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06紛失からの再生

「ねーあれなあに?」

 東京へ向かう電車の中で子供が田宮の抱えているボールを不思議そうに見ていた。


 『さすが子供は観察眼が鋭いね、将来有望だ』

 「スカウトしないでくださいよ、彼には彼の未来がある」

 『僕は君の未来を奪ったつもりは無いよ』


 アーロンと一森はちゃっかり無賃乗車してる格好だ。

 やがて電車は混みだし座っている田宮の前に女子高生たちが立った。


 『日本の女性もスタイルが良くなったねー』

 「あんまりジロジロ見ないでくださいね」

 『大丈夫、大丈夫』

 「あの女子高生、ずっとこっちを見てる」


 と、その女子高生がひそひそ話を始めて田宮の前から移動してしまった。


 「ほら~盗撮がどうのこうのと言ってましたよ」

 『Oh!マイガー、僕がそんなことを』


 そんな会話をよそに混んだ車内で田宮はおばあさんに席を譲ろうとした。

 立ち上がった瞬間急ブレーキがかかり立ってる人皆よろめいた。

 あわてておばあさんを支える田宮、ボールの入ったスイカネットを放してしまった。

 慣性の法則よろしくボールは車両の前の方に転がる転がる。


 『なにが起こった!』

 「転がってますー」

 『誰だーこんな形にしたやつはー』

 「責任転嫁しないでくださいー」

 中にいるアーロンと一森はパニック状態。


 回転が止まったかと思うと急にインター03のモニターは真っ暗になった。

 『これは……誰かに拾われてカバンにでも入ったな』

 「大変じゃないですか、ソウくんはどこ!」

 『慌てることは無い、僕らの意識はいつでもネクスアースに戻せる。空っぽのインター03が残るだけだ。これは大した技術使ってないし敵の手にわたってもいいように自己消滅機能もある』

 「敵がいるんですか?」

 『どんな世界でも敵はいる。人は三人集まると1:2に分かれて敵対するか一人は個性を出さなくなる』

 「あ~なんとなく分かります」

 『ネクスアースに来てみるとよくわかる。それより君が余計なものを見ないうちにここは引き上げるとしよう』

 「余計なもの?」

 『そう。世の中見ない方がいいものはたくさんある。幸せなうちにトランスしよう』


 ◇

 

 一方田宮は焦っていた。

 落としたボールを探して車内を歩き回ったが見つからずそれらしい手がかりも無し。

 半ばあきらめ気味に青島に連絡したが青島もまた異変に気付いていた。

 インター03の生体信号が途絶えたのだ。

 二人は一森を見失った。

 

 ◇


 一森の目の前にはアーロンがいた。

 彼がネクスアースの世界のアーロンではなく実物であることは周りの景色からも分かった。


 「ようこそアメリカへ」

 「ここは……」

 「私のオフィスだ。今君はインター05の中にいる。同じものが明日日本につく予定だ」

 「会話できるんですね」

 「動くことはまだできないけどね。やろうと思えばすぐにでも出来るけどロボットみたいな体じゃやだろう?」

 「やですね」


   うすうす感じてはいたけどこの人、永遠の命、永遠に生存する人を作ろうとしている。

   意識レベルではすでに完成の域に達している。

   私もその一人に選ばれた……

 

 「悪いが僕はこれから会わなければいけない人がいる。オールドワールドでは僕の実体は一人しかいないからね。君はネクスアースでサポートチームとこれからのことを話し合ってくれ。日本に渡る時間もすでにセットしてある」

 「わかりました」


 ◇


 薄暗い部屋の中で一人の男がインター03を触っていた。


   なんだろうなーこれ。

   電子機器のようだけど何処にも差込口とかないし。


 男はカッターで表面の透明な膜を切ろうと試みるが歯が立たない。


   のこぎりあったかなー


 ゴリゴリとこぎりで切り始める。

 透明な膜が切れて銀色の球体があらわになり空気に触れた瞬間、燃え上がった。

 家に延焼しなかったのは幸いだった。

 

 ◇


  翌日、田宮と青島は到着したインター05を前にしてお通夜状態だった。

 

 「捜索願い出しても……いやすでに出ていますよね」

 「遺失物届か……」

 「物扱いしたら一森怒るだろうな~」


 と、その時インター05のカメラが動き出し一森の声が響いた。

 「そうよ、私は物じゃないんだからね!」

 

 「一森か!」

 「さや香くん!」

 二人はインター05を握りしめるように近づいた。


 大写しになった二人に一森は、

 「近い近い」

 

 「よくぞ帰ってきてくれた」

 赤ん坊を抱き上げるようにインター05を持ち上げる青島。

 それを横取りして抱きしめる田宮。

 「もう離さない、失くさない、ほんとにごめん」


 「ほら~ソウくん物扱いしてる。私はね……」

 一森は自分がいつでも意識をネクスアースへ移せること、そこで生命科学の研究を続けることを説明した。

 二人は半分くらい理解できずに聞いていた。


 「何と言ってもめでたい!お祝いをしよう!」

 「外は……」

 「うん、研究室内でデリバリーでも頼んでパーティーだ」

 「私のエネルギー元は電気なんですけどね」

 「大丈夫、たらふく食べてもいいよ、太ることはないだろうし」

 「も~」


 研究室の電器はいつまでも灯っていた。


 おしまい

 


 この話はいったんここでおしまいです。


 ボールになった一森の運命は?

 田宮はどうする?

 アーロンとの関係は?


 構想をまとめてから再開いたします。


 読んでくださりありがとうございました。

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