俺、女になる?
何も無い白い世界
そんなものが本当に存在するものなのか、よくある話では神様が出てくる転生モノにある表現だ。
人間の目が光の屈折で色を認識するように、色が存在しないという表現であれば納得出来る話かもしれない。
なぜなら俺は死んだんだ。
自分を殺した奴の顔がフラッシュバックして頭を抱える。いや、頭どこ?
(なぜ、こんなところに居るんだい?)
そんな声がした気がした。
耳が無いんだから声は聞こえないだろう。
違う、これは俺の能力だ。
身体はないが振り返る。
心の中に語りかけて来る存在に意識を集中する。
(ああ、君は元はあの世界の生物だったのかな?)
(そのままだと不便だから、こちらに対応できるようにしようか)
首は無いが首肯する。
そうすると世界に
音も
色も
身体も
「声が」
俺だった頃の身体が見える。
そして、色々な光が、光景が鮮明になる。
気が付けばそこは砂漠だった。風が無いから砂が飛ばない、水分の無い乾ききった肌色の砂場だ。
上を見上げれば黒、一面の黒の広がり、その中に点々と光にも満たない小さな粒がある。
「これが、この世界の現状だよ?」
また声に反応して振り返る。
そこには年齢の推定が難しい女性。身長は155センチ程だろうか?青白い髪のぱっつんロングに、まるでセーラー服とパーカーの間くらい白い上着にミニスカートの萌え袖地雷女が立っている。
正直趣味が悪いな。
「この姿は君の趣味に合わせたんだよ」
悔しいがそうだなと、苦笑する。
なるほど、俺は趣味が悪いらしい。
それはそうと
ここは何処なんだ、君は?
「ここは破滅した世界の名も無い惑星の地表、私は君の思考から読み取った名前で言う所の神様ってやつだよ」
貴方が神か。
「そう、仏様って言っても元々この仕事をしている存在だから違うだろうし、ほら、仏様って元々君と同じく人間だったって例えられる事が多いからさ」
じゃあ神様って呼ぼう。
思ってること伝わってるっぽいし、これで良いですね?
「そうだね、世界の管理が仕事だから管理者って呼んでもいいけどね」
なるほど。
で、これからどうなるんだ?
俺が心の中で語りかけると神様は少し首を右に向けて考えるようなポーズを取る。ちょっと可愛いと思っていることは内緒だ。
「全部聞こえてるけどね。でも別に気にしないし、君に頼みたいことがあるんだよね。」
な、なんだよ。露骨にキョドる俺、超恥い。
「実は君が私の意思が聞けたのは君自身の生前の能力があったからなんだ」
神様が言うには能力や記憶は脳の奥深く、だけど人間の言う魂に刻まれているらしい。ただ、神様の声が聞こえる人間は普通じゃあり得ない。
そんなあり得ない存在が俺で、権限さえ持ってしまえば同じ様に神様にだってなれるらしい。
「そこで考えたんだけどさ、君には多忙な私に変わって、この世界の管理者になって欲しいんだ」
つまり、世界の管理をするバイト戦士ってことか
「そうだね、雇う報酬として好き勝手させてあげるよ。
この世界がこれ以上悪くなる事って稀だし、私の代理だからって制限するつもりもないからね。君が気に入ってる様だからこの身体をトレースして貰っても構わないよ」
おかしなくらいに好条件なバイトだな。
時給制じゃなくて前払い。
しかも世界そのものが報酬かよ。
「そう。そこら辺も全部今引き継いじゃうからさ、少し」
神様は近づいてくると背伸びをして俺の頭に手を乗せる。
「じっとしてて」
俺が目を閉じ、次に目を開けたときには
そこには誰も居らず何も無い砂漠が広がるばかりだった。
「え?」
今声を発したのは本当に自分なのだろうか?
何かの儀式が始まるのかとワクワクしていたのに一瞬だったし、何が起きたのかもわからなかった。神様も居ないし。
秒数にして数秒の神様インストールが終わった俺は萌え袖ぱっつんロング地雷女になっていた。