塔の上の楽園
ふと見ると目の前に広がる青い空、気持ちのいい風が吹く。
足元の花たちのいい匂いがして気持ちがいいのに今は少し悲しい。
昨日まではお姉様たちがいたのに今日は一人だからだ。
通いのお手伝いさんに問うも、あるべき場所に帰りました、とのことで。
あるべき場所、、、。どこだろう。
お姉様たちが言っていた、旦那様のところなのかしら。
旦那様、、、。とつぶやいて、寝転んでいた花畑からゆっくり立ち上がると、また強い風が吹いた。バタバタと私の灰色髪をゆらしてどこかに去ってい風。
ここは大きな塔の屋上の花畑。
色とりどりの花と今は私だけが咲いてる。
はあ。
一つため息をついて、今日の暇つぶしを探そう。
私の横に置いていた本を拾い、下の階に降りるため壁側に歩く。
塔といえども大きな要塞とはいかないが結構広いと思う。運動不足?にならない。とお姉様が言っていたから。
私はここでの生活しか知らないけど、本を読むし、お姉様が言ったのでそうなんだろう。
石つくりの壁に手をやると少しし湿ったひやりとした感覚が返ってきた。昼間になるとぽかぽかした温度になるけど、今はまだ早い時間だから。
壁伝いにあるドアを開けて階段を下りていくとそこは居住区になっている。
私とお姉様と生活していたのに今日から一人。
ぐるりと見ても変わりなく、ソファとテーブルと申し訳程度の家具。
本で読んだ物語ではもう少しいろいろ家具というものはあったのにな、と考える。
そのまま手にした本を読もうか、とソファに座ろうとしたところで、壁のほうからなんだか騒がしいような。
壁の外は本当の外なのだけれど。
いつもはお姉様と一緒にいるので特に気にしていなかったけど、今は一人のせいか、すごく気になる。怖いけど。
壁に手を当てると時々振動が伝わる。だれか、なにかいるのかしら。
しばらくすると騒がしい気配がなくなり、また静かになった。
なんだか気になる、、、。
そろりとなんとなく音をたてないように気を付けて、まず屋上に行ってみてそれから外を確かめてみよう、と屋上にいく。
外壁は私の胸当たりなので、下をのぞくことはできるから。
屋上のドアを開けて壁際によりそろりと騒がしかったほうに視線を向けると、下のほうに獣?が三匹倒れている?のかな?それと誰かいるみたい。
お姉様とお手伝いさん以外は初めてみた人だわ。
じぃっとしばらく見ているけど動くことなく、倒れたまの人。
大丈夫かしら。
そのまま見ているけど動くことなく時間が過ぎていく。
死んだのかしら。
動かないので、なんだかつまらなくなる。
視線を屋上の花畑に戻し、色とりどりの花を摘みまた動かなくなった人のほうを見る。
やはり動かない。
それでは、と摘んだ花を上から動かない人のほうにふわりと落としていく。
お葬式はお花で飾るものと書いていたので。
全部花を落として満足して、また暇探しを探しに行こう。
また居住区に戻り、気を取り直して本の続きを読むことにした。
今日の本は恋の本。ここの塔にはいっぱいあってお姉さまがよく、恋をしてみたいわ、といっていたっけ。
離れ離れになった二人がいろいろなことがあって一緒に暮らすお話。
「恋、、、かぁ。ドキドキするの?走った後とか?する感じ?」
ぱらぱらめくり、最後まで読むころにはもう夜になっている感じがする。
部屋の上にある小窓から、うっすらと夜の夜光蝶が3匹羽ばたき、きらきらと部屋を照らしてくれる。
