魔王の花は塔で咲かない。
いつからか、私はここにいた。
いつも一人で、お手伝いさんが朝に来てくれて、私をお風呂に連れて行ってくれて、食事をして、あとは少しのお話。
外は怖い人がたくさんいます。一人では外に出ようとしないように。
よく、太陽にあたり健康でいるように。
お手伝いさんが渡すもの以外は口にしないように。
体の調子が悪い時はすぐに報告するように。
そのほかいろいろ。
いい子にしていたら、幸せなところに連れて行ってくれるそうだ。
でも、一日は本当に長い。
暇つぶしの本もあるにはあるが、なんだかスカスカしているので、もう全部読んでしまった。
でも、昨日はびっくりした。
普通に過ごしていたら大きな音がして、びっくりしたが恐る恐る見に行くとお手伝いさんと、見たことのない人が喧嘩?をしていて。
あれは教えられた怖い人だ!と思い慌ててお手伝いさんを塔の中に引き入れた。
あれはなんだったかとお手伝いさんに問うも、教えてくれなかったが、すごく気になる。あの茶色い目が、見たことがあるよう、な?
わからない。
あ、お手伝いさんが来た。今日も長い一日の始まりだ。
毎日いつもの繰り返しだったのに、ぱたりとお手伝いさんがいつのころからか来なくなった。
朝が来ても、夜が来ても、お話できる人がいない。
そして夜の夜光蝶が来なくなった代わりというように、よく鳥やリスがこの塔に遊びに来てくれるようになった。
前も来ていたように思うがこちらまでは来なかったので。
そして困ったことは食事だ。
食事はしばらく我慢していたが、やはりどうしようもなくなり、塔の中を調べまわり、ストック分の食事を飲んでみた。
ストック用の食事以外にはなんだかわからない瓶が一本。食事は少し光る緑色の瓶だがこれは銀色と少し緑。気にはなるが、、、、。
さて、そのストックはもう少しのみとなってしまったので、勇気を出す時が来た。
そして今日はお友達になったリスと外に勇気を出して出てみようと思う。(一人ではない、リスさんと一緒なので。)
外には1階の大きな穴が開いているところから。
すごく前に、怖い人とお手伝いさんが喧嘩をしていたところだ。
すこしだけ、今日は周りを少し調べるだけ。
私は一人になったので、少し強くなったのだ。うん。
そろりそろりと、足を進める。
ふと、あの時、最後に怖い人が座っていた木の根元あたりにキラッとなにか光ったような、、、。
そろりそろり。
今日はこの木までで、帰ろう。
木に到着して、光ったところの草を少しかき分けてみると、古ぼけたアクセサリーを見つけた。
元は銀色のきれいだっただろうアクセサリー。なんだか気になり周りをきょろきょろして、誰もいないし、持ち帰ろう。うん。
今日も頑張った感じがする。うん。
でもほんとお手伝いさんどこ行ったんだろう。
そして、おなかがすいた気がする。あああ、食事の作り方教えてもらえばよかった。
そうして、ストックのある食事をとろうとしたとき、もう無いことに気が付いた。どうしよう。
なぜ昨日気が付かなかったのか。もう少し今日を有意義に使えればよかったのに。
本当に私は何も知らなかったのだ。今ならわかる、も王少し自分のことを自分でしなくてはならなかったことに。でも後悔しても遅い。
最後の瓶の、なんだか普段の食事用のではないものを飲む時がきた。
コルクで封をされている瓶の持ち出し、意を決して中を飲む。
味はしないが、体がすこし、疲れたような。食事ではなかったのか?まあ、空腹感もまぎれたような感じがする。
「でも、これで、食事はなくなってしまった、、、」
これで、あとはそのまま朽ちるか、外に出て頑張るかの二択になった。
「ねえ、小鳥さん、リスさんどうしようか、一緒にいてくれる?」
肩や家具の背にとまった小動物に問うも返事は当たり前だがない。だが近くにいてくれるだけでありがたい。
なんとなく、外に行ったからか、わからないもので食事をしたからか疲れた。
もう、今日は休もう。
その夜夢をみた。
ある少年に合う話。お姉さまがいなくなりさみしい私にいろいろおしゃべりをしてくれ、物を与えてくれた茶色い少年の夢。
お手伝いさんが毎日来てくれたが、おしゃべりはほぼなく、さみしかった私に楽しさをくれた人。
だんだんこの少年がつよくなり、交友関係が増えていったときはなんだか前よりさみしかった。
自分ではあまり食べれないお菓子をもらったときは、大切にされている感じがしてうれしかった。
そして、お手伝いさんに魔王の花と言われて、切り刻まれるまでの夢。
私だ。
夢ではなかったのだ。
朝起きてまず、そう感じた。そして、お手伝いさんと喧嘩していて逃げてしまったのはあの少年は、ライだった。
ああ、なんてこと。
大好きだったのに、逃げてしまった。忘れてしまってた。
膝の上にぽたぽたと目から熱く感じるしずくが落ちる。こんなことは初めて。
胸がなんだかぎゅってする。口から知らずに嗚咽がこぼれる。
あんなに会いたかったのに。おしゃべりもできず逃げてしまった。
悲しかった。
お姉さまがいなくなった時より、ライと会えないことが本当にさみしく、かなしかった。
いつまで、そうやって泣いていたのだろうか。気が付くと居住区のテーブルに突っ伏して寝ていたようだ。
でも、なんでか泣いてすっきりした。
謝ろう!そして、また仲良くおしゃべりしたい。
そのためにはここを出て、生きなくてはいけない。
ちゃんと食事をして、生きて、ライに会おう!
心を決めたせいか、なんだか気持ちがいい。目標を決めることは大切と、本に書いてあったが本当にそうだ。
知識大切。経験はもっと大切。とも書いてあった。
そんな本も私が記憶をなくしていた時と、そうでないときに比べてすごく数が違っていた。今のほうが少ない。
私に何も知識を取り入れてほしくなかったような。
知識。
「そう、お手伝いさんは私のことを魔王の花といっていたわ。魔王の花。」
魔王の花とは何かわからないけど、そのことも調べよう。
そして、まずは食事がないことが一番の問題、、、。と朝からいろいろ考えたせいか少しくらくらするが、頑張らねば枯れてしまう。
今日は、また外に出て町を目指そう。人がたくさんいると本に書いてあった。そして、少年を探して本を読もう。食事の作り方も調べよう。
いっぱいあるけど、やることは決まった。
泣いた後朝になっていたので、出発にはいい時間だ。今日は天気のいいし、そのまま出かけても困ることはないだろう。
意気揚々と1階の崩れたところより外に出る。
もう、一人で大丈夫。帰るときはライと帰りたいな。
そうして私は独りぼっちだった塔からでた。
この後、食事より水分を取らなくては生きていけないことを知り、錬金術師に会い、弟子入りしつつ、町を探索しているときに大人になったライに会うことはまだ、わかってはいなかった。
そして、すでに私は彼に恋していたということが分かったのも、そのあとのお話で。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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ありがとうございました!
新しい作品を投稿させていただきました。
また見てただけると幸いです。
「ある救国の物語の裏にある,彼女の空回りと彼氏の頑張り 」
1年間の記憶を失っていた令嬢と変わった侯爵令息のお話です。
よろしくお願いします。