月夜のアクセサリー 【月夜譚No.262】
アクセサリー作りは楽しい。細かい作業は元々好きで、手許に集中できるから余計なことを考えなくて良い。バラバラだったそれぞれの素材が組み合わさって一つのアクセサリーになるのも、自分の手でやると嬉しくなる。
女がやることみたいだと馬鹿にされた時期があった。それが嫌で周囲にこの趣味を隠していたこともあった。
けれど、やはり自分はこの作業が好きなのだと思う他なかった。好きだったものをおいそれと嫌いにはなれないし、何より手放したくはない。
最後の仕上げを終えた彼がふと顔を上げると、作業部屋の窓から満月が覗いているのが見えた。そういえば今日は十五夜だったな、と思い出す。
暗い夜空にぽっかりと浮かぶ満月は皓々として、まるで作りものみたいだ。
彼が腕を掲げると、先ほどできたばかりの指輪が満月を縁取って煌めく。
彼の指から生まれたものは、世界にたった一つ。幸い、それを欲しいと言ってくれる人も大勢いた。
だから、これが好きで良かったと心から思う。たとえ否定されても、肯定してくれる人は必ずいる。
それを身を以て知った彼は、今日もアクセサリーを作り続ける。