あなたには愛を捧げてさしあげるわ
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アキちゃんとの一週間はあっという間でした。
アキちゃんと一緒にいるところを何度かリュウ兄に見せつけましたが、あの日のように嫉妬をしていることを表に出しません。
本当に嫉妬をしているのでしょうか?
あの日はただ機嫌が悪かっただけなのでは?
不安になります。
「アキちゃん。また遊びに来てくれる?」
「来年はこの家から学校へ行くからまた来年、会えるよ」
「それってこの近くの高校を受験するの?」
「そうだよ」
「アキちゃんの高校生になった姿を早く見たいなぁ」
「もし、俺が高校生になってもユウナが一人なら俺がユウナをもらってあげるよ」
「リュウ兄みたいなことを言うのはやめてよね」
「だってリュウさんと同じ気持ちだからね」
「リュウ兄と同じ?」
「そうだよ」
「私はアキちゃんより年上なんだから妹じゃないわよ」
「そうだね」
「意味が分かんないよ」
「リュウさんに聞いてよ」
「うん。分かったよ」
そしてアキちゃんは自分の家へと帰っていきました。
◇
今日は寝坊をしました。
学校へはもう、遅刻だと思います。
それでも急いで家を出ます。
ドアを開けるとリュウ兄がいました。
なんという偶然なのでしょうか?
「あっ、リュウ兄。おはよう」
「ユウナ? おはよう」
すごく気まずいのは何故なのでしょう?
ドキドキしてしまいます。
「えっと、寝坊しちゃって」
「急ぐ必要がないほどもう、間に合わない感じなのか?」
「えっと一応、急いでいるつもりなんだけど」
「そっか。久し振りに一緒に行くか?」
「えっ、でも、、、」
私の嫉妬作戦も、ギャップもリュウ兄には何も届いていないのかもしれませんが、まだ諦めたくないので答えに困ります。
「そんなに俺といるのが嫌?」
ん?
リュウ兄が子犬のように甘えたように言います。
あれ?
リュウ兄は大人だよね?
「そっそんなことないよ。リュウ兄といると落ち着くもん」
「嬉しい言葉をありがとう」
リュウ兄の爽やか笑顔に私の心臓はドキドキが止まりません。
そして私達は駅へと向かいます。
駅について電車を待ちます。
「見てよあの人、格好いい」
「本当だ。でも隣にいるのって彼女?」
「違うわよ。妹でしょう?」
「そうよね。制服とスーツだもんね」
女の人達が私達の関係を見て勝手に決めつけるように言います。
また私は妹に見えるようです。
やっぱりこの制服がダメなのです。
制服なんて大嫌いです。
「ユウナ、リボンが曲がってるよ」
「えっ」
リュウ兄は私の胸元にある制服のリボンに触れます。
私は自然とリュウ兄を見上げます。
リュウ兄は笑顔でリボンを直してくれます。
「ユウナ、できたよ」
「あっありがとう」
私はリュウ兄と目が合って目を逸らしてしまいました。
恥ずかしいからです。
「次は靴紐がほどけてるよ」
「リュ、リュウ兄。靴紐は自分でできるよ」
私はそう言うのにリュウ兄は座り込み靴紐を結んでくれます。
「ちょっと、あれを見てよ。まるで彼女はお嬢様ね」
「本当。お嬢様と執事ってところかしら?」
「二人がどんな関係なのか気になるわね」
あれ?
女の人達が決めつける私とリュウ兄の関係が変わりました。
お嬢様と執事?
人は見た目で何でも判断するようです。
「これで分かった?」
リュウ兄は私にニコニコしながら言いました。
「何がなの?」
「制服とスーツだと兄妹に見えて、靴紐を結んであげればお嬢様と執事に見える。人って目で見たもので何でも判断してしまうんだよ」
「そうだね」
「だからユウナは気にしなくていいんだ。制服だからって」
「えっ」
「ユウナはいつも制服のことを言われると、うつむくから気になっていたんだ」
「知ってたんだ?」
「だっていつも隣にいたからね。それに俺も、、だし」
「リュウ兄?」
リュウ兄は最後に小さな声で言いましたが私には何を言っているのか分かりませんでした。
だからリュウ兄を呼んだけれどリュウ兄は何でもないと言って笑いました。
「あっ、リュウさん?」
私達の後ろから声がして二人で振り向くと、電車の中で助けた女性がいました。
「あれ? カレンさん。今日も遅いんですね」
リュウ兄はその女性の名前を呼びました。
名前を呼び合うほど仲良くなったのでしょうか?
