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何もないお花畑

 シュカさんが先頭を走る。

 私はそれに続くような形で追いかけていく。シュカさんはアクロバティックに動き回り、木々を飛び移っていたりしている。何とも身軽。

 

「私たちは今どこに向かってるんですか?」

「んー、どこでしょう!」

「どこでしょうって……」


 どこへ行くか知らされぬまま私はついてきている。当てのない旅というのはいいのだが……。やはり目的か何かが欲しいところではあった。 

 シュカさんの中には目指しているものがあるのかもしれないし、私は黙ってついていくしかないか。


「お、来たな魔物!」


 気が付くと大量のサルの魔物に囲まれていた。

 木からぶら下がりこちらをうかがう者、バナナを食べながら戦闘態勢をとっている猿。ハイエナモンキーという魔物らしい。ハイエナか。この猿は死体をむさぼるのだろうか。

 私はダガーを構える。シュカさんは拳を構えていた。どうやら武器はなく、拳で戦うスタイルのようだ。


「まずはこっちからいくぜぃ! せーのぉ!」


 シュカさんが拳を地面にたたきつける。

 振動が猿たちを襲う。猿の頭上から落ちてくる木。猿たちが下敷きになっていた。


「武闘家奥義、アースクエイク! どうよ!」

「おぉ」

「ふふん。私を漫画の主人公にしてもいいわよ?」

「それはちょっと……」

「なんでよー!」


 主人公向きの性格じゃないといいますか……。

 私もダガーで猿を仕留めていく。猿の数は徐々に減っていくのが目に見えていた。


「そういえばシュカさんは女優なんですよね?」

「えぇ、そうよ。女優歴21年の大ベテラン女優!」

「なんで今更活動休止したんです? 結構業界てんやわんやじゃないですか? 活動休止したせいで」

「ゲームやりたいからよ! それ以外に理由はないわ!」

「あぁ……」


 ゲームやりたいがために一身上の都合で……。喜谷さんがこの事情を知ったら悲しみそうだ。


「毎日毎日やれドラマだのやれバラエティだの時間がなくってねぇ。子役の時はまだ時間あったけど今は超人気女優だからねー。私のプライベートの時間が少ないの。だからゲームができなかったのよね。つぶれかけの事務所を私が救ったんだから少しくらいのわがままは通せってごねたらいけたわ」

「横暴……」

「私だって好きなことをしたいもの! 今は毎日何も気にせずゲーム三昧! 素晴らしい日々だわ……」


 解放感あふれているシュカさん。

 まぁ……今まで自由時間がなかったんだからそれぐらいは許されるか……。なんとなくこの人マンダラさんに似ているような気がしたがそういう理由。マンダラ先生はむしろ休めないから困るけど……。長期休載はよほど有名な先生じゃないとまず無理だろうし……。


「いくわよ! 超必殺奥義ぃ~、渾身の右ストレートォ!」


 最後に残った猿めがけて、右腕の鋭いストレートが飛んでいく。

 猿の顔面に当たり、猿の顔面がめり込み、そして吹き飛んでいく。ハイエナモンキーの群れのせん滅は完了していた。


「ほとんどシュカさんが片付けましたね」

「この程度、楽勝ね!」


 ハイエナモンキーの群れの討伐後、再び足を進めていく。

 森を抜けた先にはお花畑が広がっていた。ふわっと広がる幻想的なお花畑。すごい神秘的だった。


「わぁ」

「ここ、何のためにあるのかわからない場所なのよね。漫画家の知見を借りたくて」

「私のですか?」

「ゲームもさ、意味もない場所ってほとんどないじゃない? 漫画も同じでしょ? だからここが何のためにあるのか知りたいのよ」

「と言われましても……」


 漫画も無駄なコマ入れるときはあるけど……。思いついたギャグとか入れる場合や、ちょっと構成を変えてしまった際にできたコマに適当に絵を入れたりとかよくしてたんだけど……。 

 まぁ、たしかにこの花畑、魔物の出現もなさそうだし何のために存在しているのか……。特別な花が生えているというわけでもなさそうに見えるしな……。


「…………」

「なんかわかったかしら」

「いや……」


 待てよ。

 一つ心当たりがある。いや、私しかない心当たりだから当たり前なのだが……。この無駄に広い敷地。なにもないとなると考えられるのは外部とコラボした際に何かが置かれるところじゃないか?

 そう考えると納得がいく。たとえばコラボイベントがあった際、ここに原作モチーフにした建物が出現するとかそういうの……。

 

 で、今現在都市伝説おいてけとのコラボが決定しているが、発表はされてないので誰も知らないのだ。


「心当たりはありましたが言えませんね」

「なんでよ!」

「なんでもです。いずれ分かるようになると思います」


 このゲームは発売して1年も経過していないし……。コラボイベントはまだやったことないんだろうな。都市伝説おいてけがもしかしたら最初のコラボかもしれない。いいのかな。そんな重役を私の作品が担って……。


「まぁいいわ。いずれ分かるんなら……。それより! これから運営会社の生放送よ! 何かニュースがあるっぽいわ! ここで見ましょ」

「見れるんですかここで」

「見れるわよ!」


 というか、ニュースあるんだ。

 確かに通知にFWOニュースと書かれたトピックがいつの間にか出ていた。そこを開くと配信動画が再生されるようになっており、そろそろ配信の時刻を迎えそうである。

 

「ここで発表するんですかね」


 コラボを。









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