5 陸の家庭の現実と真司の抗議
あれから、真司は陸のことが気になり、戸村という表札を頼りに家を探した。真司は、桜ヶ丘町を自転車で走っていると、偶然、あの万引き少年、陸の姿を見かけた。
「なんだあの少年、同じ桜ヶ丘町なんだ」
陸の家は、真司たちの学校からは少し離れた、新しいマンションが立ち並ぶエリアにあった。
夕方、真司がマンションの前に着くと、陸が一人でエントランスの植え込みに座って、膝を抱えているのが見えた。
真司が声をかけようと近づくと、ドアが開き、仕事帰りのスーツ姿女性が出てきた。陸の母親だろう。
「陸、ただいま。お腹空いたでしょ。お母さん、コンビニで夕飯買ってきたから、早く食べなさい」
母親は陸の頭を軽くポンと叩き、携帯を見ながら、足早にエレベーターに向かった。陸の母親は「陸、宿題はちゃんとやったの?」と一言言うとまた携帯の画面に目を向けた。
陸は「うん」と小さな声で頷いたが、母親は振り返ることもなく、陸の表情を見ることもなかった。
その様子は、まるで陸がそこにいないかのようだった。真司は衝撃を受けた。夏目刑事が言っていた「ネグレクト」の意味が、この目で見て初めて深く理解できた。
真司は思わず駆け寄り、エレベーターの扉が閉まる前に大きな声で叫んだ。
「ちょっと待ってください!」
母親は驚いて真司を見た。陸も真司がいることに気づき、顔を上げた。
「誰なの?あなた?」
陸の母親が怪訝な顔で言った。
「俺、陸くんとこの前会ったんです。陸くん、寂しいって言ってた!いつも一人で、透明人間みたいだって!」
真司は感情に任せて、陸の言葉をそのままぶつけた。
母親は眉をひそめ、「何言ってるの、この子は。うちの子は何も不自由してない。父親が亡くったので女手1つで食べさせているし、学校も行かせてる」と言った。
母親は「もう、あなた。変な子に関わらないで」と苛立った様子で携帯をいじり始めた。
真司は反論しようとしたが、陸が真司の袖を引っ張った。
「もういいよ、お兄ちゃん」
その声は震えていた。真司は陸の顔を見て、彼の瞳に浮かんだ諦めと、迷惑をかけてしまったことへの申し訳なさ、そして、悲しみが入り混じった表情に言葉を失った。
この母親には、真司の言葉は届かない。陸の母親は、陸が「存在」していることさえ認識していないのかもしれない。真司は無力感に襲われた。
その晩、真司は夏目刑事に電話をかけた。事の顛末を話すと、夏目刑事は静かに真司の話を聞いてくれた。
「真司君、君が陸君のために怒った気持ちは素晴らしい。でも、すべての問題を解決できる名探偵は、この世にはいないんだ。まして、家庭内の問題は特に難しい。刑事だって、すべてを解決できるわけじゃない。助けられないこともある。それが現実だ」
真司は黙り込んだ。憧れのホームズも、レストレード警部も、すべての事件を解決できたわけではなかった。真司は初めて、憧れだけではどうにもならない現実の壁にぶつかったのだった。
「それでも、君が陸君のために怒ったこと、その気持ちは必ず陸君に届いている。君が彼にかけた言葉は、彼にとっての唯一の光になるかもしれない。君はもう、立派な探偵だよ」
夏目刑事の言葉に、真司は少しだけ、心が軽くなるのを感じた。
この回はAIが書いたものを加筆修正しました。
この物語の時代は2000年ごろで、ネットもそれほど身近になく、麻子や真司たち中学生には携帯も殆ど持っていない人ばかりで、中学生は家電話で友人たちと話をしていました。勿論、親など友人以外の家族が電話口に出ることがあるので、中学生でも親たちに対する口の聞き方を知っていました。
陸の母親など社会人や大人は携帯を持っていましたね。
麻子と真司の一連の物語はそういう時代の物語です。
中学生時代ですね。




