2 運動会の種目決め
次の日、麻子と真司のクラスのHRは、運動会の出し物の人選をしていた。リレーは毎年恒例だ。
港町中学校のリレーは男女混合一クラス1チームの、クラス対抗だ。2年生はA組からF組まで6クラスあった。
クラス委員が前に出て、リレーの走る順番をどうするか聞いていた。菅野ハヤトが、
「1番始めと真ん中とアンカーに速い男子を入れたら良いと思います」
と真っ先に意見を出した。
普段は、深夜ラジオを聴いているせいか学校では眠っていることが多いハヤトだったが。
他の男子がハヤトに
「お前、自分が良いところを見せたいからだろう?」
と茶化した。ハヤトは
「バレた?」
とあまり気にする風でもなく、あっけらかんと行った。
「わかった!ユキの前で良いカッコしたいんだろう」
さっきの男子がすかさず言った。
「あーっ、それ言うなって!!」
ハヤトは少し赤くなったが、あっけらかんとした様子は変わらない。
ユキは下を向いて居心地が悪そうにしていた。でも、顔はまんざらでもなかった。ハヤトは1学期の理科の実験班でユキが座っていた机に他の男子を連れて座りに行ったのだった。
「真司、鈴木、立ってくれ」
ハヤトは学級委員を差し押さえ、どんどん決めていく。
「真司と鈴木で、初っ端と真ん中を決めろ!」
「えーっ、ハヤトお前は?」
真司は思わずハヤトに返した。
「俺は、アンカーだ」
ハヤトの勝手な取り決めに、真司はクラスのみんなからブーイングが来るのではないかと思ったが、みんなは、面倒なことをさっさと決めてくれる人がいていいやという感じだった。
ハヤトはクラスのそんな空気を察してかまた付け加えた。
「鈴木がスタートを切るのが良いと思うよ、鈴木は足が速いし、サッカー部での活躍も他のクラスの奴らに噂されているから、最初から戦意喪失のためには、うってつけだ」
ハヤトは気分が良くなって自説を述べたがクラスのみんなも感心していた。
「じゃあ、真司は真ん中辺を頼む」
真司もハヤトのように麻子に見せるために、アンカーになりたかったが、そこは友人に花を持たせようと思い直した。
「俺、それで良いよ」
真司は快く引き受けた。こうして、後は、男女の走る速さを考慮しながら、メンバー表に名前を入れて行った。最後に麻子が残った。
いつの間にか、ハヤトから引き継いだ学級委員が麻子に声をかけた。
「二宮さんって、遅い方だよね」
麻子はこっくり頷いた。
ハヤトがまた挙手して意見を言った。
「遅めの女子は、初めの方でも終わりの方でも危なっかしいから、真ん中辺りに放り込もう」
クラス委員がリレーのメンバー表を見ているとハヤトも席を立ち駆け寄って眺めた。そして、右側の指をパチンと鳴らした。
「そうだ、真司の前に二宮さんを入れよう」
真司と麻子は同時に驚いた。真司はそれもいいや、ドンと来い!という感じだった。麻子はリレーは特に嫌いだった。同じ徒競走でも、かけっこならば自分だけで済むが、リレーならば遅い麻子はチーム全員に迷惑をかけてしまうからだ。初めの方でも真ん中でも後の方でも、どこでもプレッシャーがかかった。
麻子は真司の方を見た。真司も麻子に気づいたのか、任しとき!というように、胸をポンと軽く叩いた。麻子は少し元気が出たが、早くリレーが終わって欲しかった。でも、運動会までは1ヶ月くらいあった。
隣の席のはるかが言った。
「仁川君が何とかしてくれるって。そのためのリレーなんだから」
「そうだけど」
麻子は、昨年まではクラスで浮いていたこともあってリレーがあっても全く練習せずに本番を走ったが今年は練習しようかなと思った。真司が速いといっても甘えていられない。ヨーシと麻子は心の中で拳を握った。
因みに、はるかは女子の中でも足が速いので、アンカーのハヤトにバトンを渡すことになった。綾乃も速かったが、翔からバトンをもらいたいからとはるかに頼み込んだようだ。
はるかはやっぱり綾乃だなと思ったが、前のような陰険さは消えていた。鈴木君パワーかと内心微笑んだ。
この回も自力で書きました。
AIは使っていないです。




