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水槽姫①
ぼこりと、あぶくのはじける、鈍い音が、聞こえたような気がした。
ふっと読んでいた本から顔を上げ、音の聞こえた方に視線を向ける。どうせ、庭にしつらえてある猫の額ほどの池で飼っている鯉が、空気を吐き出したのだろう。
そのまま読書を続けようと思ったが、胸が少しざわつくような気がした。そのせいかは分からないが、どうにも集中できそうになかったので、小さく息を吐き出してゆっくりと立ち上がってみる。何かに惹き付けられたかのように、そのまま池のある庭先へと足を運ぶ。
「あぁ」
目をすっと細め、小さく声を漏らす。池の中には、ふわふわとした白いドレスに身を包んだ、鯉よりも一回り小さな女の子が沈んでいた。
しばらく眺めていると、彼女の口から小さな気泡が漏れ、頬を伝い、こめかみの辺りで可愛らしくはじけた。
「水槽は、どこに仕舞ったかな」
痺れたような頭を無理矢理に動かしながら、そんなことを呟いた。