ちか、死んだと取るのが一般的であり、そのおかげ問い言うのか今の世界には国境という制度が撤廃されて
いわゆるフリーダムであり、また大昔の言葉で言えば
「国境のない世界」とでも言うのだろうが知らない
とにかく少しは死人が少なくなったことは、調査票を見れば一目瞭然のことであった
「・・・・本当だったんだ」
彼女はそう呟いた
百戦錬磨のその母と言われる人物さえその感情が分からないほどだったが
しかし電話越しの彼女は笑っていた
全身の気を体に握りつぶし押し殺し何一つとして逃がさず漏らさず
その力が異様な悲しみを彼女に敵を与えられたという事により
彼女自身も分からないうちに漏らした、そんな笑みを浮かべさせた
「あんたも頑張ってきたけどちょっと待ちなずきん、準備って物がある」
しかし彼女の電話がポニーテールのずきんと呼ばれた女に届くことはなかった、なぜなら彼女はいつの間にか喫茶店を出て暗い長野の町を歩いていたからだった
彼女はその日路地裏のダンボール置き場の近くに良さげな寝床を見つけ新聞紙にかむり、深く帽子を顔にかけて眠りについた
「おっおい起きなさいここは所有地だ」
ひどく不機嫌で偉そうなくせして臆病な声が上から降ってくる
「何なんだよもー」
彼女はそれを物とも思わずぐずりながら、起き出すと新聞紙が
「グシャグシャ」と鳴り、顔がようやくその声の主の所にでる
それはひどく不細工なへちまを上と下から無理矢理万力で潰したような顔で、逆ブルドックといっても過言ではない不機嫌顔だ
「きっき様子供か」
男は心底うんざりしたようにそういうと私の帽子を取ろうと腕も伸ばしてきたので、逆に自分のほうへそれを引っ張ってやると男は驚いたように身を引こうとしたが時すでに遅く、こちらに来ていた体重を流すようにひぱったのだからそれはすーと汚い路地に転げくしゃげた
「おっおい」
その無駄にほえるような声を無視して私は路地裏から人混みの多かった町のほうえ駆ける、森と違って蠢く人を避けるのには骨が折れるが
あの不細工な警官はよほど体が大きいか動くのが苦手なのか途中で人の波に飲まれて、姿が見えなくなると私はすぐさまゆっくりと波に飲まれながら適当にどこで食べようかとファースト店を覗きながら歩く
その中でハンバーガーショップの中にはいることにするのだが
そこで要らぬ物を発見した
「おっおばば」
彼女はそういうと入り口に向かおうとしたが
「おいずきんこっちに来い」
それは店の中だというのに、異様に大きな声で呼ぶ、仕方なく周りを普段あまり気にする性格ではないが、彼女はその二人掛けのテーブルで、ブルーベリーパイを十個ほどトレイに溢れかえらせて食べている強欲な女を
見ながら席に着いた
「へい、珈琲2杯」
どこかアメリカンな口調で彼女は絶対カウンターで頼む物のはずだがその並んでいる客を見事に無視して一人の若い女性定員に声をかけた
「おばば、並ばないといけないんじゃないの」
ずきんはそういって彼女を制そうとしたが
こちらに急いできた女性定員は見事なお面の笑顔で
「いえお客様こちらの店では珈琲は無料ですので」
そお言って紙コップ二つを机に置き、珈琲を注ぐ
そのガラスの入れ物からそれがコップへ移るのはなかなか見事で美しかった
「あんがとね、ねーちゃん」
見事に人を小馬鹿にしたような言い方に
「すいません」
と普段なら、たいていのことは気にもしない彼女がポーニーテールを揺らしながら謝った
そんなあわただしい店の中でばばは、声を抑えて
「あれはウルフだ、、ブラックのウルフ」
「・・・・狼が居るのか」
「・・・ああそうだ奴の凶暴さは手に終えないどころの話ではない」
「しかし奴は今何処にいるんだニュースにでもなっていて良いはずだが」
「有無そこだ、あいつらは相手に勝つためにあらゆる改造そして遺伝子を徹底的に改造された、そこで考えつくことが一つある」
そお言って歳でシワシワなのに何処か気品というか生命力の固まりみたいな雰囲気をした人差し指を一本無造作に前に突き出して
「人間の知能が入っている可能性があるかもしれん」
「・・・・つまり狼男って事」
「いやそこまでは分からんが、しかしそうも考えられる」
そういってブルベリーパイをがぶりとがぶついた
「でも何で人間の知能なんて必要だったのかな」
「それは」そおいって紫のジャムの付いた口を赤い下で舐めてから
「それは人間が一番愚かだからだ」と答えにならないナゾナゾのようなことを真顔で言う
「それってどういう事」
「うん、つまりだ、人とは違う可能性に突き進むように出来ている」
「でもそれが恐怖心を生んだら戦闘どころじゃなくなるのでは」
「そうそこだ」ブルーベリーを握りしめていったため
宙を舞ったそれが床に血のような文様を描いたが話は続けた
「人はイヤだという事を変えようとする、即ちあみだくじを無限に延ばしていくようなもの、それも何処に行き着き分けでもない支離滅裂に行けるところまで」
「それは良いけどどうやって見つける」
「そんなの簡単さ」
ばばはそおいって鞄から無造作に小型電話を取り出して机に置いた
「国が定めた規定には、地下20回で行われた試合に出す生物には必ず半永久的に動く発信機の取り付けが義務付けられていたそれなら」
そお言ってその携帯らしい小型機の画面横に付いてあるボタンを押すと
いきなり画面が変わり、暗い黒に赤い文字でなにやら英語が浮かび次に
地図が現れる、そしてそこに赤い点が点滅していた
「えーーーと」
アップルパイを置いて画面を横目に操作するおば場
「どうやら、木島と言うところにいるらしい」
それはよく言う「鬼島=木島」という隔離された地域を指す言葉のようであったが果たして、モンスターが居るのには実にかっこうの良い場所に思えた




