ぼくの一生
ぼくは今も走り続けている。
ある日父と母が教えてくれた。ぼくはフルマラソンより長い距離を走るのだと。
実際にその距離を走りきった父・母・兄…そんな立派な人たちをぼくは尊敬している。
走るには、足が必要だ。
ぼくの足がなくなりそうになったとき、ぼくの体を激しい痛みが襲ってきた。ドリルで体に穴を空けられるような、ナイフで体を切り刻まれるような痛みだった。
でもその痛みを乗り越えたからこそ、ぼくは足を取り戻すことができた。また走ることができるという喜びに、ぼくはふるえた。
そして今、そんな長い人生が幕を閉じようとしている。
ぼくも走るべき距離を走りきった。
…だからどうか人間よ。ぼくたちをもっと大切にしてほしい。
これが鉛筆である、ぼくの一生である。
今日本では、まだ使える文房具を捨ててしまう人が多いそうです。
まだ使えるうちに捨てられてしまう鉛筆は、どんな気持ちなのかなぁ、と想像しながらかきました。