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盈月  作者: tr
サイドストーリー
1/3

1:与太話

ある日、ティアは酒場で他の冒険者達と酒を飲み交わしてると冒険で起きた不思議な体験を語ろうという話になった。

皆が体験した話は摩訶不思議な冒険の話にそんなことがあってたまるか、といった風で皆冒険を楽しんでいるようだった。

「お前はなんかねえのかよ~!」

と、一人の男がティアに絡んできた。ティアは冷静にあしらいながら、大冒険や幻想的という話でもなく面白くもないが…と前置きをして、ティアのした不思議な夜の体験について語りだした。

 ある夜、私がアストラヴェールの拠点で休んでいると、男がいきなり飛び込んできた。

「お願いします!助けてください…!奴らが…奴らが!!」

ただことではない様子に私は短剣を手に取り、男に事情を説明を取り付け、外へ飛び出した。

 拠点の外は光一つない静かな闇が広がっている。そんな中、3つの殺気がまっすぐこちらに向かってくることを私は感じると静かに闇に向かって短剣を構えた。が、殺気の主達は夜闇にまぎれ姿がよく見えない。殺気の主達も私の気配に気づいたのか、武器を構える。数刻の睨み合いの中、一筋の風が吹く。それを皮切りに、闇の中から無数の斬撃の雨が伸びてきた。私はそれを流しながら反撃を仕掛けるも短剣は空を切るのみ。そんな中、雨は激しさを増し、徐々に私を押し込んでいく。何とか斬撃を流して防ぐが、横から伸びてきた薙ぎは私の腹を薄く切り裂いた。

「 (何とか致命傷は避けたが、明らかに素人の太刀筋じゃない…厄介だ。) 」

すかさず私は後ろに大きく下がるが、雨は勢いを止まることを知らない。私は斬撃を流しながら、冷静に闇へと目を凝らす。すると、雨の中に慢心が生まれたのか、斬撃が大振りになっていることに気づいた。その隙を逃さず再び反撃を繰り出す。すると今度は短剣は闇を切り裂き、雨の勢いが緩みだした。その刹那、私は横薙ぎを放ち、2つの気配を斬り伏せた。斬り伏せた気配は私の足元に転がると、残り1つの気配は闇の奥深くへと下がり、再び睨み合いとなる。気配の方に向きながら体制を立て直し、更に深い闇に目を凝らす。が、この時私の中にひとつの違和感を覚えた。

「 (妙だ…あれ程連携を重視していて何故引かない…?それになんだこの匂い…。) 」

数刻向き合うと、足元に転がる気配からシュー…という音と火の匂いが僅かに漂う。

「 (まずい…!さっきの匂いの正体は…!!) 」

そう考えた刹那、私は素早く距離を取ると先程の気配の場所が光に照らされた。けたたましい爆発音と共に黒い煙が夜の闇を更に包む。しばらくして煙が晴れると気配は消え失せ、静かな夜の闇だけが広がっていた。翌日、私は男を拠点に置き、爆発したと思われる個所を調べに向かうが痕跡が一切ない。爆発跡どころか火薬の匂いもだ。まるで、昨日の戦いはなかったかのように全て消えてしまった。しかしあれだけの大きい音だ、誰かが聞いているはずだと拠点周辺の住人に聞いてみたが、皆口を揃えて聞こえなかったという。あれは夢だったのか?そう疑念を募らせる中、私は飛び込んできた男に話を聞こうと拠点に戻るが誰もいなかった。

「という話だ。特段面白いものではなかっただろう?」

そう締めくくると、ティアは酒を一息に呷った。

「なんだよそれ、お前夢でも見てたんじゃねえか?」

男がそう言うと口々に他の冒険者達が感想を言い始める。ティアはそんな彼らの感想を聞き流しながら、腹の傷を撫でていた。

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