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修羅場

 昨日は楽しかったな。また今日もログイン……と思っていた矢先、電話がかかってくる。

 喜谷さんからだった。


「はい」

『芥屋先生暇かい!?』

「まぁ……。読切ですか?」

『いえ、それほどのことではないんだけどな……』


 そして今現在。


「先生こちらの原稿終わりました!」

「ぐごぁあ〜〜……」


 絶賛修羅場である。

 

「すいません芥屋先生。うちのバカが……。連載終わった身だというのに手伝ってもらって」

「バカとはなんなのだね伊藤殿!」


 担当の伊藤 日々斗さんに叱られているのはギャグ漫画"BAKAHO"の作者の万田 曼荼羅先生。ちなみに本名らしい。曼荼羅……。

 私は今現在、曼荼羅先生の1日アシスタントとして入ってきているのである。


「煩いさっさと手を動かしやがれバカやろう!」

「むきーーっ!」

「いいですよ。どうせ今はゲームしかやることないですから」

「ゲーム? なんのゲームを?」

「FWOです」

「おぉ〜、僕もやってますよそのゲーム!」

「そのゲームにやりすぎて原稿すっぽかしたんだろうがバカ!」


 なるほど。

 そろそろ締め切りだというのにこの真っ白加減。ゲームにのめり込みすぎだな。

 

「作者都合で休載とかになってみろ? 俺はお前をしばく!」

「脅迫! 脅迫だろそれ!」

「芥屋先生まで駆り出してもらって間に合わないではそれぐらいする必要があるだろうが!」


 締切は明後日である。

 アシスタントさんと共に、私は曼荼羅先生が描く原稿のベタ塗りなどを手伝っていた。

 今のご時世にアナログで描いてるのはジャッツ連載の漫画家くらいだろう。


「そろそろ編集部もデジタル化を進めたらどうですか? 僕デジタルの方が好きなんですけど」

「君はアナログの方が漫画にあってるからアナログでやってもらう」

「なぜっ!? 時代遅れだろう編集部! デジタルでやらせろ!」

「編集部は今高齢化が進んでいてな。最新技術とかわからんヤツの方が多いんだ」

「くぅージジイ!」

「文句言わずやる!」


 隣で伊藤さんと戦いながら描いてるのを尻目に、私はどんどん背景を仕上げていく。


「背景終わりました」

「え、もう?」

「芥屋先生は超速筆なのだ。だからアシスタントとしても頼もしい」

「……ちなみに週刊連載でどのくらいで終わってました?」

「締め切り3日くらい残してましたね」

「はや……!? 人間ですか!?」

「人間です」


 私の場合はそもそもとして体質がショートスリーパーであり、基本的に3時間しか寝ていない。

 起きてる間は基本的にタブレットに向き合い漫画を描いている。ちなみに編集部にはデータとして渡すのはアレだが印刷して渡すのは問題ない。そのことを告げないあたり伊藤さんはアナログでやらせるつもりなのだろう。


 まぁ、デジタルとアナログでは勝手変わるからな。うん。


「ぐあー、疲れたぁ〜。もう休載でいいんじゃないですか?」

「2話かけてやるギャグで間に休載が入ったらつまらなくなるだろ間抜け」

「ですよね〜」

「曼荼羅先生がんばってください」

「はいっ! 芥屋先生! ……芥屋先生、これが終わったら僕とゲームしませんか?」

「いいですよ? 私始めたばかりなのでフレンドとか欲しかったところなんです」

「本当ですか!? 頑張るぞ〜! うおお〜!!」


 やる気出たようだ。

 まぁ、曼荼羅先生は面白い人だな。うんうん、こういう人の方が私はやはり好みだ。

 ……曼荼羅先生みたいな人も登場させるキャラとしてはいいかもしれない。たまに観察してみよう。


「芥屋先生、いいんですか?」

「面白いので」

「芥屋先生がいいのならいいのですが……」

「他の作品を敵と認識せずひたすら愚直に自分の漫画に向き合うのはカッコいいと思いますからね。嫌ではないです」

「……マジです?」

「まぁ、マジです」

「わかりました」


 ニヤリと笑っている。

 怖い人だな。








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