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恋愛感情が乏しい魔女は背徳王太子のお妃さま~森に迷い込んだ少年を気まぐれで助けたら、十年後に彼と結婚することになりました~  作者: 虎柄トラ


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第17話 仮初めの婚約者

 私はゴクンとつばを飲み込み……彼の正体を知るために質問した。


「ニール……あなたって、いったい何者なの? 一介の貴族の嫡男っていうのはウソよね?」


「はい、僕はアリシャにウソをついていました。僕は貴族ではなくて王族……本当の名前は『アクセレラ・ニール・フェクシオン』と言います。この『フェクラーン王国』の王太子であり、のちにあなたの夫となるものです」


「王太子……? ということは、将来の王様……? てことはよ……あなたは私を王妃にしようとしたってこと?」


「あ~、そうですね。確かに『妃』ではなくて将来のことを見据えたら『王妃』と言った方が正しかったかもしれませんね。さすがはアリシャ痛いところを突いてきますね。すぐに僕が王座を継ぐということはありませんので、そこは何も心配しなくても大丈夫です。王宮の習わしについても僕が付きっきりで、アリシャにお教えいたしますので、大丈夫です」


 私は九年前に彼から名前を教えてもらっていた。ちゃんと手帳にも『ニール・フェクシオン』と書き残している。あの凛とした身なりにフェクシオンという名を聞いて、どうしてそのことに気づかなかったのか。フェクラーン王国を代々治めてきた王族の名がフェクシオンだと、すぐに気づけなかったのか。


 そうと知っていれば……私は彼を、あの少年をあの時、見捨てた……いや、それはないけど、でもまた会おうなんて約束は絶対にしなかった。


 さてと……問題はここからだ。私がいまここで彼との婚約を拒んだあとのことを真剣に考えないといけない。無理矢理王宮に連れて行かれるかもしれないし、廃止した法律をまた新法として復活するかもしれない。最悪の場合、ニールのことだから結婚できないなら心中するとか言い出しかねない。


 ほんと……どうして……こうなった……。


 なにか、なにか……それっぽい言い訳を思いつかないとヤバい。


 頭をフル回転させて思考を絞りまくった結果、私はある妙案を思いついた。

 彼には到底達成できないであろう、高難度の条件を突きつけることにした。


「分かったわ、あなたの婚約者になってあげてもいいわ。だけど、一つ条件があります!」


「その条件とはなんでしょうか、アリシャ?」


「それは……あなたが成人するまでの一年間。その一年間で私を惚れさせること。その一年後に、私があなたと人生を共にしたいと思えるまで、愛を(はぐく)めたら結婚してあげるわ。もし、そこまで至らなかったら、私との結婚はきっぱりと諦めて婚約破棄してください。そして、もう二度と私に会いに来ないでください」


 私は恋愛感情というのものが分からない。家族愛ならともかく、よその他人にどうしてそんな感情が芽生えるのかが意味が分からないし、分かりたいとも思わない。


 一年間という期間を設けることで延長もなく強制終了できる。ニールも成人したことで、臣下からの懇願(こんがん)によって、王妃を(めと)らざる負えなくなるはずだ。彼がこの条件を受け入れないのであれば、そのまま婚約破棄の流れにもっていくこともできる。


 我ながら完璧な計画じゃない? あれ、私って天才か? これならどう転んだとしても私の勝利は揺るがないのだ! だって、魔女の私が人間相手(ニール)に恋なんてするはずないのだから!


 私は心の中でガッツポーズをしながらニールの返答を待った。


「分かりました。その条件、お受けいたします。僕が思い描く夫婦像は互いに助け合う仲睦まじい夫婦です。必ずや、あなたを惚れさせてみせます。僕の全てをかけて……」


「交渉成立ね……これから一年間どうぞよろしく、婚約者ニール」


 私は微笑みそう言うと、条件を受け入れたニールに向かって手を差し出した。すると、彼は私の手を一瞥(いちべつ)したのち、笑みを返しこう告げた。


「こちらこそよろしくお願いします、僕の婚約者アリシャ」 


 私と彼は契約を結んだ証として固く握手を交わした。

最後まで読んでくれてありがとうございます。

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