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目覚め

目を覚ますと、そこは教会の祭壇のような場所だった。

誰がこんな実用性の無い建物を作ったんだ?と

一瞬疑問に思ったが、自分だということに気付く。

傍らには衣服がギッシリと詰まったキャリーケース。

自分が座っている場所は玉座のような場所で、

反射光が背後のステンドグラスに乱反射し、後光ようになる。天井は遥か高い位置にあり、そこからも光が入ってきている。建物全体が白く光り、

とても荘厳な雰囲気を醸している。


「ふぁ……あ、よく寝た」

よくは寝ていないが、先程までの作業を終えての目覚めは、やりきったという感覚と同時に新しい肉体での久しぶりの目覚めということもあり、熟睡したあとの気持ちの良い朝といった具合だ。


んー!っと背伸びをすると前を見る。

すると、人の話す声が聞こえてくる。


いかんせん光に慣れていない。

まだ瞼を完全に開けられないので、目を瞑ったまま透視能力を使う。この状態であれば、目が光に慣れていなくても、脳内に直接ビジョンとして入って来るので、周囲の確認ができる。


目の前には祈りを捧げる白い服装の女性と、

その後ろで本を片手に抱いて頭を垂れる男性がいた。

まだ私には気付いていないらしい。


話しかけようか、どうしようか?


普通の少女として世界を見て回るというのも良いかも知れないが、拠点や後ろ立てがあった方が良いだろう。

こちとらノープランである。

後ろ立てはともかく拠点は必要だ。

神様だったらどう話しかけるんだろう。

惑星の管理を始めてから一万年は経っている。

その間ボッチだったから会話の仕方すら忘れている。その上今ややっていることは神様みたいなもので、自分の姿を暗示するような本も各地に配置していた。神様の話し方は語尾になのじゃを付けているイメージが強いが、この見た目でそれをやると脳内が崩壊する。主に私が耐えられない。


気持ちを整理すると薄目を開けていた目を完全に開く。すると既に前の二人は顔を上げていた。


「お、おはよう」

挨拶がこれで合っているのかもわからないが

そもそも話が通じるのかが、疑問である。

通じていなければ意味がないので、神様の能力辞書(仮称)から翻訳能力を使用する。


「こんにちは」


そもそも朝昼夕で挨拶が違う文化も無いかもしれないから共通の挨拶を発声するが、よくよく考えると私が創った知識の本は、全て日本語によるものだ。本を開くと内容が自動的に流れ込む仕組みなので、今このとき言葉が通じない事はないはずである。


「こ、こんにちは」


女性の方が反応したが、これはどういう状況だろうか。こちらからも疑問はあるが、あちらも相当困った様子をしている。管理者としては尊大な状態を保ちたいため、あまり質問すべきではないかもしれない。

まずは相手の疑問を晴らす事から始めるべきか。


「私の名前はブラス。この世界を管理している存在だ。戸惑っている様だけど、何か質問はあるかな?」


「え、えと……良い名前ですね?」


うん、戸惑っている人との会話というのは難しいものだ。後ろに居る司祭っぽいやつはどうだ?

視線をそちらに向けると目が合った。


「私も良い名前だと思うが、自分を世界の管理者などと言うのは些か驕りが過ぎるとは思わんかね」


想わぬ返事が返って来たが動じない。自分も同じ状況だったら、何言ってんだコイツ?くらいには思うはずだ。黙っていると男が続ける。


「はぁ……その姿は確かにこの世界に伝わる創造神様の御姿であるが、急に現れた貴方の事を信じろと言うのは無理な話。証拠を示してくだされば、我が主として崇めましょう」


まあ、口だけなら何とでも言えるというやつだろう。はて、創造神として崇められているというのは初耳だが、彼らの祖先を創ったのは私である。創造の神というのはあながち間違いではない。だが容姿が伝わっているというのはどういうことだろうか?疑問に思いつつも応答する。


「何をすれば良い?」


「では、この神殿の一部を別の形にするというのはいかがか?」


「そんなことでいいのか?」


「ああ、出来るのであれば」


なんだろう、すごく舐められてるのだろうか。

形を変えるくらい、魔力の満ちているこの世界では一般人でも当たり前のように出来そうなものだけど。


「じゃあ、そこの柱でいっか」


この神殿自体が私が一万年近く前に創ったもので、自分がこうして惑星に降り立つことがあるのではないかと考え、不滅の特性を持たせた建物である。建物というのは設計上、何本もの柱で支えられていて一本でも崩してしまえば耐久性を失ってしまうが、私の創ったこの建物は初期の形状を記憶しており、例え崩れたとしても元通りに再生してしまう。


「そうか、確かに私にしか出来ないかも」


そう言うと私は建物の記憶そのものに干渉する。

柱を私の姿の像に加工した記憶を植え付けると


「終わったよ」


柱自体が波打ち私の像が出来上がる。


「な、なんと!」


「まあ、原理を説明すると魔力を活用する方法論を知ってれば誰でも出来るんだけど、普通はその原理を知らないよね」


少しドヤ顔になってしまったが、証明出来たようで何よりである。得意な事になると人は急に饒舌になるよね。


「とりあえず、二人がどういう人なのか聞いても良いかな。能力使えばわかるんだけど、二人の口から聞きたいかな。私は名乗ったのに、名前すら聞けてないし」


この神殿にいるということは、それなりの地位にいることはわかる。

本体がスリープに入るまでの後半の七割くらいはずっと宇宙にいた為に、どんな文明が惑星上で生きているのか、見ていたわけではない。異常が発生した部分を直す反面、異常のない部分は注視していなかったからだ。

私は二人に今いる場所での立ち位置など、詳細を聞いていく。


男性の方はロメイン=ムラタというらしい。なんとも日本ぽい姓だが、この国は姓を前につけるらしく、ムラタというのが、名前だそうだ。代々この神殿を守っていて、自分で三百二十代目だと言う。ロメイン家の最初の家長が、神を祭ると本に書かれていたこの建物が壊れたり汚れたりしたら神様に申し訳が立たないという信心深い信念から守り始めたらしいが、途中何度も街の他の建物が壊れたりする中、この神殿だけが無傷だったことから、創造神様の御業によって建てられた物として崇めた。それからというものムラタの祖先達はこの神殿で神に祈りを捧げる事を日課にし、備え付けられた納屋のような場所に住んでいるそうだ。

まあ、倒壊しないというよりは、自動修復機能を付与しているために倒壊しても元通りになる建物なのだが。それは言わないでおこう。

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