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7日目

陽華(ようか)に突然キスをされた翌日の月曜日。

昨日陽華とお昼をたべれることになったので、例の部室で陽華と一緒にご飯を食べている。

「いやー、昨日はいろいろあって楽しかったねー。」

「ほんとにいろいろあったよね。急に陽華がキスしてきたり。」

「あれは凪沙(なぎさ)のためを思ってのことだったから多めに見てよ。」

私のためだと言うが、多少悪びれてもいいんじゃないか?

「そうは言うけどさ、仮に私が嫌がるタイプだったらどうするつもりだったの?」

「あれ、ちょっと怒ってる?

『嫌がるタイプだったら』っていうけどさ、凪沙がしてほしそうだったからなぁ。あと、3年も付き合ってたら嫌がるタイプじゃないことはわかるよ。」

「怒ってないよ、私にはそんなのないから。

…私、そんなにしてほしそうな顔してた…?」

確かに、悶々とはしていたが実際にしてほしいとまでは思っていなかったはずだ。…もしや、心のそこでは陽華とキスをしたいと思っていたのだろうか。

しかし、陽華が3年で私のことわかってくれていることが知れたので、こんな些細な疑問は数秒で消えてしまった。

「してたしてた。何なら今も。」

「いやいや、あの時ならまだしも今はない。もしかして陽華がキスしたいだけじゃないの?やーらし。」

「そ、そんな訳ないじゃないか。凪沙はユーモアセンスを磨いたほうがいいんじゃない。」

お?焦ってる?もしや予感的中か…?

そう思い、私はおもむろに陽華に近づいていく。

「な、凪沙…?なんで近づいてくるの?顔がちょっと怖いよ…?」

「そんなことない。これは実験だよ。」

そういいつつ陽華に迫っていく。

窓から今の私たちを見ると、金曜日の立場が逆転しているような感じになっているはずだ。

…陽華の顔が赤らんできた。艶美(えんび)だ。

「ちょ、ほんとにするつもり!?学校だよ!?ココ!?」

焦っている陽華もかわいい。

陽華の目が閉まりだしたタイミングで、つまりキス待ち顔になったところで私は陽華から離れ、私が座っていた席に腰を下す。

数秒、私以外の時間が止まったような空気が流れた。

…ついに入門してしまったか、思うより先に陽華が動き出す。

「あれ?凪沙?キスは?私とのこれからは?」

なんか陽華が変なこと言ってる…。

「陽華さーん。大丈夫ですかー?寸前で私が陽華から離れたからキスはないよー。」

「期待させといて?…凪沙のヘタレ。」

誰がヘタレじゃ、誰が。

…私、日曜日の間、あんな顔してたのかな?不安になってくる。

「あー、凪沙にしてやられた。いつもは私が凪沙をしてやる側なのに。

この思いはどうやって発散させるのがいいのだろうか!そう、一週間後の期末テストで点数が低いほうが高いほうのいうことを一つ聞くというのがいいだろう!

