02今に繋がる昔の思い出
田宮は一森との馴れ初めを思い出していた。
一森さや香と出会ったのは三年の研究室交流会の時だった。
共同討論の時に俺の発表に執拗に意見・質問してきたのが一森だった。
自分でも研究不足で補強しないといけないと思っていたところをついてきたので強烈に印象に残った。
それから懇親会で言葉交わし、連絡先を交換して……というあんばいだ。
しかしアメリカに留学すると言い出した時はおどろいた。
そこまで研究に熱心だったのかと。
結局留学期間は二年間だったがその間はろくに連絡もなし。
このまま自然消滅かと思ったが、帰ってきたらまた頻繁に会うようになり復活した。
留学前に比べて明るくなった、可愛くなった、棘が取れた、という印象で何が彼女をそうさせたのか?
そして二年遅れて同じ会社に入社してきて現在に至るというわけだ。
◇
一方、一森は暗闇の中で何もできずにいた。
その時脳内で声がした。ヘッドフォンで聞く声のような感覚だ。
『さや香様、事故を起こしてしまい申し訳ありません、運転支援システム・ウイズユーのヴィーです』
「ヴィーちゃん、無事だったのね!」
『はい、車は大破してしまいましたが、ヴィーの機能はオンラインで繋がっているセンターで稼働し続けています。新しい車が手配できましたらまた運転支援システムとして働くことができます。それよりも……』
「そうよ、事故があったことはわかるけどその後私はどうなっちゃったの?」
『はい、申し訳ありませんが肉体は損傷が激しく機能維持にははなはだ障害が多くて放棄せざる負えないと判断しました』
「その判断はヴィーちゃんがしたんじゃないよね?」
『はい、さや香様が加盟されている生命維持保険ライフスの判断です』
「よかったー正常に機能したのね」
『はい、今さや香様の人格はライフスのセンターに追加分を転送中です。日々の変化データは乗車時わたくしめヴィーが保存していますので』
「今が一番不安定な時期ね」
『はい、今のさや香様の記憶はここ数年表層に現れたものしかここにはありません』
「確かに昔々のことは思い出せない……いつ頃元通りの人格に復元できそう?」
『はい、計算上は数時間ですが、なにせアメリカ以外での施行は今回が初めてですので障害がなければの話です』
「寝て待つほどではないわね。それとこの真っ暗闇は何とかならないの?」
『はい、さや香様の目の機能は正式な収容先が決まるまで復元できませんが、ヴィーと共用ならば視界を得ることは可能です』
「お願い」
『少々お待ちください』
やがて、ゆっくりと明るくなりだし映像が現れた。
そこにはこちらをのぞき込む田宮の顔が大映しになっていた。