私の知らない間に二人が仲良くなっていたみたいです。
「そうなんです。最近、寝坊しちゃってて」
「この子も今日は遅刻して俺と一緒に行くところだったんですよ」
リュウ兄は私をこの子と呼び、頭をポンポンと撫でました。
リュウ兄は私を妹のような扱いをします。
「あっ、やっぱり妹なんだね?」
「本当ね。妹を溺愛する兄ね」
「うん。彼はただのシスコンなよ」
女の人達がリュウ兄の行動に私を妹だと決めつけました。
その言葉に私は気付いてしまいました。
私はリュウ兄の妹でしかないのです。
バカだ私。
いつまでもリュウ兄に甘えて、ずっと婚約者だなんて思っていて、リュウ兄は私のモノだなんて思っていて、リュウ兄のこと見ていなかった。
リュウ兄の気持ちなんて全然考えてなかった。
「ユウナ」
リュウ兄は私を呼んで抱き寄せました。
「ユウナ。泣くな。俺はお前の側にいるから」
リュウ兄は私にだけ聞こえる声で言います。
泣く? 私が?
私は泣いていました。
だって地面にポタポタと雫が落ちているからです。
「あれ? 彼女はどうしたの?」
「ん? ごめん、カレンさん。彼女の体調が悪いみたいだからちょっとベンチに座りますね」
「そう?」
そして私とリュウ兄は周りに人があまりいないベンチに二人で座ります。
リュウ兄はずっと手を握ってくれています。
「ユウナ。俺は君に悲しい思いはしてほしくないんだ」
「うん」
「それならどうして泣いてるの?」
「リュウ兄の気持ちを考えていなかった自分にムカついて、自分のことしか考えていない自分に腹が立ったの」
「そっか。俺のせいなんだね」
「そんなことないよ?」
私はうつむいていた顔を上げてリュウ兄を見上げます。
リュウ兄は私の顔を見て顔を赤くしました。
「リュウ兄?」
「あっ、いやっ、ごめん」
「どうして謝るの?」
「いやっ、その、ごめん」
「だから、どうし、、、」
「ごめん」
私が言おうとしているのを遮り、リュウ兄は謝って抱き締めてきました。
「リュウ兄?」
「ユウナが可愛くて」
「えっ」
「ユウナは可愛いよ。俺にはもったいないくらいだよ」
「それならリュウ兄も格好いいよ。私よりもリュウ兄の好きな人の方がお似合いよ」
そう私は言ってリュウ兄から離れます。
ダメだよ。
好きな人がいるのに。
「どうして? 俺が年上だから? 大人だから? スーツを着てるから?」
「リュウ兄、どうしたの?」
「だってユウナはいつも俺といるとそうやって距離を取ろうとするだろう?」
「えっそんなことは、、、」
よく考えてみるとそうかもしれません。
周りの目が気になっていつの間にかリュウ兄と距離を取っていた気がします。
でも今はリュウ兄には好きな人がいるのです。
「リュウ兄には好きな人がいるからだよ」
「それなら俺の好きな人はユウナだって言えば俺から離れない?」
「リュウ兄?」
「俺はユウナが好きだよ? 本当はユウナが高校を卒業した時に言おうと思ったんだけどそれだとユウナが俺から離れていきそうで」
「リュウ兄。待ってよ。意味が分かんないよ」
「ユウナ。俺は君が好きだよ。あの日、君にプロポーズをした日からね」
「リュウ、、、兄」
「ユウナ。泣かないでよ」
「だって嬉しくて」
リュウ兄は私の涙を親指で優しく拭ってくれます。
「ユウナ、泣かないで俺の話をちゃんと聞いてくれる?」
「何?」
私は真剣な眼差しを向けるリュウ兄を見て首を傾げて訊きます。
もう、涙は止まっています。
リュウ兄はベンチに座っている私の前に片膝を地面につけ、私の片手を握り私を見つめます。
「ユウナ。俺はもう、我慢することを止めるよ。ユウナにはいい人が現れるなんて思わないし、俺みたいな年上の人より同じ歳の人の方がいいなんて思わないよ」
リュウ兄も年齢を気にしていたみたいです。
だからリュウ兄は私との婚約破棄を受け入れてたのでしょう。
どんな気持ちだったのでしょう?
好きな人に好きと言えない気持ちはどれだけ苦しかったのでしょうか?
