コラボするらしいです
アジトのソファで報告をして、私は力を抜く。
私はそういえば今日話したいことがあると喜谷さんからメッセージがあった。単行本作業のことだろうか。
「仕事があるからログアウトしますね」
「仕事? 週刊連載終わったんだろ?」
「単行本作業とかもろもろあるんですよ」
「え、単行本作業って編集でやるんじゃないの?」
シュカさんは編集が単行本作業をすると思っているようだ。なぜ?
まぁ……私が製本するってわけじゃないし、私も編集を介して発行してるからそう思うのも無理はないかもしれないけど。
「単行本作業って何するんだ?」
「そうですね……。表紙のデザインとか、話の加筆修正とかですね。まだありますが……私は重要視してるのはそこなので」
「加筆? あれから加筆があるのか……?」
「ありますよー。といっても、加筆はもうほとんど終わってますし、単行本の表紙ももう出来てるんでほかになにがあるかわからないんですが編集との打ち合わせがあるので」
私はそう言ってログアウトしたのだった。
午前10時ぴったりに喜谷さんがインターホンを鳴らす。
「いやぁ、すまないね。作業はほとんど終わってるというのに」
「別にかまいませんが……。なんでしょう?」
「あぁ、芥屋先生はFantasia world Onlineっていうゲームを知っているかい?」
「はい。知っています」
というか今現在進行形でプレイ最中です。
「そのゲームを発売している会社からコラボの依頼があってね。ゲーム内に都市伝説おいてけのコラボイベントを開催したいと」
「おぉ、いいんじゃないですか?」
「そうかい? じゃあ、よろしければゲーム内に登場する敵を一体デザインしてほしいということで依頼を受けてるんだ。イベントとしては学校の七不思議編を再現しようとしてるらしい。新しい怪異出すのはできるかい?」
「できますね」
FWOでのコラボか。その魔物のデザイン。
学校の七不思議編。私の作品、都市伝説おいてけでは初めての長編エピソード。主人公の岡里 通、ヒロインの東雲 卜伝、都市伝説研究部の部員、金蟻 歩郷、佳賀里 便太が自身が通う高校、私立桜木下高校の七不思議を体験するというエピソードだ。
そのエピソードの再現……か。
「七不思議は全部出したわけではないです」
「そうだったな。桜木下高校には二宮金次郎像がないということで金次郎は飛ばされたんだったか?」
「はい。で、没にした設定として新学校の七不思議というのがあるんです。登場人物全員知らなかった改訂版七不思議が」
「改訂版?」
「新しくロッカーの中の幽霊というのがありまして」
「ロッカー……。ロッカーの中に幽霊がいるということか」
私はロッカーをまずは描く。
問題はここからなんだ。没にした理由がここにある。
「どうやって都市伝説……七不思議を発生させるかなんですよね。トイレの花子さんと被るのでノックはなしってなったんですが、それ以外だとどうもロッカーの幽霊を登場させられなくて」
「なるほど。たしかに地味ではあるが同じ召喚方法だと困るか」
「まぁ、七不思議編が終わった直後にどう呼び出せばいいか思いついたんですが」
「どうやるんだい?」
「ロッカーを一回蹴って「山口クン、出て来いよ」っていうんです。山口君は仮称ですが」
「なるほど」
これならいいんじゃないかと思ったのはいいが、すでに終わったから出せなかった。
私はとりあえずロッカーの幽霊のデザインを描く。バケツを頭からかぶり、モップを手にした少年の幽霊。
「どうしていじめるのぉ」とつぶやき、お前らがいじめたから僕は死んだんだと襲い掛かってくる。彼の怨念はいじめっ子を殺すまで終わらないが、彼が死んだのは創立2年目のときであり、80年の月日が経過していじめっ子は老衰して死んでしまっているから怨念が晴れることはない。
「ふひひひひ……。これでどうでしょう」
「どれ……。お、いいんじゃないか? これで提出しても構わないか?」
「はい。私の作品がゲームに出てくるのを楽しみに待ってると伝えておいてくださいね」
「わかった」
私の作品が出てくるとは……。
もちろんこのことは秘密にということだろう。早くやりたいなぁ。楽しみだ。