夜光蝶のごはんとしての蜜を棚に取りに行き小さな小皿にその蜜を垂らすと、ふわりふわりとごはんのために集まる夜光蝶。
また少しその蝶の光を見ていると自分ものどが渇いていることに気が付く。
今日はもう食事をして寝てしまおうと、決めてお手伝いさんが準備してくれていた食事をして身支度をして、今日は休むことにする。
5階の寝室に降りてゆくと、見慣れた5つのベッドがある。自分とお姉さ間のものだった。
よくここでもおしゃべりしたなぁと、また寂しくなる。
そうして自分のベットに潜るとまたひらひらと夜光蝶が来る。ここは5階で何もないのに。
少し不思議に思いつつもそのままぼんやり見ていると、また少しそとで音がする感じがするが眠気が勝りそのまま目をとじた。
今日も何をしようか。
まず元気を出すために、屋上に行こう。
はだしのまま屋上に行くと今日もいい天気で気持ちがいい風が吹く。しばらく風に髪を遊ばさていると階下で音がする。
ああ、お手伝いさんだわ。
いつも彼女は朝に来てくれて、お風呂に入れてくれるので行かなくては。
屋上から降りて4階に行くとお風呂の準備をしてくれているお手伝いさんにあった。
白い髪で目は赤い女性だ。
てきぱきとお風呂にお湯をためて、最後にガラスに入ったきらきらした緑の液体いれて混ぜている。
「おはよう、お手伝いさん。」
声をかけるとこちらを見て目を細めておはようございます、と返してくれた。
「今日もまずお風呂に入りましょう。変わりはありませんか?」
「ないわ。ねえ、お姉さまたちは元気かしら?」
「つつがなく、儀式はお済になりました。お幸せですよ」
「そう、よかった」
儀式とは詳しくわからないけども、旦那様との結婚式なのかしら?幸せならばそれはいいことだわ。
自分がさみしいけれども、お姉さまは幸せならば喜ぶことよね。
服を抜いて棚に置き、そのまま解除してもらいバスタブに入る。
今日はきらきらした緑が少し濃いような気がするけども、いつもと同じ感覚だ。
ぱしゃりぱしゃりとお湯で遊んでいるとバスタブの外でお手伝いさんが髪を洗い、そのあとに私の体も丁寧に洗ってくれる。
私の体をきれいにしてくれたので、私は大きな布をかぶせて水気を取り、新しい服に着替える。
その間にバスタブや周りの水の散った場所も掃除してくれてすっきりする。
「お食事は、居住区のテーブルに準備しておりますので、とってくださいね。」
何かを摂取する気分ではないけども、あとから何か言われるのも嫌なので、返事をしてそのまま階段をあがってゆく。
6階居住区で、いつの間にか準備されていた食事をとる。
今日もすることはないので、本を読もう。
一冊本を取り出してタイトルを見る。
今日はお仕事の本みたいだ。世界にはいろいろお仕事という役割があるみたいで、少しわからない。
わからないけども、いろいろな人との会話が楽しそうだった。
この主人公は寝る前に日記も書いており、私も寝る前に暇つぶしであるけども書いていこうと思った。
そういえば、昨日暇つぶしを探していて外で何かあったみたいだったことを思い出し、屋上に行く。
相変わらずのいい天気で、風に髪を遊ばれつつ昨日の下をのぞいたところで下を見ると、獣が3匹いるだけで、人がいない。
あれ?
見間違いだったのかしら?それとも人は死ぬと消えるのかしら?
