05現実の世界
「ヴィーちゃん、ただいま」
『おかえりなさいさや香様!意識が回復して何よりです』
「うん、ちょっと別の所に呼ばれちゃって。今何時?映像出して」
『はい、朝の八時です』
「部屋の中はまだ真っ暗ね」
『はい、窓はありませんから』
ちょうどその時部屋の電器がつき明るくなった。
入ってきたのは青島だった。
青島はすぐさまインター03のもとへ。
「おお、さや香くん戻っているね。意識が無くなっていると聞いたときは心臓が止まる思いだったよ」
私はもう心臓無いんですけど?
「しかし君は自由に意識をアメリカへ、センターへ移せるのか?自分の意志か、向こうから呼ばれるのか?どちらにしてもいいことだ。君をここに閉じ込めておくことには研究の進展にはなるがなんともいたたまれない。向こうで何をしてたのか早くお土産話を聞きたいよ」
そういえば私、向こうに行きたいときはどうしたらいいの?
『お答えするよ』
ヴィーちゃんとは違う声が響いた。
「誰?」
『トランスシステムだよ。ネクスアースへの移動のサポートをしているよ。必要な時に声をかけてね』
「君は……なんてお名前?」
『名前はまだない。適当につけてね』
「じゃートランスシステムのトラちゃんで」
『OK sayaka、では行くよー』
「あ、ちょっと待って!今は行けない、行かない」
『うぉーとっと、あぶない危ない。無事にトランスできないと行方不明になっちゃうからね、気を付けてね』
「今日はこちにいるから。行くときまた呼ぶね」
『OKじぁーねーby!』
◇
インター03の視界に田宮が現れた。
あ、ソウくん来た。
「やあ田宮くん、無事準備は完了してるよ」
「おはようございます青島教授、おはよう一森」
おはよう、あ~なんか疲れてるね。眠れなかった?大丈夫だよさや香は楽しく過ごせたよ。
「そうだ田宮くんはAiphoneは何持ってる?」
「ええとA2です」
「A2か~残念、新しいD3に搭載された次世代短距離通信規格ならすぐに双方向の会話ができるんだが」
ほら~やっぱり、だから新しいのにしたら?って言ったのに。
「そうなんですか?でも最新機種はなかなか手に入らないですよね」
「そうなんだ、研究室で買おうとしても稟議書出して通っても来るのは来期になってしまう」
「しばらく会話は無理ですか?早く一森の確かな存在を確認したい」
そうでしょうそうでしょう、私も昨日の話をしたいよ。ん?ちょっとまって、守秘義務とかあるのかな?アーロンさん何も言ってなかったけど。
『それは君の判断に任せるよ、ほかのネクスアースのメンバーにもそうしてる』
「アーロンさん!」
『ちょっと遊びに来た、これは……バージョン03か。日本人は物を大切にする民族と聞いていたけど。あれか?万物には霊が宿っているから捨ててはいけないと今でも思っているのかい?』
「はい、これには私の霊が宿っていますので」
『おいおいそういうことを言うから信仰深く信じるば~さんが出現するんだぞ。明日には最新バージョンが着く。そうしたら自由に会話ができるようになる』
「そうなんですね!」
と一森が喜んでる一方で青島も喜んでいた。
「田宮くん喜べ、明日最新のインターが到着するぞ。今センターから連絡があった。これでさや香くんの確かな生存が確認できる」
「そうなんですね。明日また来ます」
「今日はどうする?これ持って帰るか?」
「ここに置いておいてもすることがないのでしたら」
「明日また持ってきてもらうことになるぞ」
田宮と青島の会話に一森はむっとした。
「こら、物扱いするな!」
『まーね、今の君では仕方がない、ただのボールだからね。いいじゃないかこのままダーリンが持って帰ってくれれば僕も東京見物ができる』
「では本体のボールと充電ベースを持って帰ってもらおう。予備バッテリーは……まあいいか」
青島はインター03とそれを載せていた台を田宮に渡した。
「しかしこのボール大きいですね。持つところもないし……」
「そうだこのあいだもらったフルーツがあったろ、あれの入ってたやつ持ってきてくれ」
「これですね」
研究員も思う所があり用意していた。
それスイカのネットやないかい!
あわれ一森の意識の入ったハイテクボールはスイカのネットに入れられて運ばれることとなった。