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塔の上の花  作者: わたり
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初めての出会いと急展開


 びっくりする。壁からお姉さまでもない、お手伝いさんでもない声がした。

柔らかなこえで、でも優しい声。


 さっきの茶色い人かしら。と思いつくと初めてのことでどきどきしてきた。戸惑っていると、壁の外の声は、あれ?違ったかな?気のせい?と少し遠ざかって行っているような。やだ。


 「こ、ここんにちは。えと。」

慌てて返事をする。どう喋ればいいかわからないけどおしゃべりがしたい。


「あ、よかったこんにちは。さっき上にいた子だよね?」


こくこくとうなずくと、しばらくして。


「あれ?違った?」


あ、そうだ。見えてないんだった、会話しなくては。


「そ、そうなの、うん。はい。」

「よかった、一度お礼が言いたくて。」

「お礼?」

「そう、初めての日?かな。上から薬草落としてくれたよね?違う?」


薬草、、?何かしら。落としたのはお葬式のお花だけど。と考えていると。


「すごく助かったんだ、結構ひどいケガしてたし、お金なかったから。薬買えたんだ。本当に助かった。ありがとう。」

「あっと、どういたしまして?」


 なんで疑問形なの、と楽しそうに笑う声がして、なんだかこちらも楽しくなる。


「ふふ、うん、本当にありがとう。」


 なんだかわからないけど、いいことっぽいのでよかったのだと思う。


「ねえ、ここで住んでいるの?」

「うん」

「そっか、僕は町でお母さんと住んでいるよ。」

「お母さん」

「うん、お母さん。優しいけど、怖いんだ。」

「怖いの?」

「あ、でも優しいよ。ごはんおいしいし。」

「そう。いいね。」


 取り留めなくたのしく会話をしていると、アッと大きな声。


「もう帰る時間だ。本当にありがとうね。」


 ざざっとした音をたてて、帰る準備をしているみたい。

 まだお話したいのに。でもどうすれば?いいかわからない。


「ね。僕ライだよ。また来てもいい?」


 ほっとする。またおしゃべりできる。


「うん。待ってる。」

「よかった、じゃあね!」


 その日から、毎日の行動に1階に行ってライをまって他愛のない、でも楽しいおしゃべりが続くようになった。


 町のこと、冒険のこと、薬草のこと、仲のいい友達のこと。いろいろ。

私にはわからないことが多かったけど楽しかった。


 初めて会ったときは、初めて町の外に出たミッションで、奥のほうに行き過ぎて狼に追い立てられてここにたどり着いたみたい。


 ギリギリ倒して、でも力尽きかけたときに塔の上から薬草ふってきたと、びっくりしつつも助かったとのこと。

薬草を使い、残ったものはギルドに提出したので本当に助かったとあれから何度もお礼を言ってくれた。


 なんだか、顔がぽかぽかする。


「それでね、もらった薬草のお金なんだけど、返したほうがいいのかな?」

「え、いいよ!使って」


 驚いた。お金をここでは使うことがないしもらっても困る。というかここから出たり入ったりできないので、無理だし。

 

 そう、この塔は出入りできないように思う。


お手伝いさんに一度出入りのことを問うも、わかりません、と答えられたので。なんだかそれ以上聞けなくてそのまま、あなたはどこから?とか聞けなかった。


「えー。でも、、、、」

「だったらまたいろいろお話してほしいな。そのお金を使った後に何を買ったのとか教えてくれてもいいよ」


 お金は何かと交換できるアイテムみたいなのでその話をねだってみる。町にはいろいろあるらしいし。

いろいろが本当に想像できなくて、もしかしたら小さい家用の太陽とか、水でできたベットとかなんかすごいものありそうでわくわくする。


「うーーん。そう?頑張る、、」とライは気が乗らなさそう?にいう。


あ、気分損ねちゃったかな。


「あ、ダメだったらいいよ!ごめんね。何でもない。ライに渡した薬草なんだから好きにすればいいんだよ!」


 嫌われたくなくて慌てて取り消す。会えなくなるなんて嫌だもの。


「いや、そうじゃないんだ。がんばる。うん。」

「え、うん。がんばるの?」

「うん、頑張る」


 それ以上何かを言うのも思いつかず、今日のお話は終わりになった。


 夜は静かだ。

遠くて獣のなきごえがするけど、この塔は私だけなので、私の音しかしない。


ひらりひらりと今日も夜光蝶が明り取り窓から入ってくるのでご飯を小皿に与える。

その光で本を読むけど、ライとのおしゃべりより退屈に思えてきた。前はよく読んでいたし、お姉さまがいなくなったときは本当にずっと読めていたのに。


 早く寝てしまって明日になればいいと、もう寝ることにした。





 いつもくる時間にライが来ない。


 なんでだろう、やはり昨日のことが嫌だったのだろうか。


 いつもなら太陽が真上になる前には来ていたのに。


嫌われたのかしら。私。


 ぐるぐると昨日会話した内容が頭の中をかけめぐる。


 どの会話がダメだったのかしら?

やはり、お願いなんかするんじゃなかった。

悲しい、さみしい。なんだかつらい。ああ、言うのではなかった、、、、。


 ほろりと目からしずくが落ちる。

ああ、私泣いているんだわ。お姉さまがなくなった時でもなかなかったのに。


 っと急に塔の外が騒がしくなると、ガンガンっと壁の外で大きな音がする。初めてのことで何が何だかわからなくて怖い。思わす居住区まで逃げる。


 逃げた後も塔の外では大きな音となんだか金属の音。そして大きな獣の声。

こんなこと今までなかったのに。怖い。


 震える体を大きな毛布でくるんでしばらく息をひそめていると、ひと声獣の大きな声がして、しん、と静かになる。


 そろりと毛布から顔を出し、しばらくするけど、やはり音がしないので、怖いことは終わったのかしら?

 おそるおそる、毛布をかぶりつつ下の1階に降りると、何もなかった塔の壁から光がさしていた。壁が崩れたみたい。


 びっくりしてその光が差す壁を触ると崩れて、また光が大きくなった。

すごい、外が見えるのではないのかしら、、、。


 とても固いと思っていた塔の壁が音を立てて崩れ手のひらサイズの窓になった。

普段は感じられない土のにおいも感じる。


 少し、茶色がかった土埃が風につれられて塔の中に入ったみたい。


 あまり大きくはないが近くであれば外が見れる程度の穴にそっと顔を知被けると、近くでしんどそうなゼイゼイとした息使いの音が聞こえる。


 一瞬獣?と恐怖を感じたが、動く気配なく、ふと


「ライ?」


 と問うと塔の壁が小さく音がした。


 ライだ!うれしい、きてくれた!とうれしく思うも、いつものようにしゃべっくくれない。


「ライ?」


 また小さくコンと壁をたたく音。


 しんどそうな呼吸音はつづき、とても不安になる。


 どうしよう、調子が悪いんだ!


「ライ、動けない?おしゃべりできない?」

 


 コン


 少し音がさっきよりも力ないような。


 どうしよう!わからないけど、大変なことになっていると思う。

どうすればいいか、わからない。

どうすれば。


 あ、前に薬草で助かったといっていたことを思い出す。

薬草、上の花たちをあげたら、薬草で助かったと。

でも、前の状態より悪かったら?薬草をどうにかして使ったのだろうけど、私にはできない。


 どうしよう。


ああ、


 私のお薬はどうだろう。お手伝いさんが置いておいた、お薬。調子が悪い時に使うように言われていて、そのままにしていたもの。



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