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絵の女  作者: 八花月
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004

 思い余った私は、とうとう占い屋に足を踏み入れてしまった。占いなどに頼ろうと考えたのは生まれて初めてのことだ。


 通常の運勢占いではなく、失せ物・当て物専門の占い師である。


 知人の伝手を辿り、その筋では有名な人を紹介してもらった。


 宣伝しているわけでも看板を出しているわけでもなく、通常の手段ではなかなかその人に観てもらうことは出来ないらしい。


「これでいいかい?」


 私はクリアファイルから、あの絵のコピーを出してその人物に渡した。デジカメで写真に撮って印刷機で出力したものだ。やはり本物のほうが良いのだろうか?


「ええ、これで充分ですよ」


 占い屋は顔も身体も厚いヴェールで覆っていて、なかなか雰囲気があった。


 室内は薄暗く、声も何かの手段をもって変えているらしく男か女かも判別出来ない。


 占い屋はしばらく絵を矯めつ眇めつしてから、おもむろに人間の顔ほどもある水晶玉をどこかから取り出し、私との間の机の上にデンと鎮座させた。


「黙って座ればピタリと当たる、ってワケにはいかないかね?」

「ええ……今回は少々手強そうなので……」


 この占い師は時間はかからない、と聞いていたのに、随分長い間水晶に向かって手をかざしたり顔を近づけたりしている。


「霊査は終わりましたが……」


 だいぶ待たされたのち、苦しそうに息を喘がせながら占い屋は語り始めた。


「これは良くないですね……良くないですよ」


「あのね、君。私は運勢占いしてもらいに、わざわざ来たんじゃないの。良いだの悪いだの聞いてないでしょう? この絵の場所を聞いてるの」


「いえ、ええ……なんと言いますか、良くないのです」


 占い屋はしばらく口をモゴモゴしながら要領を得ないことを言っていたが、

「探索はお止めになったほうがよろしいでしょうね」

突然、意を決したようにハッキリをこう口に出した。


「良いだの悪いだのは聞いてない、と言ったよね?」


「あの、しかし……これはとても良くないものなんです。関わらないほうが……正直私もこの仕事を受けたことを後悔していて……」


 占い屋は震える手で〝絵の女〟を指し示している。冷や汗? なのか液体が一滴、A4コピー紙の上に落ちて汚い染みを作った。


「君ねぇ、君は一応、金を貰って仕事しているプロなんでしょう? 今の君のこれがそれに見合う成果だと思う? 恥ずかしくないの?」


「お代はまだ頂いておりませんが……? あ、いえ、勿論結構ですよ。このような結果になった以上……」


 私は最後まで言わせなかった。私は気取った水晶玉を鷲掴みにし、目の前のうらなり占い野郎に投げつけた。


「おぎゃあ、すぎゃらすっとめこんだらっとらん、しっとぐすぞ!」


 私は喚きながら、呻きながら床に転がっている占い屋に馬乗りになり、顔と思われる辺りを殴り続けた。


 私に反抗した。生意気な口を聞いた。約束を果たさなかった。〝あの女〟を悪く言った。


 許せない。これは当然の報いだった。


 最後に、手探りで床に転がっている水晶を探り当てると、ボウリング玉を投げつける心持ちで占い屋の頭にブチ当ててやった。

 

 水晶は砕け散り、占いは動かなくなった。


 まったく時間の無駄だ。私はプリプリしながら占い屋を後にした。

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