ママのお願いごと
「あっ」
ミカちゃんが声を出したので、ママは目をぱちくりさせました。
「どうしたの、ミカちゃん?」
「ママ、今ね、お星さまが、ぴゅーって、落ちていったの」
ミカちゃんは空を指さして、手をふりふりします。ママはうふふと笑いました。
「そう、ミカちゃん、流れ星を見たのね」
「ながれ、ぼし……?」
ぽかんとしているミカちゃんに、ママは教えてあげます。
「そうよ、流れ星。お空にういているお星さまがね、落ちてくるの。きれいだったでしょう?」
ママは、「あら?」と声をあげました。ミカちゃんの顔が、泣きそうにゆがんでいたのです。ミカちゃんはママのうでにぎゅうっとつかまり、小声で聞きます。
「ママ、お星さま落っこちちゃったら、いたいんじゃないの……?」
ママはほほえみ、それからミカちゃんの頭をそっとなでました。
「大丈夫よ、痛くないわ」
「それに、お星さまが落ちていっちゃったら、お空にお星さまがなくなっちゃうんじゃないの?」
まだ心配そうに目をうるませているミカちゃんに、ママは「うーん」と考えこみ、やがてにこっとしました。
「大丈夫、なくなっちゃったりしないわよ。だって、お星さまはお空に帰ることができるもの」
ミカちゃんが、くりくりっとした目を大きく開いて、ママを見あげます。ママは続けました。
「あのね、ミカちゃん。流れ星が……お星さまが落ちちゃうときはね、お願いごとをいうといいのよ」
「お願いごと?」
ミカちゃんが聞き返します。ママはうなずきました。
「そう、お願いごと。お友達をたくさんつくりたいとか、絵本をもっと読みたいとか、お夕飯はハンバーグがいいとか」
ママがちらっとウインクしたので、ミカちゃんもにっこりしました。お買い物で、ミカちゃんの大好きなハンバーグの材料を買っていたのを、ミカちゃんも知っていたのです。
「そうやってお願いごとをするとね、お願いごとがかなったとき、お星さまはお空に戻ることができるのよ」
ママの言葉を聞いて、ミカちゃんは「わぁっ!」とうれしそうに飛びはねました。
「わかった! ミカ、お星さまが落ちるときは、いっぱいいっぱいお願いごとするね! ……でも、さっきのお星さまには、お願いごとできなかったけど、大丈夫かなぁ?」
またミカちゃんの顔がくもりました。ママがいたずらっぽく笑います。
「それなら大丈夫よ、ミカちゃんの代わりに、ママがお願いごとしてたから。ミカちゃんが、にんじんも食べられますようにってね」
「えーっ! もうっ、ママのいじわる!」
ぷくっとふくれっつらをするミカちゃんを、ママはにこにこしながら見ていました。と、再び流れ星が落ちていきました。ママは急いでお願いごとをするのでした。
――ミカちゃんが、たくさんお願いごとをかなえられますように――
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