と、いうことで。期末テスト点数で勝負しない?」

テンションがおかしい。

「めんどくさいからパス。あ、でも生物と国語以外の科目一つだったらいいよ。」

「わかった。その条件で行こう。じゃあ、なんの科目がいい?」

「英語でいいよ。」

「コミュ?論表?」

「もちろん後者。コミュは勉強する意味がないから。」

「おっけー。」

「あ、言い忘れてたけど、さっき陽華、めっちゃ物欲しそうな顔だったよ。そんなに私とキスしたかった?」

「あー、聞こえない聞こえない。」

「もしかして、キスしたいから勝負?やーらし。」

「あー、あー。」

金曜、日曜の仕返しはこれぐらいでいいだろう。

それにしても、ほんとに私とキスしたいのかな?まあ、陽華がしたいなら別に私としてはやぶさかではないのだが。


   〇〇〇


絶望の週明けである。

今日から日菜(ひな)ちゃんと会える日が減ってしまう。

何でも、彼女の友人と昼食を食べる機会を増やすらしい。例の一件からその友人のことはあまり意識したくないのだが、嫌でも嫉妬してしまいそうになる。

綾瀬(あやせ)ー、今日も例の後輩ちゃんとこ?」

「残念ながら今日はあんたらと一緒。」

「お、なんか久々な気がする。」

「そうでもないでしょ。」

そうでもなくない。実際ここ数日は日菜ちゃんと少しでも長い時間いるため、弁当をすぐ食べ終え、図書室へ向かっていた。

「あ、和泉、今日綾瀬後輩に振られて私らと一緒だって。」

「振られてないし。」

「えー綾瀬振られたの?どんまい、こっからの行動次第でまだ何とかなるよ。」

「だから振られてない。それに私が何かしたからとかじゃなくてただあの子が友達と一緒にご飯食べるからだし。」

「それはそうと、今日こそはその後輩ちゃんのこと教えてよ。いつもみたいにはぐらかせると思うなよ。」

聞かれて答えなかったのはあまり日菜ちゃんのことを知らなかったからとは言わないが、最近は日菜ちゃんのことを知れてきているので、今日は教えよう。

「ご飯食べ終わってからね。」

「食べながら話すの苦手だもんね。」

「ただ時間稼いでるだけかもよ。」

「ちゃんと話すよ。」


「どうする?私たちが質問する?それとも綾瀬が勝手に話す?」

「そっちから私に質問して。ていうか、相場質問じゃない?私がぺらぺら人のこと色々話すの結構変だと思うけど。」

「それもそうだ。とりあえず私から質問するわ。

名前は?」

どうしようか、なんとなく名前を言いたくない。とられるとかそういった心配はないはずだが…。とられる?

「なんとなく言いたくない。知りたかったら自分で聞いてよ。あの子も文芸部だったよ。」

「文芸部なんだ。文芸部って一年生一人しかいなかったよね?」

まずったな。まさか文芸部に一年生が一人しかいないとは思わなかった。しかし、私の口から名前を出すことが嫌なだけだと私の心が伝えてくれている。さっきのとられる云々は何でもないのだ。

「そだね。

あの子だったんだ。名前知らないなぁ。今週の部活で聞いてみるか。」

「今週テスト期間だから部活ないよ。」

「あー、もうそんな時期?多少勉強しないとヤバいかなー」

「あたしもー。そろそろ歴史ぐらいやろうかな。」

「世界史今回覚えること結構多いよ。早めにやっといたほうがいい。」

「柊もう勉強してるの?まっじめー」

「普通だよ。

テストのことより今は綾瀬の後輩ちゃんのことだよ。」

「満を持して、和泉、いっきまーす。後輩ちゃんが誰なのかはこれからわかることだから、綾瀬が後輩ちゃんをどう思ってるかを知りたいでーす。」

どう思ってるか、か。好ましくは思っているが、恋愛脳なこいつらのことだ、ストレートに

『気に入ってるよ』なんて答えれば、

『それはそれは、部活で何気なくアピールしとくね!』なんてことになってしまうかもしれない。これは避けたい。とすれば、何と答えるか。こんな時自分の語彙の無さが嫌になるが、答えはもう思いついた。

それはそうと本とか読もうかな。日菜ちゃんおすすめとか教えてくれるかな。

「面白い子だなって思ってるよ。最初は仕方なく私に絡んでくれてたけど、最近は楽しいって言ってくれてし。」

「けど振られたんだね。」

「しつこい女はモテないぞー。」

「モテなくてもいいの。彼があたしを愛してくれるなら。」

「え!?小林彼氏いんの!?初耳なんだけど。」

こいついつの間に彼氏作ったのか。そんな驚きと一緒に安堵も私の心に訪れる。あと数分の昼休みは小林の彼氏の話に持っていかれるだろう。小林に感謝しなくては。


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