テキトーな発言が実現化したんだが。
一週間前。
「アベル。おまえ追放。はい決定」
「えっ」
ギルドマスターからの無慈悲な宣告に、俺は目を丸くした。
「な、なに言ってるんですかマスター。いきなり追放だなんて……」
「おまえのような無能はいらん。人ひとりを雇うのに、どれだけのコストがかかると思っているんだ」
「…………」
「というわけだ。はい追放。寮からも出てってねー」
という一方的なやり取りの末、俺はギルドから追い出された。
アベル・ウンディーネ。18歳。
孤児院で育った俺は、才能がないながらもなんとか頑張ってきたのに。この仕打ちがこれかよ。
……後から聞いた話なんだが、このとき、ギルドマスターには好きな女がいたらしい。俺とその女が仲良いように見えて、嫉妬心から追い出したというが……もう、いまとなってはどうでもいい。
家もない。
身寄りもいない。
金もない。
なにもかもを失った俺は、そのまま社会の荒波に押し出されたんだ――
★
「駄目だぁー死ぬぅ……」
路地裏。
人気のない裏通りで、俺は縮こまっていた。
喉乾いた。
腹減った。
そこいらのゴミを漁ろうにも、ホームレスたちで縄張りがあるそうだからな。食べられそうな肉を取った瞬間、ボスの取り巻きらしい男どもにボコボコにされた。
「うぅ……ひもじい……ひもじいよぉ……」
金。
金さえあれば、こんな思いをしなくて済むのに。なんの特技もない俺には、冒険者ギルドでちまちまと雑用するのが性に合っていたのに。
そういえば、昔、なんかの依頼でペテン占い師と会ったことがあるな。
あんのクソ野郎、予知能力とかできないくせにテキトーなアドバイスしてたのを覚えている。
それでも相談者は目を輝かせてこう言うんだよな。
――ありがとうございます! おかげで元気出ました!――
はっ、笑い話だよな。
俺は俺なりに真面目にやってきたのによ。インチキやってるあいつが平和に暮らしてるなんて。
……世の中、腐ってる。
でも、そうか。
正直者が馬鹿を見る世界なんだし、ここはいっちょ、俺もインチキで一発逆転してやるか。
「ぐずん、ぐずん」
――だから、近くで泣いている少女に話しかけたのはそれが理由だ。決して、正義感なんぞに突き動かされたわけじゃない。
「おい、大丈夫か」
「……あ、あなたは?」
「占い師だ」
「占い師……」
そこで少女ははっと目を見開いた。
「お、お願いします……。助けてください……」
「どうしたんだ?」
「お母さんが重い病気にかかってて。やっとお金が貯まって、お薬を買ってきたのに……なのに……」
「落としちまったってことか」
「は、はい……」
なんちゅうボンクラだ。
まるで俺みたいだな。
あっはっはっはっはっはっは……はぁーあ。
「お願いします。お金だったら、一生懸命貯めて倍にして返します! でも……でもお母さんはいま助けないと……」
切実に頭を下げる少女。
「参ったな……」
勢いで占い師と言ってしまった以上、後には引けない。
仕方ないか。
「ほれ、あっちのほうにあるんじゃないか」
俺は適当なところを指さして言った。
「あっち……?」
「ああ。だがな、ひとつだけ言わせてもらうぞ。占いってのは当たるも八卦、当たらぬも八卦だ。そこになくても気にするな。なんなら俺が一緒に探してや――」
「あ……ありました!!」
「らなくもない。……って、え?」
ぎょっとした。
は? マジ?
嘘だろ?
「ぐずん……良かったぁ……」
俺の驚愕に反して、少女は涙を浮かべるばかり。
しかも俺の手をぎゅっと握りしめて、ぶんぶん振ってくるではないか。
「あ、ありがとうございます! このご縁は一生忘れません! えっと……お名前はなんと言いましたっけ?」
「占い師だ」
「そうじゃなくて! 名前です!」
……それを聞いてどうする。
しかもこの少女、よくよく見れば俺と同い年くらいじゃないか? 驚くほど美人だ。
やや気恥ずかしさを覚えながら、俺はそっぽを向いて答える。
「……アベル」
「へ?」
「アベル・ウンディーネ。つい最近ギルドをクビに――」
「最強の占い師、アベルさんですね! ぜひお礼させていただきます! ついてきてください!!」
「お、おい、人の話を聞け!」
少女に引っ張られるままに、俺は見知らぬ場所に行くことになったのだった。
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