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水槽姫④
それからしばらくの間は、何もしたくないという感情だけが心を支配していた。食事を摂ることはおろか、本のページを繰ることも、最近の楽しみであった水槽の少女をぼんやりと眺めることさえ億劫という有様だった。
もう少しで読み終わる本の縁をすっとなぞり、どうしてこうなってしまったのかを考える。そんなことしなくても、答えは出ていることだろうに。その答えに行き着くたびに、自嘲にも似た笑みが浮かぶ。
窓越しに見つめる外の世界では雨が降り続いており、部屋の中を優しい雨音が満たしていた。こうしていると、自分も少女と同じように、水槽に閉じ込められているような気がしてくる。
本当の水槽とは、この世界そのものでは、ないだろうか。