8 少年探偵団の始まり
それからというもの、陸は時々、桜広場にやってくるようになった。
学校が終わったあと。
家に帰る前の、ほんの少しの時間。
誰に言われたわけでもない。
ただ、気がつくと足が向いていた。
桜広場のコスモスは、日ごとに花を増やしていた。
風に揺れるたび、やわらかな色が広がる。
その中にいると、少しだけ落ち着いた。
家に帰れば、母はいつも疲れている。
「おかえり、陸。ご飯、テーブルにあるから先に食べてて」
それだけ言って、すぐにキッチンへ向かうか、ソファに座って目を閉じる。
悪いわけじゃない。
分かっている。
でも――
(ちょっとだけでいいのに)
一日のことを話したり、何かを聞いてほしいだけなのに。
言葉は、いつも胸の奥で止まってしまう。
だから陸は、桜広場に来る。
ここには――
「お、来たな」
ベンチに座っていた真司が、手を上げた。
「陸くん」
その隣で、麻子がやさしく笑う。
それだけで、胸の奥が少し軽くなる。
「……うん」
陸は小さくうなずいて、二人のもとへ歩いていった。
その日も、三人はコスモスのそばのベンチに座っていた。
夕方の光がやわらかく差し込んでいる。
「でさ、探偵っていうのはな――」
真司が、いつもの調子で話し始めた。
「ただ事件を解決するだけじゃないんだよ。人の嘘とか、本当とか、そういうのを見抜いて――」
「また始まった」
麻子がくすっと笑う。
「いいだろ別に」
真司は少しだけむきになる。
「大事なことなんだって」
でも、その目は真剣だった。
「誰も気づかないことに気づくのが探偵なんだよ」
陸は、その言葉をじっと聞いていた。
誰も気づかないこと。
それは、自分のことのようにも思えた。
(ぼくは……)
一瞬、あの日の言葉がよぎる。
透明人間。
けれど――
今は違う。
少なくとも、この場所では。
真司が話し続ける。
「だからさ、観察力と行動力が大事で――」
そのときだった。
「……僕も」
陸の口から、言葉がこぼれた。
自分でも驚くくらい、自然に。
「え?」
真司と麻子が同時に陸を見る。
陸は少しだけ下を向いたが、それでも言葉を続けた。
「僕も……混ぜて」
風が、ふっと三人の間を通り抜ける。
陸は顔を上げた。
少し照れくさそうに、でも――しっかりとした目で。
「僕、足が速いから」
「うん?」
「逃げた犯人、追いかけるの……得意だよ」
一瞬の沈黙。
次の瞬間。
「いいじゃん、それ!」
真司がぱっと笑った。
「最高じゃん!めちゃくちゃ戦力!」
その笑顔は、まっすぐだった。
「よし!」
真司は勢いよく立ち上がる。
「陸、お前も今日から――」
少しだけ間を置いて、
「探偵団のメンバーだ!」
その言葉は、まるで宣言みたいだった。
陸は目を瞬かせる。
「……いいの?」
「当たり前だろ」
真司は迷いなく言う。
「な、麻子」
「うん」
麻子はにっこりと笑った。
「ようこそ、陸くん」
その笑顔は、やわらかくて、あたたかかった。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
言葉にできない感情が、少しずつ広がっていく。
(あ……)
陸は思う。
(ぼく……)
夕焼けの光が、コスモスを赤く染めていた。
(ここにいていいんだ)
はっきりとは言葉にならないけれど、
確かにそう思えた。
その日から、陸はほぼ毎日のように桜広場に来るようになった。
真司の話を聞き、
麻子と何気ないことを話し、
ときどき三人で笑う。
家に帰れば、相変わらず母は忙しいままだった。
それでも――
前より少しだけ、平気になった。
自分の居場所が、ひとつ増えたから。
桜広場のコスモスは、風に揺れながら咲き続けている。
そのそばで、小さな三人の時間も、静かに始まっていた。
――少年探偵団の、はじまりだった。
今回はAIが書きました。
AIでも良い感じに仕上がっています。
主な登場人物
二宮麻子 シーサイドタウンの港町中学の2年生
仁川真司 同じく同上
戸村陸 母親のネグレクトに悩む 小学5年生
夏目刑事 ドキドキサマーデートで道で倒れていた真司を車で桜広場まで送ったことで知り合いに。
菅野ハヤト 真司の友人




