カメラ機能があるらしい!
ダガーを手に、ウサギの魔物を倒す。
作業が終わり、作業の癒しを求めてゲームにログイン。
「楽しいですねぇ~」
気分上々、私は微笑みながらウサギを屠っていると、何やら派手な格好をした人が苦戦しながらウサギを攻撃している。
すばしっこいウサギに翻弄され、攻撃が思うように入らないようだ。加勢はしないが……。あの人の周りを飛んでいるのはなんなんだろう。大きな目玉のようにも見えるが。
私は気になり、自分にもないか探してみると、カメラ機能というものが存在するようだ。
開いてみると、私の所持しているカバンの中から彼女たちと同じような目玉のようなものが出てくる。なるほど、カメラ……。
カメラ機能の詳細は、目の前の光景の撮影や、自分の動画投稿サイトのアカウントと連携すると、これで配信活動もできるらしい。彼女たちは配信活動をしている最中のようだ。
そこはいい。
「撮影か。いいじゃないですか」
なぜこのような機能をはじめから知っておかなかったのか。
目の前のゲーム体験を優先し、メニューを調べることすらしていなかったな。反省。メニューで開いたのはフレンドとアイテム一覧ぐらいのみだったしな。
これからはカメラを使っていこう。
「手持ち?」
私は手持ちと書かれた文字をタップしてみると、その目玉が飛行をやめ、私の掌にカメラのように四角い形となって収まった。
どうやら自分でカメラを覗き込んで撮影するということも可能みたいだ。戻すには飛行ボタンを押せば先ほどの状態に戻るだろう。
「このゲームでの絶景、ネタになりそうなシーンとかもろもろ撮影できそうですね。画像のデータは接続しているPCに自動的に送信されるみたいですし……」
私は今、ゲームをものすごく楽しんでいる。
新たな機能の発見、それは私にとって心躍る展開だ。
「ひでぶっ」
カメラに興奮していると、何かしら攻撃が当たった。
背後を見ると、先ほど派手な人たちが戦っていたウサギがこっちに逃げてきて、私を見かけたから攻撃してきたようだった。
「あ、あのごめんなさい」
「巻き込んじゃいました……」
「…………」
私はすぐに起き上がり、逃げようとしたウサギの前に先回りしてダガーを突き刺す。
油断していた私も悪いが、逃げた先に私がいたからと言って攻撃するのはいかがなものか。ダメージを受けて思わず「ひでぶっ」と言ってしまった。
この人たちは十中八九配信している最中である。どこかで見たこともないような顔の人たちが私の痴態を全国にさらしてしまったかと思うとちょっとこのウサギに腹が立った。
「大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」
「あ、いえ……」
私はまたそそくさとその場から立ち去り、少しいらだった感情を抑えるべく、魔物討伐にいそしむことにしたのだった。