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1.勇者追放される

1.勇者追放される


オレの名前はユーキ。


18歳の勇者だ。


一年ほど前に故郷の村を離れ、今は終盤の村の依頼を達成した帰り道。


「キリキリ歩けよユーキ!」


今、オレを怒鳴ったのはパーティの戦士。


名前はセッシと言い屈強な体の男で、何かと因縁をつけてくる。


「あ、それユーキだったんだ。アタシ、ゴブリンかと思ってた」


明るく笑う少女は魔法使いのマホ。


オレをよく魔法の実験台にする。


「ゴブリンなら退治できるんですけどね。タチの悪い」


舌打ちをした美しい女性は賢者のカーシィ。


このパーティの実質的リーダーで、危険な役目をオレに押し付けてくる。


「……はは」


オレは力なく笑った。


不遇な扱いは今に始まったことではない。


慣れたという訳ではないがオレを馬鹿にすることでパーティのストレスが軽減されるというのであれば受け入れる他ないだろう。


言い返してこないオレを見て三人は面白くなさそうに話題を変えた。


「この村の代表バカだよな」


「モンスターの討伐に相場の3倍を要求されても支払うんだもんね」


「ユーキが自腹を切って泣きついてきたから、払い戻しになりましたが」


この村は魔王城の近くにある。


モンスターも強く交易ができない村の蓄えは少ない。


そんな村人を思い、母のカタミのペンダントを売って資金を手に入れたのだ。


「邪魔するぜ」


セッシが村長の屋敷に入る。


「お待ち下さい勇者様方。現在、村の重要な会議をしていまして」


屋敷の入り口にいる村人が制止する。


セッシ、マホ、カーシィには聞こえていないのかズンズンと屋敷内を進んでいく。


オレには村人に頭を下げながら三人に付いてくしか選択肢がなかった。


ドン、とセッシが会議室のドアを開いた。


部屋の中では村の役人10名と村長が話し合いをしている。


モンスター被害の深刻さが議題のようだ。


「村長、モンスターを退治したぞ」


セッシの言葉に村長と役人が歓喜の声を上げる。


村長はありがとう、ありがとうとセッシの手を握った。


困っている人が救われると素直に嬉しい。


「料金は3分1でいい。モンスターは雑魚だったし。何よりお前らも大変だろ?」


村長の眼から涙がこぼれた。


その金はオレが出資したのだが、セッシは伏せるつもりらしい。


だが、問題ない。村が不必要な金を支払わずに済んだのだ。


優しい母ならば、同じことを言ってくれるはずである。


気を良くしたのか、セッシはヘラヘラとした口調で話し始めた。


「いやー、俺たち3人が反対したんですよ。この料金は相場の3倍だって。なのに勇者のヤツが、どうせ他に頼れる冒険者なんかいないんだから奪えるだけ奪おうぜって聞かなくてですねー」


当然、そんなことは言っていない。


反対したのはオレだし、奪えるだけ奪おうと言ったのはセッシである。


セッシの言葉に村の若い役人がオレを睨んだ。


流石に弁解しようとセッシを見ると、マホと意味ありげに目配せをしていた。


カーシィの手には小型の機械が握られている。


小型撮影機?


マホはドスンとオレに軽くぶつかってくる。


何事だろうと思っていると


「あっ!勇者のポケットの中にアタシの財布があったー!!」


と高らかに声を上げた。


何が起こったのか分からず、オレは呆然としていたが、このままでは不味いと気付きすぐに弁明する。


「ち、違う」


冤罪である。


何人もの視線がオレに突き刺さる。


非難の目。


「冗談だって説明しろよ」


マホに詰め寄ると彼女はその場に座り込み泣き出してしまった。


おい、酷いんじゃないのか!


魔法使い様が泣いてしまったじゃないか!


お前のせいで村の資金が失くなるところだったんだぞ!


軽蔑の声。


その声は屋敷中に響くほどの大音量だったが、……ふと静かになった。


セッシが手を役人達に突き出し声を押し止めたのだ。


弁解してくれるのだろうか。


期待の眼を向ける。


「俺は勇者の強さを尊敬している。だが、その性格には難がある。仲間をオトリにし、雑用を押し付け、人から金を騙し取る」


セッシはそこで間をあけ、こちらを向いた。


「ユーキ、その醜い顔を二度と俺達に見せないでもらえるか」


追い打ち。


ミゾオチを思い切り殴られたようなショックが体を貫いた。


セッシのニヤケ顔。


マホの泣声。


カーシィの手に握られた小型撮影機。


そして


「消えろー!帰れー!!、死んじまえー!!!」


救ったはずの村人からの罵声。


思い出すのは故郷を旅立つ時に幼馴染からもらった言葉


辛いこともあるかもしれないけど頑張ってね


その優しい言葉が、状況の凄惨さを一層際立たせた。


「ユーキ。泣くほど辛いなら故郷に帰ったらどうだ?」


セッシに言われて初めて頬を流れる涙に気がついた。


オレは巣から落とされた小鳥のような足取りで部屋を抜け出す。


扉を閉めた瞬間、ドッと笑い声が部屋の外まで響いた。

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