第二話 手折られた花。
第二話、楽しんでいただけたら嬉しいです。
ーープルプル、プルプル。
こんな昼間に電話だ。珍しい。
「はい」
「もしもし、霞さんのお宅でしょうか」
電話の相手の声は少し緊張した様子だった。その雰囲気に釣られて僕も少し背筋が伸びる。
「はい」
「私東高校陸上部、顧問の佐々木です」
相手は同じ高校に通う一つ下の妹、蓮が所属する部活の先生。普段、部活の顧問の先生が電話をしたりはしないだろうし、わざわざ家に連絡をするなんて何かあったのか。
「あ、兄の紬です」
「お兄さん。ごめんなさい、練習中に蓮さんが怪我をしてしまって、中央病院まで来てくれないかな」
中央病院はここらで一番大きな病院で、CTやMRIなどの精密検査のための機械も揃っている。
「え?あ、俺で良いんですか?あの、保護者とか……。」
こういう時は兄じゃなくて親が行くべきな気がする。僕は車とか運転できないし、あまり役立つ気がしない。
「うん。本当は保護者の方に来ていただきたいんだけど、お母様とは連絡がつかなくて」
医療関係の仕事は忙しいからと思いつつ、やっぱり不思議に思う。
「えっと、母の勤める病院の電話とかは……。」
母の勤め先は、中央病院とは違う大きな病院で、看護師として働いている。その病院に電話してもらえれば連絡も取れるはずなんだけど。
「うん。そのことなんだけど、お母様最近お勤め先が変わったでしょう?蓮さんに聞いても家にかけてくださいって教えてくれなくて。」
「ああ、なるほど。」
確かに最近病院が変わってすぐだし、まだ学校が始まっていないから電話番号も申請していない。
それに、蓮が言わないと言われてすぐに納得した。蓮は昔から母の仕事中に連絡が行くのを過剰に嫌がって、授業中に熱があっても保健室に連行されるまで隠したりしていたから、今度もそうなんだろう。
「わかりました。すぐに行きます。」
まあもともと暇なんだし、妹が怪我したんだから、断る理由ももちろんない。
休みに入って久々に出た扉の外はさっきとは打って変わって鈍い灰色の雲に覆われていた。
しばらく自転車を走らせて、病院に着くと、待合室に座った妹と顧問の先生の……、佐々木先生だ。がいた。
妹の蓮は車椅子に座っていて、僕が来たことに気がつくと、顔をしかめた。
なんだよ。わざわざきてやったのに、感じ悪いな。それは置いておいて、車椅子が必要なほどの怪我なのか。
「霞くん、さっき一度診察して、レントゲンとMRIを撮って、これからまた診察だから。」
「あ、わかりました。ありがとうございます。」
先生の表情が硬い。まあ生徒怪我させたら責任感じているんだろう。蓮もずっと下向いたままだし。
「霞さーん、霞蓮さーん」
「はい」
蓮が返事をして看護師さんに補助されて部屋に入る。
診察室の中は、白かった。病院って感じ。白い壁に白い机、白い照明。
うちの近くのおじいちゃん先生のところは壁にキャラクターのポスターがたくさん貼ってあったけど。やっぱり大きい病院はどこもこんな感じなのかな?
「蓮さん」
「はい」
先生の口調は淡白だ。
「MRIの結果、前十字靭帯を断裂しています。」
「ーーえ」
蓮も横で聞いていた先生も固まっている。怪我とか人体に詳しくないけど、靭帯断裂かなりまずいんじゃないのか。
「あの、それって酷いんですか?僕、あんまりわからなくて、すみません。」
聞いたらまずかったかな、診察室の空気が重い。
「そうですね、蓮さんは若いので回復は早いと思いますが、手術とリハビリをして半年から一年はかかります。
でも、おそらく競技に復帰することはできます。」
「そうですか」
また陸上はできるみたいだけど、聞かなきゃよかった。なんか僕が突きつけたみたいになったかもしれない。
「……。」
蓮は黙ったまま俯いている。
その後、これからの治療について先生から説明を受けた。
妹は、顔をあげて聞いていた。普段と何も変わりない様子に見えた。
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では読者様、また三話で!




