レイドバトル:ドラゴン ②
ファンタジーの代表であるドラゴンは、生半可な強さではない。
大多数のプレイヤーが今現在挑んでいるのだが、すでに20分は経過。それでもまだ体力が半分以上残っている。
「誰か! 回復頼む!」
「うちに任せときィ!」
「気合い入れていきましょう! 皆さん!」
プレイヤーの闘志はいまだに健在である。
多数の死者を出しつつも、ドラゴンを倒すべく突貫していく。
「さて、漫画ならどういう風な展開になるのでしょう……。ここでドラゴンスレイヤーとか謎の剣士の登場とかそういう場面ですね。主人公が私だと仮定して、主人公じゃ力不足で死にかけてる~という際に支障キャラ、もしくはライバル的ポジションが……。王道ですねぇ」
妄想がはかどる。
だがしかし、ここはゲームだ。そんな助っ人は登場するはずもない。私がモンスターを設計するのなら、王道的に体力が半分を切ったら何か特殊な行動をさせる。
そろそろ体力が半分を切る頃合い。私は念のために岩陰に息をひそめることにした。
(来た)
ドラゴンは突如として上空へ飛びあがる。
誰一人とて手が届かない位置へ飛び上がったと思うと、ドラゴンが巨大な口を開け、口からものすごい炎を吐き散らかしていた。
炎は地面に当たり、周囲へ分散していく。周囲一帯を焼き尽くすつもりなのかもしれない。
(岩陰に隠れておいて正解でしたね……。まともに食らっていたら私は即死でしょう)
岩のおかげで炎がさえぎられている。
炎を直で受けているプレイヤーは死亡しているか、瀕死のダメージを負い続けている。回復ポーションをがぶ飲みしてなんとか生き延びてはいるが、ブレスの時間が長い。本気で殺しに来ているので回復ポーションで回復していてもいずれポーションが切れる。
「ぐおおおおおお! やべぇええええええ!」
「あっぶね……。回復回復……と、先客居たか。邪魔するぜ」
私が隠れている岩陰に二人の男がやってきた。筋肉質でムキムキの男はガッツ、長身イケメンのほうはユラッツというらしい。
体力が残りギリギリでやけど状態になっている。ガッツさんはポーションをがぶ飲みして体力回復を図っていた。
「あんた無傷か? すげえな」
「炎食らわなかったの?」
「なんとなく予想して事前に隠れていたので。炎の勢いが弱まってきましたね。そろそろ再開できそうです」
ドラゴンが再び大地へ降り立つ。
岩陰から身を乗り出すプレイヤー。もうこのような攻撃はないと信じたいが、時間経過でまたしてきそうな感じもする。
炎が吹き付けられていた地面はところどころ溶けており、歩いたらダメージを受けそうだ。そこだけ注意しつつ、ドラゴンへ攻撃していくしかない。
「一気に畳みかけんぞ! もう一度やられたらまずい!」
「おぉー!」
先ほどの男がドラゴンめがけて突撃。
私もそれに続いてドラゴンに突っ込むことにした。ドラゴンはこちらめがけて火の玉を放ってくる。男たちは回避しようとしていたが、回避ルートには溶岩がありダメージを受けるのは確定したようなもの。
私は前に出て、ダガーで火の玉を弾き飛ばす。
「すっげえ! 出来んのねパリィ!」
「ダガーで……。ダガーが一番パリィむずいって聞くが……」
「火球攻撃なら私に任せてください。いきますよ!」
「「おう!」」
私は男二人と突進していく。
「ガッツさん、足攻撃が来ます」
「任せとけ! 超大盾!」
私たちの上を巨大な盾が守る。ドラゴンの足攻撃が防がれた。
「では、僕がいきましょう。水魔法ウォーターキャノン」
一直線の水流がドラゴンの腹部に直撃していた。