それなのに私はそんなリュウ兄の気持ちなんて考えないで、ヒドイことをしてきたようで、とても申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
「だからユウナ。大人になったら俺と結婚してくれませんか?」
「リュウ兄」
私は泣きたいけれど泣かないでと言われていたから我慢をします。
「ユウナ。泣きそうじゃん」
「だって。昔のプロポーズを思い出しちゃったの」
「昔?」
「リュウ兄は私に言ったのよ。君を必ず守るから大人になったら、結婚してくれる? って」
「二度目のプロポーズじゃん」
「いいの。何回でも私は答えるわよ。喜んでってね」
「ユウナ。ありがとう」
「あっ待って、間違ったわ」
「えっ」
「リュウ兄には愛を捧げてさしあげるわ」
「何だよ?その言い方は」
「だって私はお嬢様でしょう? そしてリュウ兄は執事でしょう?」
「そっか、それなら」
リュウ兄は咳払いをして私を見上げます。
「お嬢様。私はあなたへ一生、愛を捧げます」
「執事さん。いいわよ。私もあなたへ一生、愛を捧げてさしあげるわ」
私達は二人で笑いました。
「ユウナ、学校へ行くよ」
「うん。リュウ兄は会社へ行かなきゃね」
「今日、帰ったら連絡するよ」
「うん」
そして私達は電車に乗ります。
いつものように電車の端に立たされ、リュウ兄が私を守るように立ちます。
手は繋いだままで見つめ合います。
「ユウナ、可愛い」
リュウ兄はそう言って顔を赤くします。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
私が電車を降りてもリュウ兄はずっと私を見ています。
私も電車が見えなくなるまで見ていました。
◇
「やっぱり大成功だね」
カナに朝の出来事を報告すると喜んで言いました。
カナは自分のことのように喜んでくれました。
「カナ、ありがとう」
「ユウナ、これからが大変よ。ユウナは高校生でリュウさんは社会人なんだから周りの目が気になって何もできなくなるからね」
「何もできないの?」
「そうよ。人前でイチャイチャできないし、デートもできないよ。いつも二人っきりだからケンカも多くなったり、彼の家の中で過ごすことが多くなったりするよ」
「カナ達は外でデートはしないの?」
「人混みは避けてるからね」
「私達は人混みなんて気にしないと思うよ」
「どうして?」
「だって、周りにどう思われても私達は好きだから一緒にいるのよ? 悪いことなんてしていないわよ。高校生だって社会人だって恋愛は自由よ。誰を好きになってもいいんじゃないの?」
「ユウナ、そうよね。人は人よね」
カナは大きく頷いて言いました。
彼にも言ってみるよと言ってすぐ電話をしていました。
今日はとても幸せな一日です。
家に帰っても顔が緩んでいます。
早くリュウ兄に会いたいです。
お風呂に入って、ご飯を食べて、星を眺めて、時間は過ぎていきます。
しかし、リュウ兄から連絡は来ません。
忘れてるのでしょうか?
「リュウ兄のバカ」
そう独り言を言うといきなり電話が鳴りました。
リュウ兄からの電話です。
「もしもし」
「ユウナ? ごめん。ちょっと遅くなった。今から帰るから」
「今、何処にいるの?」
「駅だからもうすぐだよ」
「迎えに行くよ」
「夜、遅いからダメ」
「それなら会いたいから家の前で待ってるよ」
「分かったよ。急いで帰るから」
そして電話を切って私は家の前で待ちます。
こちらに走ってくる人影が見えます。
リュウ兄です。
「リュウ兄、おかえりなさい」
「ただいま」
リュウ兄は息を整えながら言います。
私の為に走って帰ってきてくれたリュウ兄。
大好きです。
「やっぱり、リュウ兄は執事さんね」
「えっ何でだよ?」
「だって私の為に走って帰ってきたでしょう?」
「それは俺が早くユウナに会いたかったからだよ」
リュウ兄はそう言って微笑みました。
やっぱり、リュウ兄が大好きです。
「リュウ兄、大好き」
私はそう言ってリュウ兄に抱きつきます。
「ちょっと、ユウナ。こんな所で抱きつくなんてあの、噂好きのおばさんが見てたらどうするんだよ?」
「いいじゃん」
「ダメ。俺達のことを人に陰で言われたくないんだ」
「分かったよ。それならリュウ兄の部屋に行ってもいい?」
「何でそうなるんだよ?」
「だって色々訊きたいことがあるの」
「仕方ないな」
そして私はリュウ兄の部屋に入ることに成功しました。
「リュウ兄、今日はリュウ兄にたくさん質問するからね」
「質問って答えられるものにしてくれよ」
