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シュカ

 始まりの町を抜け、草原を走る。

 ここまで来たらいいだろうと、私は速度を緩めた。


「ああいう悪質なのには注意しないとですね」

「その通りッ!」


 なぜか隣に可憐な女性がいた。

 そこはかとなく、見たことのある人物に似ている。すごく既視感があるような気もするが。

 どこかで見たか?


「……あぁ、私? 私はシュカ! よろしく!」

「ユメミです」

「災難だったわね〜。ああいうのに絡まれるなんて。あれ、界隈では有名なの。初心者を煽りバトルに持ち込ませて逆ギレするやつ。自分も初心者装備を着て騙そうとしてるのタチ悪いわよね」

「ですね。で……あなたはなぜ私についてきたんですか?」

「ふっふっふっ。あなた、相当強いと見た! うちのクランに入らない?」


 クラン……か。たしか以前マンダラ先生が言っていた気がする。このゲームにはクランというプレイヤー同士のグループがあるとか。

 クランに入っているとNPCの依頼が自動的にやってきたり、クランの人同士で自由に素材、武器など交換できるとか。


 クランに入るメリットは大きくあるが……。クランによってはノルマというまのを設定しているらしい。

 月に魔物を100体とか。そういう情報が見れるようになっており、貢献度というものになる。ランキングというものも存在し、ランキング上位になるには貢献度を上げるのが大事なんだとか。


 そういうの私は嫌だ。月に強制的に何かを強要されるのは苦手だ。

 漫画は昔から描くことが大好きだったし、強要されるまでもなく基本的に締め切りには普通に間に合っていたからいいのだが……。


「申し訳ありません。私はクランに入るつもりはないので」

「えぇ〜!? ここだけの話、有名人とかめっっっちゃいるよ?」

「現実でのですか?」

「そうそう」

「だとしても私は興味ないです。すいません」


 シュカはガックリと肩を落としていた。


「そっかぁ。ここでしつこくするのも嫌だろうしねぇ。うちに欲しかったわ……」

「申しわけありません」

「で、でもフレンドにはなろ? ね? ここで会ったのも何かの縁! 気が向いたら入ってくれるでもいいし、何か手伝って欲しいことがあったら私が個人的に手伝うから! ね?」

「フレンドだけでしたら」


 シュカとフレンドになる。

 シュカはレベル40を越えていた。割とヘビーユーザー……。


「じゃ、困ったことあったらいつでも声をかけてねん!」

「わかりました」


 シュカは去っていく。

 私はシュカを見送り、次の町へ向かいログアウト。これから喜谷さんが来るのだ。

 

 ログアウトして、テレビをつけて待っていると喜谷さんがやってきた。

 

「さ、最終巻の打ち合わせだ。あ、これ来週号のジャッツの見本誌」

「ありがとうございます」


『女優の相澤 朱歌が活動休止を発表しました』

「お、そうなのか……。残念だな」

「ファンなんですか?」

「実はそうなんだ。活動休止か……」


 喜谷さんはがっくりと肩を落としていた。

 喜谷さんプライベートのことは何も明かさないから知らなかった……。

 ん? 朱歌……シュカ。

 あぁ……どうりで見たことがあるわけだ。あのプレイヤー、シュカは女優の……。


 確かに有名人がたくさんいるクランだ。


「ん? どうしたんだ? そんなにやけて」

「いえ、なんでもないです。表紙ですが一応すでにデザイン案は出来てます。最終巻ということなのでちょーっと悩んだのですが、都市伝説研究部の部員全員をと」

「どれ……。お、いいんじゃないか? 他にどんな案があったんだ?」

「第一巻のオマージュとか、主人公、岡里 透とヒロインの卜伝のツーショットとか」


 私はデザイン案を喜谷さんに見せ、一番いいのはやはり部員全員集合イラストだった。

 

「では、私は加筆に入ります」

「あぁ、分かった」

「あとがきとかも書いておきますね」


 喜谷さんと別れ、私はデスクと向き合う。

 ペンを取り、本誌に入れられなかったシーンを描いていく。

 

「まだまだ時間はありますからね。夕飯どきまで作業したら、またゲームでもしましょうか」










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