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2日目

さて、今日はいきなり四限終わりの昼休みから初めていこう。

本日は陽華に珍しく約束が取り付けられていないとのことなので、一緒に我が文芸部部室にて二人で食事をする。

基本的に陽華は忙しく、滅多にお昼を一緒に食べることはないので、とてもうれしい。

「元気がいいね、凪沙。何かいいことでもあったのかな?」

「今日は陽華とお昼が食べられるからね。いやでも気分がよくなるってものだよ。」

「普段私に、『私由来の感情はない』とか言ってる人の言葉とは思えない発言だね。」

あっ

「いやいや、今のは建前だよ、誰だって陽華を独り占めできるのは幸せなことだからね、その学年内での共通意見に合わせたまでだよ。」

いけない、いけない。私の『本質』を見失うところだった。

「そっか。お世辞でもそんなことを凪沙が言ってくれるなんてうれしいな。…昨日の…」

「?昨日?」

「いや、何でもない。さあさあ、二人で楽しい食事としゃれこもうじゃないか!」

それもそうだ。変なことは考えずに、陽華との食事を楽しもうじゃないか。

「「いただきまーす」」


楽しい食事の時間は永遠には続かない。予鈴が鳴ったら私たちは私たちの教室に戻らなければならないのだ。

といっても、陽華は七組で私は八組でフロアは一緒なので、そこまでは一緒だ。

弁当をかたずけながら陽華が口を開く。

「今日も私部活ないから一緒に帰ろ。教室に迎えにいくね。」

「ゴメン。今日私部活。週一の活動がこんな日にあるなんて…。」

「そう。じゃあ教室で待ってようかな。」

どうやら陽華は私が部活を終わるまで待っていてくれるらしい。なんとできた友人だろう、日菜月陽華。

「おっけー。じゃあ、こっち終わったら教室行くね。」


                   〇〇〇


おかしい。桐生綾瀬はそう思う。

だが、特別どこかに違和感があるわけではない。

彼女は昼休みの今、友人からの誘いを断り、適当に食事を済ませて彼女らしくない図書室にいるわけであるが…

昨日、『またここで会おう』と約束したはずの後輩、月極日菜がココにいないのだ。

もしかして体調不良だろうか、昨日の時点ではそんな素振りはなかったが。仮にそうだとしたら心配だ。お見舞いに彼女の家まで行きたいところだが、何せ昨日知り合ったばかりであるから家の場所を知らない。

彼女が昨日知り合ったばかりの後輩のことをここまで心配するのは珍しい。変といってもいいぐらいだ。

なぜなら、彼女は知り合って間もない人間のことを心配できるようなできた人間では決してないのだ。

しかし、こと月極日菜についてはここまで心配できている。


予鈴が鳴るまで特に何をするわけでもなく日菜を待っていたが、結局彼女は来なかった。


                   ☆☆☆


六限が終わり、私は陽華とともに昼食を食べた、文芸部部室に足を運んでいた。

既に私を除いた部員は集まっていた。

ちなみに、私以外の一年生の文芸部はいない。今年の一年生は皆、やる気があるらしい。

私が来たことで全員集まったところで何かが始まるわけではない。

我が文芸部の活動内容はズバリ「本を読むこと」である。読んだ本について感想を書いて顧問に提出したりする必要はないので、部員それぞれが好きなことをしている。

その中の一グループは三人ぐらいで大きな声で会話に花を咲かせている。陽キャな感じの女子集団だ。

彼女らの名前はそれぞれ、小林、和泉、柊で、二年生の先輩だ。

部活の名前から想像される雰囲気に合っていない集団なので、部活動見学の際の自己紹介で記憶されてしまった。

聞こえてくる話の内容は、彼女らの共通の友人の様子がおかしい、という内容らしい。

どうも、一緒に昼食を食べる誘いを断り、そうそうにどこかへ行ってしまったらしい。

なぜ私が『彼女らの会話内容が聞こえているのか』について一応弁明しておく。

私は盗み聞きをしてるのではなく、彼女らの声が大きいのだ。


この学校は前時代的な学校の例にもれず、部活動には全員参加のため、部活で積極的に活動したくない人がこの部活に集まってくる。

こんな感じなので、幽霊部員も相当な数いるらしい。しかしながら、何かしらの部活動に所属さえしていれば学校としてはどうでもいいらしい。

かくいう私も夏休み前までは参加し、それ以降は幽霊部員になる予定である。めんどくさいからね。

ちなみに、三〇分の時間経過により自然解散となる。

おそらく、いつかの部長さんが「最低限三〇分ぐらいはこの部屋にいよう」と定めたのだ。


かくして、時間になったので、私は本をカバンにしまい、私を待ってくれている友人のもとへ歩みを進めるのだった。


                   ☆☆☆


陽華を教室まで迎えに行った。

ところが、なぜか彼女は所属している一年七組ではなく、私の所属している八組の私の席に座り、黄昏(たそがれ)ていた。陽華が席に座り黄昏ているだけで絵になってしまう。すごい。

