第一話「異世界へ行く方法」
ジリリリリリ。
今日もスマホのアラーム音で無理やり起床する。
勿論仕事へ向かうために。
高校を卒業してそのまま県外の工場へ就職、1年目の3月を迎えた。
実際に社会に出て、働くことの厳しさを知った。
行きたくないな。
毎朝、気が付けば口から嘆きがこぼれている。
顔を洗った後、朝食をとりながらスマホで情報収集を行う。ただのネットサーフィンだが。
すると、気になる記事が目に入ってきた。
『異世界へ行く方法。貴方も現実社会から抜け出そう』
なんだこれ。半信半疑、もとい全疑で記事を開いてみる。
中には異世界へ行くための具体的な手順が書かれていた。
方法として何種類か記述されていたが、中でも俺の目に留まったのは『エレベーター手法』なるものだ。
一度エレベーターで最下階まで行き、その後1階から最上階までの全てのボタンを押す。この間に誰も乗ってこなければ成功。気が付くとボタンが増えていて、それを押すと異世界へ行けるという。
ここで、ふと時計を見るといつもの出勤時間を超えていたので慌てて家を飛び出した。
工場へ着くと、早速エレベーターが目に入ってきた。
馬鹿馬鹿しいと思いつつも、あらぬ期待が頭をよぎる。
試してみるか。
1階から乗ったので、全階層のボタンを押せば良いだけだ。
2階……3階……と問題なく上昇していく。
4階……5階……そして最上階の6階。
若干の緊張を覚えながら、ボタンを見てみる。
――!!
6階のボタンの上に見たことのないボタンが増えていた。
まじかよ。
当たり前だが信じてなどいなかったため驚きを隠せない。
固唾を飲んでそのボタンを押してみる。
すると、エレベーターは上へと動き始めた。
しばらくして、チーンと音が鳴り停止する。
エレベーターの扉がゆっくりと開く。
――成功だ。