リュウ兄の部屋に来る為にお母さんには夜ご飯を渡しに行くと言って来ました。
そのご飯を食べながらリュウ兄は言っています。
「分かってるよ。まずは一つ目ね。お酒を飲んでほろ酔いの時に眠そうになって言った言葉の、俺って彼女のなんなんだろうはどういう意味だったの?」
「それはいつもユウナと一緒にいてユウナは俺を婚約者って言うけど、俺はユウナが高校を卒業するまではユウナを見守ろうと思っていたから、婚約者じゃなくてなんなんだろうって思っていたんだよ」
「見守ろうとしてたんだね」
「でももう、我慢の限界なんだよ」
リュウ兄は私を見つめてきました。
「つっ次の質問よ。カレンさんが電車でリュウ兄に耳打ちをして顔を赤くしたのは何故なの?」
「それはカレンさんがユウナのことが好きでしょうって言うから照れてしまったんだよ」
「えっカレンさんは知ってるの?」
「うん。カレンさんはユウナが嫉妬するように動いてくれたんだよ」
「えっ私と一緒なの?」
「ユウナも? もしかしてアキのこと?」
「えっバレてたの?」
「最初はムカついた。でも何度か見て、俺に嫉妬させようとしていることに気付いたんだ」
「嫉妬と言えばカナの恋人にもしたでしょう?」
「あれはあの二人に嫉妬したんだ」
「二人?」
「年齢なんて気にせず付き合っている二人を見ていたら羨ましくなったんだ」
「そんなリュウ兄、可愛い。子供みたいだね」
「どこが可愛いんだよ」
リュウ兄はそう言って私に近づいてきます。
リュウ兄の顔が目の前にきて私は恥ずかしくなり目を閉じます。
「ユウナ。目を閉じたらキスしたくなるじゃん」
「えっ」
私が目を開けると困った顔をしてリュウ兄が私を見ています。
「ずっと我慢をしていたんだ。ユウナに触れたくて、キスをしたくて、俺のモノにしたくて、、、」
「どうして我慢をするの?」
「ユウナは高校生、学生なんだよ。俺は社会人だから」
「私も触れたいし、キスしたいし、私のモノにしたいと思うよ。それが好きってことでしょう?」
「だからユウナが卒業をするまでは好きだと言わないようにしてたんだ。そうすれば俺がユウナを傷つけたりしないと思うからね」
「私、傷ついてるよ」
「なんでだよ?」
「だって私をいつまでも子供扱いしてるからよ」
「えっ」
「私はもう、大人だよ。学生だけどちゃんと自分のことは自分で守れるよ。良いことと悪いことの区別はちゃんとできるよ?」
私はリュウ兄の手を握って言います。
ちゃんと私の想いが届くようにです。
「でも、俺が自信ないんだ。もし、抑えがきかなくなったらって思うと怖くなるんだ」
「私はそんなに弱くないよ? ねぇ触ってよ」
そして私は自分の頬にリュウ兄の手を当てます。
「どう? リュウ兄と同じでしょう? 私はそんなに脆くないし、弱くないし、簡単に壊れないよ?」
「心は壊れない?」
「私の心を聞く?」
そして私は心臓がある方の胸をトントンと叩きます。
リュウ兄はうんと言って私の心臓に耳を寄せます。
「鼓動が聞こえるよ」
「速いでしょう?」
「うん。」
「リュウ兄といるといつもこんなだよ?」
「どうして鼓動が心なんだよ?」
「心は嬉しいと鼓動は速くなって、緊張しても速くなるでしょう? 何もないといつも通りの速さでしょう? 心を表しているのと同じなのよ」
「そういうことか」
「だから怖がらないでよ。私は大丈夫だよ?」
「ユウナ」
リュウ兄はそう言って私にキスをしました。
優しいキスは私の鼓動を速くしました。
ドキドキしたけど嬉しくて幸せでした。
◇◇
「あら? ユウナちゃん。またお兄ちゃんと一緒に行ってるの? お兄ちゃん離れをしなきゃ彼氏もできないわよ?」
リュウ兄と駅まで歩いていると噂好きのおばさんが言いました。
「リュウ兄は執事さんなのでいいんです」
「ひつじ?」
おばさんは分からないという顔をしていましたが、私はリュウ兄の手を引いて駅へ早足で向かいます。
「ユウナ、おばさんが執事をひつじと勘違いしてたけどいいのか?」
「いいの。おばさんには適当に言ってればいいの。邪魔されたくないもん」
そして私は立ち止まりリュウ兄を見上げます。
「リュウ兄」
「何?」
「あなたに一生、愛を捧げてさしあげるわ」
リュウ兄は私の言葉を聞いて微笑みます。
「私は君に一生、愛を捧げます」
リュウ兄はそう言って私の手の甲にキスを落としました。
一生、愛を捧げると誓うように。
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。
楽しく読んで頂けたら幸いです。
ここまでお付き合いくださり感謝しております。