それはそうと、

「なんで陽華は八組にいたの?七組を見に行った時、先に帰っちゃったのかと思ったよ。すこし悲しかった…。」

「いやぁ、ごめんごめん。単に凪沙を驚かせようと思っただけだから。まあ、多少の申し訳なさはあるから、コンビニでなんか奢るよ。」

奢るの一言でさっきまでの気持ちはどこへやら。いつもどうりの感情が戻ってきた。

我ながら現金な女だ。陽華の気が変わるかもしれないので、顔には出さないよう注意しよう。


コンビニでジュースを買ってもらった。もう隠す必要はない。

「ほんとに奢ってくれるなんて、陽華はほんとにイイ子だなぁ。陽華と結婚する人は幸せ者だね。でも今は私がこんなイイ子を独り占め!」

「少し前までむっすとしてたのに、ジュース買ったとたんにこれだよ…。まあ、イイとして。そんなこと言ってくれるなんて、凪沙はほんとにかわいいなぁ。よーしよしよし。」

「ああ、頭なでないでぇ。」

ときどき陽華は私の頭をこうやって撫でてくる。陽華のほうが私より身長が高いので、上から抱きしめるような形になる。ちょっとエッチだ。陽華はかわいいので、私のその気がなくてもそんなことを思ってしまう。

「ふぅ。堪能した。ありがと、凪沙。」

撫でタイムが終了した。陽華の顔を見ると、すこし赤くなっていた。

からかってやろう。撫でたお返しだ。

「陽華、ちょっと顔赤くない?私がかわいくて、照れちゃった?」

言ってから気が付いた。私、今すごいこといったよな。私もちょっと赤くなってきたかも。

「照れてないよ!ちょっと暑くなってきたからきっとそのせいだよ!それに、凪沙も顔ちょっと赤いじゃん。そっちこそ私に照れてんじゃないの?」

「私もちょっと暑いなあーと思っただけ!」

私たちはそんなことをやいのやいの言いながらいつもの分かれ道まで一緒に歩いた。


                   〇〇〇


綾瀬は友人が部活のため、三〇分ほど自身の教室で時間をつぶしていた。

もう少しで彼女らの時間を浪費するだけの活動が終わるはずだ。

ともすれば、友人三名、小林、和泉、柊が扉から顔を覗かせた。

「あーやせっ。部活終わったよー」

「待っててくれてありがとねー」

「待ったよー。かえろかえろ」


おもむろに柊が口を開く。

「綾瀬、今日の昼何やってたの?あたしらと食べないの珍しいじゃん。」

「そーだよ。わけぐらいはなせよー」

「密談か?彼氏か?彼氏なら紹介しろよー」

「あー、それね。ちょっと図書室行ってた。」

「図書室」という単語が綾瀬から発せられた時、三人は耳を疑った。

「綾瀬が図書室とか似合わねー」

「「それな」」

「話変わるけどさ、今日の綾瀬、なんかちょっと変じゃなかった?挙動不審っていうか」

「本人の前でそれ言う?まあ、昨日寝に図書室行ったらさ、後輩がいて、また明日って約束したから。」

答えになっていない答えに彼女らの脳みそは勝手にこう解釈した、

『『『男だ!』』』

彼女らは恋愛脳であった。

探りを入れるため、和泉が仕掛ける。

「で、どうだった?どんな話したの?その後輩はかっこいいの?」

「話はできなかったよ。図書室に来てなかった。ていうか、後輩は女子だよ。男じゃないでーす。」

『『『百合だ!』』』

彼女らは筋金入りの恋愛脳だった。ジャンルは関係ないらしい。

「男じゃないのはイイとして、後輩ちゃん、かわいい?」

綾瀬は日菜の顔を思い出す。

いや、思い出す、と言っては語弊がある。綾瀬は友人との会話には集中せず。日菜のことを教室で待っていた時から考えていた。

「まあ、かわいいよ。ていうか、めっちゃかわいい。」

その答えが彼女らの心に火をつけた。後輩が男だと思っていた時にはなかった感情だ。

「がんばれよ。私は応援してるぞ。」

「あたしもー」と小林。「私も。」と柊。

「応援ってなんだよ。」


こんなくだらない話をしながら、四人は帰って行った。


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