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桜広場イレギュラーズー麻子と真司のその後ー  作者: 村松希美


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1/4

1 夏目刑事

1 シャーロック・ホームズ未来からの依頼人

2 青いガーネットの奇跡


の長編に続く3作目の麻子と真司の物語です。




「ホームズシリーズで、日本が出てくる作品のタイトルは?」

「分からないわ。そんなこと、気をつけていないもの」

「本当に分からないのか?」

「何よ、偉そうに!」 


 麻子と真司は、放課後、バスに乗り、いつものように桜広場近くのバス停で降りて、桜広場に向かった。夏から秋に代わる風の中にひんやりしたものも含まれ、赤トンボが五六匹飛んでいる。


「高名な依頼人にあるよ。聖武天皇と正倉院のことが少しだけ出てくる」

「へえ~」

 麻子はさっきはカチンときたが、真司の記憶力や物知りなところにはいつも感心していた。


 真司は、聖武天皇や正倉院のことはどこかへ行き、高名な依頼人のグルーナ男爵のような男に、麻子が騙されたらと思うと身震いした。

 麻子は真司が今そんなことを考えていたなんて思っても見なかった。

 真司は、そんなことは今のところは大丈夫だと思い直した。


「じゃあ、ホームズの時代ビクトリア王朝時代に、イギリスに留学した日本人は?」

 真司が次々に問題を出す。麻子もシャーロキアンだけど、漫然と読書をしているだけなので、ホームズ本と言えども雑学には詳しくない。


「えっ、そんなこと言われても、、、?」

「アニメのホームズにも出てくるぞ」

「あっ、確か、、、」

麻子は犬のホームズを思い浮かべる。着物に袴をはいた日本人男性。夏目、、、

「夏目きんのすけ」

「そうだけど、ポピュラーな呼び方は?」

「えー」

(夏目だから、そうせき!)

「夏目漱石よ!」


「そう。ヒントが簡単だったな。漱石はイギリス留学中はあまり楽しくなかったみたいだ」

「でも、ホームズさんに会ってたんじゃ?」

「漱石は探偵が嫌いだったみたいだ。漱石の本で探偵をけなしている個所がいくつかあるみたいだ」


「どうして、そんなことまでわかるの?」

「そりゃホームズ本を読んでいたら書かれてるよ。日本人にとって、ホームズさんの時代に夏目漱石がイギリスに留学していたという事実はとても魅力的らしい。俺だってワクワクする。まあ、俺たちも会ったけどな」


 桜広場の入り口から、いつものベンチを眺めた。誰かがベンチに横になって、その上半身に新聞を広げてかけていた。

 「誰だろう? こんな時間に」

 真司と麻子は怪訝な顔をした。放課後のこの時間は大抵ベンチは空いている。だから、真司と麻子は学校ではあまりしゃべらない代わりに、このベンチで一緒に過ごしていた。


 桜広場は時計盤のように、12本の桜の気が円形に等間隔に並んでいる。それぞれの木の下にベンチが設置してある。他のベンチも空いているが、いつもの6時の桜の木の下のベンチが2人にとって心地良かった。


 でも、今日は先客がいた。

「12時のベンチにするか」

 真司が麻子に声をかけた。その間にベンチに横になっていた男が新聞をのけて起き上がった。


「ちょっと、待った。君はあの時の少年じゃないか!」

「あっ、あなたはあの時の」

「そうだよ。あの時、車で君をここまで送ったね。でも、ここはすごい穴場だよ。とっても気持ちいい。君たちの聖域かい?」男は、真司と麻子を見遣った。2人は顔を見合わせた。


「あの、あなたは誰ですか?」

 真司が怖ず怖ずと訊ねる。

「この前のお礼もちゃんとできていないし。」

「僕?僕は夏目啓吾。刑事だ。」

「け、刑事さんだったのですか。」


 真司は、夏休みに桜広場に向かって走っていた時に、途中で乗せてもらった夏目刑事の車の中の新聞を思い出した。


 どうりで!真司は納得した。刑事ドラマでは、刑事が犯人を見張っている時に、新聞を読んでいたりする。正確にいうとふりだけかも知れないが。


 夏目刑事は麻子をじっと見ている。真司は夏目刑事のさっきの言葉を思い出した。


「聖域って。お、俺たち、まあ、そうですが。最近、彼氏彼女になったばかりですよ。」


 真司は何故かこんなことまで口走っていた。麻子は二人のやりとりを聞いて、あの時、真司を車で送ってくれた人と納得した。


「そうなんだ。中坊はいいな。こんな時間帯に解放されるからな。」


「そうですか?刑事さんだって、犯人を見張っている間は羨ましいですよ。勉強しなくて良いし。さっき、麻子と夏目漱石について話してたんです。そしたら、あなたは夏目っていうし。」


