漫画家としての話
ソルトゴーレムの討伐完了、称号を得た。
しろんちゅさんが立ち上がりピッケルを手にする。採掘を邪魔する魔物はすでにいなくなり、気ままに掘ることが出来ると言っていた。
「採掘はどうやるんですか?」
「ふっ……。教えてやろう。ピッケルを手に、まずは鉱石の弱点を探るのだ!」
しろんちゅさんが鉱石に触れ、トントンと叩く。
コン、コンと叩いていると、コォン…と音が反響する箇所があった。
「音が反響する場所……。それが弱点である。弱点を見つけたら……そこを叩くのみだ! ひたすら叩くのみ!」
なるほど。
しろんちゅさんが無我夢中にピッケルを振り続ける。そして、鉱石が下へ落ちていく。
採掘完了らしい。落ちたのはアクアマリンという宝石と潮風鉱石と呼ばれる青色の鉱石だった。
「鉱石は武器や防具などにも必須……。うちのタイタンに武器を作ってもらうと良い。これも貴様の武器を作るための素材だからな……」
「私のですか?」
「タイタンが貴様のクラン加入を祝して作ろうとしているらしい」
「なるほど。タイタンさんは生産職のお方ですか」
「うちでバトル専門はシュカと貴様だけなのだ」
そうなのか。
人が少ない……。人が少ない中私のわがままを聞いてもらっているのはなんだか申し訳ないな。だがしかし、ノルマがあったら困ることもままあるからな……。
難しいところである。
「さ、帰還しよう。必要数は手に入った。これ以上この場に長居する理由もあるまい……」
「そうですね」
「帰り道、また期待しているぞ、ユメミよ」
「了解です」
帰り道でも出現する魔物を倒し、拠点へと帰る。
拠点に着くとしろんちゅさんは鉱石をタイタンさんに手渡していた。タイタンさんが私の前に立つ。
「武器は何を使っている」
「基本はダガーですね。私はなんでも使えますよ」
「ダガーか。わかった」
「私の武器を作って頂けると聞きました。ありがとうございます」
「いいんだよ。加入祝いさ。作りたいものがあったら俺が作ってやるから素材とかは頼んだぜ」
「はい」
タイタンさんは奥の部屋へこもる。
私はソファに座るとシュカさんが隣に座ってきたのだった。
「……ねぇ!」
「なんですか?」
「都市おい、終わるのマジ? そういう噂流れてるけど……。確かに見るからに最終決戦みたいなの終わってたけど……第二部あるよね?」
「連載を抱えていたらこんな朝早くからログインできませんよ」
「そんな……」
都市おいが終わる、それはすでに告げられている。
SNSのトレンドにもなっていたそうだ。ありがたい限りである。
「引き伸ばしはなかったのか?」
「昔ならありましたが今は時代が時代ですからね。編集部も面白く無くなるくらいなら面白いまま終わらせる方針になってきているので」
「そうなんだ……。でも看板作品でも引き伸ばしはないのかー……」
「……ちなみにどれだけ稼いだ?」
「漫画家は稼げるのか?」
「稼ぎですか? そうですね……。単行本だけで7000万部超えましたから……。億は稼いでますね」
「うげ」
二人が意外そうな顔をしていた。
単行本収益はあまり気にしてなかったからな……。原稿料もそこそあったはず。
「まぁ……7000万部売れる方が珍しいですからね。1000万超える方が稀です」
「でも夢があるなあ……」
「そうですね。ヒットを飛ばさないままだと戦力外通告されますが」
「……マジ?」
「商売ですからね。打ち切りになっても新たに描き続けないとまた一から始めなくちゃなりませんしね。大変です。私は運が良かっただけなので」
人気が出なかったら打ち切り、人気を保たせなきゃ打ち切り。世知辛い。
それに、描きたいストーリーが描けない時も多い、休みは基本的にない。私はまあ、速筆だし週二日は休めるけど……。
「……ユメミも戦力外になることあるの?」
「分かりませんが、このまま描かなければ戦力外でしょう」
「え、じゃ描かないと……」
「焦らずともここ一年は大丈夫です。都市おいが売れてるので一年でまず手放されはしません」
まだ少しは安泰である。




