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2人の足音

さて!!なんとか終わらせることができました。

今回の「その後の2人」では、本編ではっきりしなかった望と岬さんのその後を描きたいなと思ってたので、最終的に2人の未来みたいなものを書くことができて良かったんじゃないかなと思ってます。おっと!ネタバレしますね(汗)

つづきはあとがきのほうで書きたいと思います。

「なんでここにいるの?」

 と、その人は驚いて立ち尽くしていた私に言って、その言葉で、私ははっとなった。

「そっちこそ、なんでここにいるんですか? 成沢先生」

 僕は洸の担任だったんだ、と、成沢先生は言った。

「浅羽さんは・・・・・・あぁ、もしかして演奏会?」

「はい」

「ここにはなんで?」

「両親がこの飛行機事故で」

「そうだったんだ」

 私たちは洸の前で、話していた。成沢先生は私が持っていたヒマワリを不思議そうに見て、言った。

「そのヒマワリは?」

「これは洸に。両親にはもう挨拶してきたので」

「洸と知り合いなの?」

「はい。音大で、洸はよく中庭に来ていて」

 すると、成沢先生は感心したように頷いた。

「そうか、そうだったんだ」


 ――ねぇ先生。俺、この学校で会いたい人がいるんだ。

 ――誰?。

 ――へへ、内緒。

 ――なんだよ、それ。

 ――まだ会ったことないんだけどね。すごい楽しみなんだよ。


 洸は入学してすぐに、成沢先生にそんなことを言ったのだそうだ。

 

 

 成沢先生はその相手が私だったと分かると、こんなことを言った。

「そのとき分かったよ。洸はその人に恋をしてるんだって。そのあと洸が『やっと会えたよ』って嬉しそうに言ってたのを、今でも覚えてる。でも・・・・・・」

 

 でも、悲しかったのは、夏休みに病院を訪ねたとき。

「また来年の春まで、会えないのかぁ。っていうか、来年の春まで、俺生きてるかな」

 洸が、笑ってそう言っていたことだった、と。


 


 もうすぐ飛行機の時間だから、と、成沢先生は帰っていった。

「洸ね、自分は永くないって言ってた。でも大丈夫なんだ、って。『なんで?』って聞いたら、こう言ったんだ」


 ――俺の代わりに、彼女を守ってくれるヤツがいるからさ。


 それが、岬さんだった。



 *  *  *



 小高い丘の上からは、ウィーンの街並みと、果てしなく広がる空が見える。

 遠くの空は私と同じ高さにある。まるで、この空と街は私のものであるかのような錯覚さえ起こしてしまうような開放感。空と街が、私を見守ってくれているような心地よい温かさ。

 私は、予感していた。

 振り向くと、そこにはきっと、岬さんがいる。


 そして。


 振り向くと、そこにはヒマワリを抱えた岬さんが、立っていた。


「ノンさん」

 岬さんはいつものように私を呼ぶ。私は俯いたまま、何も答えない。

「ノンさん、声を聞かせて」

 それでも私は何も言わなかった。

 岬さんはもう一度、私を呼んだ。今度は、悲しそうな声で。

「ノンさん・・・・・・」

「・・・・・・どうすればいいの?」

 私は彼の胸にドンと頭をついた。

「私、すごく心配だった。岬さんまでいなくなったらどうしようって。なのに、ひょっこりと出てきて。怒りたいのに、問い詰めたいのに、できない。どうすればいいのよ」

 何度も何度も彼の胸を叩いて、私は叫んだ。気がつくと、涙がとめどなく流れていた。

「怒ってもいい。問い詰めてもいいんだよ」と岬さんが言う。

「できない」と、私は返す。

「なぜ?」

「生きていてくれるだけで、いいの。私には岬さんしかいないって、分かったから。私の大切な人は岬さんなんだって、ようやく気づいたから」

 岬さんが両手で私を抱きしめると、彼が左手に持っていたヒマワリの香りがした。

 そして私の名前をゆっくりと呼んで、言った。

「望さん。僕はそれを、ずっと、聞きたかった」




 


 

 小高い丘の上からは、果てしなく続く空が見える。

 きっと、この空は、洸のところにつながっている。

 

 岬さんは、私の気持ちが見えなくて不安だった、と言った。だから1か月間まったく連絡を取らないで離れてみて、私の気持ちを確かめようと思ったのだ、と。

「でも、途中で僕のほうが耐えられなくなっちゃってさ。連絡しようと思った矢先に、列車の中でバッグごと全部盗まれちゃって。パスポートも盗られたから、大使館に行って再発行してもらったりしてたんだ。こっちにいる知人にお金借りてようやく電話してみたら、望さんはヨーロッパに来てるって聞いて。それでここに来れたのが、今日。まさか会えるなんて思ってなかったけど」

「洸が会わせてくれたのかな」

 私たちは同時にお墓の目をやった。

「そうかも。けど、洸には悪いな」

「なんで?」

 私が再び岬さんを見ると、彼も私のほうを見た。

「だって、そのおかげでノンさんの気持ちを知れたし、やっと決心できたし」

「決心?」

「望さん、僕と結婚してください」

 そのあとに、今は指輪を買うお金もないんだけど、と岬さんは言った。

「だめ?」

「う〜ん、年下か・・・・・・」

「頼りないかもしれないけど、幸せにするよ!!」

「『潤くん』ね。それもいいかもしれない」

「え?」

「呼び方。年下って言ったら、君付けだよね」

「それって・・・・・・」

「私も、ずっと一緒にいたいって、思ってる」


 洸の見ている空の下で。

 太陽の光をいっぱいに浴びながら。

 私たちは、誓い合った。


 永遠に響く、2人の足音を。




最後まで読んでいただいてありがとうございました。

最後の一文の補足をすると、「2人で並んで歩いていこうね」ってことです。

どうしても「響く」というフレーズを使いたかったので、やっぱり「足音」を出すしかないなと思ったら、意味が伝わりにくいものになってしまいました。

微妙だな、と思う部分もあるかもしれませんが、とりあえず完結にしたいと思います。

でも希望があればまたやっちゃうかも?!

感想等ぜひお待ちしています。ありがとうございました。

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