「どんな話だい?」

「その前に、俺たちシャーロキアンなんですけど、ホームズと関係する話です。」


「ホームズ、僕も読んだよ。アガサ・クリスティより面白いな。中坊の時はホームズのような名探偵に憧れだけど、日本でその仕事をするとなるとやっぱり刑事だよ。まあ、レストレードと同じ扱いは、本来の意向から外れるけど。」


「でも、夢を叶えたのですね。俺は、ホームズのような名探偵になりたいけど」

「探偵って、日本じゃ、浮気調査やペットの捜索が多いよ」


「でも、俺は刑事さんが訪ねてくるような名探偵になりたいです」

 夏目刑事は、真司の一点の曇りもない澄んだ目を見てそれ以上言えなかった。


「夢はでっかくだな!」

 夏目刑事は、真司の肩を叩いた。


「実は、俺たち、ホームズさんとワトソンさんに会ったことがあるんです。」


「し、真司」

 麻子が驚いて真司を制止しようとした。


 真司も夏目刑事にどうしてホームズさんの話をしようと思ったのかわからない。夏目刑事は夏休みの炎天下に真司を車に乗せてくれたし、ホームズを読んだこともあるようなので、無意識下で親近感が沸いたのかも知れない。


「何だって??」

 夏目刑事が目を白黒させて真司と麻子を見た。夏目刑事はしばらく顎に手を当てて考え込んだ。

「まだ、暑さも残っているし、君たち、夢でも見たのだろう。ホームズに会った?まさか、そんな、はっ、はっ、はっ、……」


 よく考えたら、夏目刑事の反応は無理ないのだが、真司はムッときて、どうしたら、夏目刑事に信じてもらえるか思案した。そうだ!


「麻子、あれ、アイリーン・アドラーのサイン。定期入れに入れているだろう」

「ちょっと、真司」

 麻子は真司の腕を取って引っ張り、夏目刑事に背を向けると話出した。


「あんなこと、言って、私たち変だと思われるわ。それに、このサインは、、、」

 麻子は2人のロンドンでの思い出だものと続けたかった。


「麻子、夏目刑事は何だか話せるんじゃないかと思う。何となくだけど」

 麻子は真司がどうしても証明したかったのを察して、定期入れから、アイリーン・アドラーのサインの紙切れを取り出した。真司は麻子からアイリーンのサインを受け取ると、夏目刑事に広げて見せた。夏目刑事はその紙切れをじっと見て何やら考えていた。


「確かにアイリーン・アドラーと書かれているが」

 夏目刑事は筆記体でサラサラ書かれていたサインを眺めて言った。

「でも、サインを書くのならば、君たちにだってできるじゃないか。でも、待てよ」


 夏目刑事は真司と麻子をまじまじと見つめた。

「君たちの様子を見ていると、夢ではないような気がするが、タイムマシーンでもなければ不可能だ」

「あったんですよ、それが」

「えっ?」

 夏目刑事は半信半疑ながらも、真司の話に耳を傾けた。真司は麻子とタイム自転車でホームズとワトソンに会いに行ったことを手短に話した。


「そんなことって、、、」

 夏目刑事は口をポカンと開けて、頭を整理していた。

「そうだ、証拠の品はまだありました。俺たちの家の物置に眠っていますが」

 真司はモリアーティが桜ヶ丘町から持ち帰った、パソコンや携帯など月立の電化製品のことを話した。


「何だって?」

 夏目刑事は、更に驚いたというように、唖然としていた。

「、、、」


「とにかく、俺たちは早くモリアーティの盗品を手放したいんですよ。俺たち中学生だし、盗品のことは誰にも相談できないし、フリーマーケットかリサイクルショップで売る後見人みたいな大人を探していたんです」


「それで、僕にか。まだ、君とは2回しか会っていないよ。僕は」


「回数なんて関係ないです。何となくだけど、ピンときたんです。車で送ってくださったし」


「参ったな。刑事だから副業はできない。だから、フリーマーケットは無理だな。リサイクルショップの名義人ならなれると思うよ」


「ホントですか?」

 夏目刑事はおかしなことになったと思ったが、ホームズと会ったというこの中学生2人に興味を持った。


「まだ名前を聞いていなかったな」

「俺は仁川真司、こっちは二宮麻子」


 夏目刑事は2人を交互に見て、真司と握手した。

「僕は夏目啓吾だ。お見知りおきを」

 と夏目刑事はおどけた。


「そしたら、来週の祝日にセンター街のリサイクルショップに13時に集合だ」

「ありがとうございます」


 真司は満面の笑みで頭を下げた。麻子は急な展開に戸惑ったが、モリアーティの盗品を手放せるので喜んだ。






前回の青いガーネットの奇跡で麻子と真司はめでたく両想いになりました。


その後のお話です。


AIとの共作になりますが、この回はAIなしで自力で書きました。

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