しばらく周りを探してみるも何もなく、興味を失ったときに、森のほうから誰かが来る。
よく見ると昨日見た人っぽい。
することもなく、でも少し怖いので少し隠れて様子を見ていると、倒れた獣のそばで何かをしている。
ガンっとかジジっとか鈍い音を立てて何かをしていたと思ったら、外の皮をはいでお肉にしていた。
本では見たことがあるけどもそうやってやることができるんだ、、。と感心して思わず、
「、、、すごい」
と声に出してしまったとたん、こちらを見る人。
強い茶色目でこちらをみて目を大きくしている。髪も茶色で、体は革製品で覆われていた。
手には先ほどまで使っていたナイフがあるが横には長剣が置いてある。
なんだかさっきまで読んだ本の冒険者みたいだ。
その人は何かをこちらにしゃべろうとしたときにふとやはり怖くなり逃げだす私。
居住区まで逃げてきて一息。
なんだか胸がどきどきする。
びっくりしたからか、すごく顔がほてる。ぽかぽかする。
両手でほほを冷やしていると、また何かをしゃべっている声がするけど、そのまま会話する勇気が出ない。
本当にびっくりした。お姉さまとお手伝いさんのほかにだれかと会ったことないから。
その日一日なんだかどきどきして、いつもなら日光浴して過ごす時間も過ぎ、暗くなったいたので、休もう。
目が覚めるとベットの中でちゃんといた私。あまり昨日のことは覚えてないけど、あの茶色い目の人は覚えている。
せっかくだったらおしゃべりできたらよかったのかな?と落ち着いた今日は思ってしまう。昨日はどきどきしてそんな考えなかったから。
昨日は寝たのが速かったせいか、少し薄暗い時間に目が覚めたみたい。
少しのどが渇いているので、居住区で食事をしてまた、なんとなく屋上の花畑にいく。
当たり前だが昨日見た茶色い人はいない。周りの獣もいない。
少しがっかりしてぱさり、と花畑に転がり空を見た。
そうして少しずつ空が明るくなり、湿度が増した森の緑のにおいが薄くなる。
そのころ、また階下でお手伝いさんの来た音がする。
お風呂に入りすっきりしておこう。
昨日と同じ、4階まで下りてゆきお手伝いさんとあいさつ。
目を細めて挨拶をして入浴。今日もお湯が濃ゆい気がするけど、いつも通り。
「お食事はお済ですか?お変わりはありませんか?」
「何もないよ。お姉さまは?」
「つつがなく、儀式はお済になりました。お幸せですよ。」
「そう」
身支度をして、食事をして。
やはり気になるのでまた屋上に行ってみる。
少し、ドキドキする。またいたらどうしよう。でも気になる。
屋上から下を見ると、やはり何もない。
しばらくあたりを見回してみるも、何もない。森に囲まれたこの塔の下の部分と少し開けた周りだけ。
時々鳥の声、獣の立てる音がするだけの静かな世界。お姉さまがいたときはおしゃべりしてそんな周りの音が気になることはなかったのだけど、今はよく聞こえる。なぜかしら。
しばらく塔の周りを見ていても変わりはないので、また本でも読もうと目線を話したときに、
来た。
あの、茶色い人。心なしかきょろきょろして、ふとこちらを見た。
やはりきれいな茶色い目。また大きく目を開いて、何かをしゃべっているような。手をぶんぶん動かしていて、何か伝えたい?
少し見ていて、怖そうじゃないし、お姉さまとお手伝いさん以外に合うのは初めてで、一人はつまらなくて。勇気を出してみようと思う。
まず、声があまり聞こえないので、おしゃべりしたい。仲良くなりたい。どうすればいいかと考えて、まず1階に降りて出口を探そうと思った。
ここから出たことはないけども、お手伝いさんがくる場所があるはず。
もう一度茶色い人をみて、大きく手を振ってみると、なんだか手を振る速さが速くなったような、うれしい?
やはり、お話したい。
1階に降りて探してみよう。
少し長いらせん階段をこけないように、でもはやる気持ちが後を押していつもより早く階段を下りていく。
いつも降りることはない1階のドアに到着し、恐る恐るドアを開ける。
少しよどんだにおいがするし、細かな虫と、湿ったにおいがする。
壁沿いにペタペタと外に出るドアを探してみるが見当たらない。
あるのは、光を入れるための窓があるのと、衣装入れだろう、家具のみ。
外にも出たかったな、、。おしゃべりしたかったな。
コツコツ。コツ。
塔の壁をたたく音がする。
なんとなく、音のなる壁に近づき、近くの小石で壁を鳴らした。
カツン。
「あ、こんにちは?」