レイドバトル:ドラゴン ①
配信を見終わり、私たちはアジトへ戻ろうとしていた時だった。
最初の平原に戻ってきたと同時に、アナウンスが流れる。
《ワールドクエスト:始まりの町の安全のために が発生しました》
というクエストが出現していた。
始まりの町郊外に強力なモンスターが出現しているらしい。シュカさんは乗り気で行ってみようという話になり、私たちはクエストが発生した場所へと向かっていった。
そこには逃げ惑うプレイヤーの姿と、巨大なドラゴンの姿が……。
「実にファンタジーというかなんというか。ドラゴンが出てくるとファンタジーッて感じですね」
「だね! やろうぜぃ!」
「どこまでやれるかですね」
ドラゴンはブレスを吐いてくる。
飛んでくる炎の玉を躱し、私たちはドラゴンめがけて駆けていく。ドラゴンに飛び乗り、ダガーを突き刺した。こんな小さな得物でダメージを与えられるってすごいが……。
ドラゴンはやはり世界でも強力な魔物のようで、こんな攻撃ではあまりびくともしていない。
ドラゴンに振り落とされ、地面にたたきつけられる。ダメージはそこまでない。
「巨大な火球が来ます!」
「ユメミ! 良い技術を教えてあげる。こういう遠距離攻撃に対して、ちょっとタイミングがシビアだけど武器で直接攻撃したら弾き返せるんだよ」
「そうなんですか?」
「もちろん、武器のリーチによってタイミングが違うしダガーがいっちゃんむずいって言われてるけど……。やれたらやってみてもいいんじゃない?」
「ではやってみます」
ミスったらたぶん死ぬかなぁ。私自身、防具は初期装備のままなので攻撃を受けたら即死だろう。
私はタイミングを見計らい、ダガーで火球を弾き飛ばした。反射し、ドラゴンの顔に当たる火球。
「いよしっ!」
「一発でやった……すっごい」
「コツはなんとなく理解しました。ドラゴン討伐、やっちゃいましょう」
ほかのプレイヤーも続々と集結してくる。
飛んでくる火球を跳ね返し、距離を詰めてダガーで目を突き刺した。クリティカルが入るが、さすがは大ボスといったところで、クリティカルでも大したダメージになっていない。
再び地面に落ち、ドラゴンの足が私を踏みつぶそうとしてきていた。私はダガーで攻撃を受け止める。だがしかし、力ではかなわず、私は踏みつぶされそうだった。その瞬間に、足の攻撃を誰かがはじく。
「あんたすげえな! そんなダガーで戦ってんのか!」
「ありがとうございます」
「いいってことよ! ドラゴン討伐、頑張ろうぜ!」
「はい」
ドラゴン……。ファンタジーを代表する存在。
その圧倒的な実力を目にして、私は自然と顔がにやけてしまっていた。強い相手と戦えているうれしさもあるのだろうが、それよりもう一つ別の理由があった。
(ドラゴンを単騎で倒せる系のキャラ、いいですね。主人公には向いてませんが、主人公の師匠としてなら……。いや、でも主人公としての見せ方もできるかもしれません)
ドラゴンというファンタジーを代表する存在と出会い、その強さを体感していることで、私のインスピレーションがどんどん高まっているような感じがする。
描きたくて描きたくて仕方がない。早くドラゴン討伐を終えて、キャラを作り上げたいという思いがひしひしと自分の中で高まっているのを感じていた。
「ドラァアアアアア!」
プレイヤーの一人が足をけって転ばせる。
こんな巨体を転ばすほどのパワー。現実離れしていてとてもいい。とにかく今この状況は、私のためだけに作られたかのような状況。
周りのプレイヤーも、目の前のドラゴンもすべて、私の中の創作意欲を刺激してくれている。
(美しい……! ゲームを始めてよかったぁ!)
私はダガーを手にして、ドラゴンを駆け上っていく。
高揚感に包まれながら、私はドラゴンの背中にダガーを突き刺したのだった。
 




