私は漫画家です
左目に眼帯をつけ、マントをたなびかせる女性。
ザ・厨二病的なビジュアル。自身を知っているかと聞いてくるあたり有名人ではあるのだろう。
だがしかし、見たことがない。
「困惑してるだろ」
「無理もあるまい……。私は普段裏方に徹する身……」
「裏方?」
「良いだろう。我が名を教えてやる! 我が名はしろんちゅ! ここまで言えば分かるだろう?」
「無理だろ」
しろんちゅ……。
海人みたいな言い方だな。となると白人……素人……。
「歌手の麦野 素人さんですね」
「わかるのかよ」
アニメのオープニングとかも手掛けていたはず。
私のアニメは手掛けてくれてはいないが、名前だけは聞いたことがある。
麦野 素人といえば、それこそ曼荼羅先生のBAKAHOのアニメのOPを歌ってくれていた人だ。
「ユメミ、歓迎しよう。私は貴様との邂逅を待っていたのやもしれぬな……」
「…………」
一通り紹介を終えて、今度はシュカさんが私のことを皆に説明を始めた。
私だけノルマなしという話になると。
「ずるくねえか」
「本人が嫌だって言ってたし……。なしにすることが勧誘の条件だったの!」
「だとしてもよ……」
「私は今こそ暇だが、いずれ暇でなくなるかもしれないので」
「いずれとは?」
「そうですね……。週刊連載を抱えるようになったらですかね」
「週刊連載ぃ?」
タイタンさんが訝しげに私を見てくる。ライターとか思われてるのだろうか。
「え、なんか有名人なの? ユメミさんも」
「まぁ……一応は」
「週刊連載だというんなら漫画家とかではないのか?」
「正解です。私は漫画家です」
「でも今持ってねぇんだろ? 打ち切りとかにでもなったのかよ」
「代表作は?」
「都市伝説おいてけ、ですね」
そういうと、皆驚いていた。
「マジ?」
「マジです」
信じてもらえなさそうだ。
とりあえず近くにあった紙を手に取り、主人公の岡里 透と卜伝のイラストを描いてみる。
描き慣れてしまったので手早く描けるようになってしまった。
私のイラストを見て、マジっぽいと判断されたらしい。
「す、すごい! 生イラスト!」
「今はゲーム内でネタ探しをしてるんです。いずれまた連載を狙って描きますからその時は忙しくなってノルマ達成が難しくなりそうなんですよね」
「なるほどな……。……週刊連載ってそんな大変なのか?」
「私の場合は速筆ですからあまり大変ではないのですが……。週刊連載してると休みがないって人もいますね」
「そうなのか……」
私の仕事の説明を終え、私はとりあえずシュカにクラン加入申請を送る。
クラン加入申請をして、私はとりあえず席に座る。
とりあえずこの人たちの観察をしてみてもいいかもしれない。意外なところにネタは転がってるものだから。