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永遠の旅人  作者: すばる
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領都到着

予定より少し早く、夕方になる前に領都の外壁についた。

領都に入るには門で身分証を見せてお金を払う。

滞在中に問題を起こすとこのお金は没収されるが、何事も無ければ出る時に半額返金されるんだと。

行列ができていたので最後尾に並ぶ。

徒歩で領都に入る人の列、牛車や馬車などの乗り物で入る列の他に、行列を無視して入る集団がある。

装飾の付いた牛車や護衛らしい人の格好から見て貴族や所謂お金持ちの人達だろう。

外壁沿いに薄く結界が張られているのがわかる。

この世界で初めて自分以外が張った結界を見たよ。

うん、ちょい解析してみよう。

結界の外側をぐるっと見る。

領都全体を覆う魔物除けの結界らしい。

これまでの町にはなかったから魔法が使えるという貴族が多い領都ならではのものなのかな。

そういえば、やたら白っぽくて何の石かと思ったら、外壁自体が魔素をふんだんに含んでいる。魔法で造った外壁なんだろう。

へぇ。これはなかなか。

観察している間に私の順番が来た。

「フードをとって身分証を出せ」

厳つい顔の門番が無愛想に言う。

鞄から巡礼者の札を出し、フードを取る。

「これは!巡礼者の方でしたか!失礼致しました。」

なんか急に態度が変わった。

ふむ。なるほど。

巡礼者ってなるだけでお金がかかるから、大抵お金持ちや貴族の関係者で、普通は行列に並んだりはしないのね。

既定のお金を払ってあっという間に手続きは終わり門を抜ける。

門を入ったところは結構な広さのロータリーになっていた。

客引きの人達もあちこちにいるが、まずはギルドに行って換金しなくちゃね。

近くにいた兵士らしき男性に狩人ギルドと商業ギルドの場所を尋ねる。

「近いのはあの建物だな。」

ロータリーに面した大きな5階建ての建物を指差す。

「近いと言うと、幾つもあるのですか?」

「門の近くに各ギルドの出張所がある。それらを取りまとめる本店はもっと中心地の商業街にあるが、徒歩だと一刻位はかかるぞ。」

一刻と聞いてげんなり。

「まぁ、もうすぐ日が落ちるから、今日のところはこの辺りで宿を取るのが良いだろうよ。暗くなってからうろうろするのはおすすめしないぞ。」

厳ついながらニッコリ笑って忠告してくれた兵士さんにお礼を言って教えてもらったギルドの建物に向かう。

出張所と言っても町のギルドより大きく立派な造りをしている。

入り口を入ったところの案内所で身分証の提示と用件を聞かれた。

バッタもどきと魔石の買い取りをしてもらいたい旨を告げる。

買い取りのブースは一階で隣り合ってた。

バッタもどきは銅貨60枚、クズ魔石が10個で銀貨9枚銅貨45枚鉄貨65枚で売れた。

いつも思うんだけど、この世界のお金ってマジックバックがないと持ち歩くには重いよね。嵩張るし。

ギルドに登録するとギルドカードで決済したりも出来るんだけど、ギルド外では基本現金払いだから、ある程度の硬貨は持ち歩いてないといけないのです。

受付の人におすすめの宿を聞いたら裏手の路地にある「銀の鈴亭」を紹介された。料理が美味しくて個室もあると言う。

行ってみると入り口に大きな銀色の鈴が看板代わりに吊るしてあった。

「ギルドで紹介されたんですが、今日お部屋ありますか?個室が良いんですが。」

恰幅の良いおじさんが受付にいた。

「一番良い個室なら空いてる。夕食と朝食付きで銅貨15枚。食事無しなら銅貨13枚。トイレと浴室は部屋についている。」

へぇ、トイレと浴室付き。

ちょいお高いがトイレと浴室付きなら妥当なのか?

食事付きの料金を払って部屋の鍵を受け取る。

「夕食は7の鐘から8の鐘まで、朝食は2の鐘から3の鐘の間に食事処で食べてくれ。」

ちなみにこの世界の1日は大体30時間位。

1刻は3時間位で1刻毎に鐘が鳴る。

個人で時計は普通持たないから、みんなこの鐘を目安に生活してる。

役所なんかにお勤めしている人は3の鐘から6の鐘までが勤務時間だったりする。

ギルドは2の鐘から8の鐘まで買い取りや依頼の受注なんかをやっていて二交代制の勤務なんだとか。

町の市場は2の鐘から7の鐘までやっていて途中4の鐘から5の鐘までは閉まっている事が多かった。


部屋は二階の突き当たり。一番良い部屋と言うだけあって結構広め。

調度品は、まぁ、普通?

浴室はと言うと、オォ!浴槽があるよ!

ほぉー!魔石で水とお湯が出ると!

排水も魔石を使って処理しているのね。

うん、うん、これならあのお値段も納得です。

7の鐘までまだ少し時間があるからお風呂に入ってしまいましょう!

ちょいテンション高めになっているのは自覚している。

拠点に行けばお風呂はあるけれど、逆に言えば拠点以外でお風呂でまったりした事がない。

今日は朝からずーっと歩いてたわけで、まったりする正当な理由もある!

熱目のお湯を水で適温にしてお風呂タイム。

石鹸やシャンプーの類は自前のものだけど満喫しましたとも!

お風呂上がり、普段着を着るのはやめて、蜘蛛の魔物の糸から作ったワンピースを着る。

領都には魔物素材から作った服を着ている人がそこそこいたので。

7の鐘を大分過ぎたけど、8の鐘まで2時間位はある。

食事処に行くと結構混んでいる。

案内されたのは店の奥の席。

小さなテーブルに1人分のセッティングがされていた。

席に着くとそれほど待つ事なく料理が運ばれて来た。

コースと言うより定食って感じ?

生のハーブや根菜のサラダ。ゼリーよせみたいになっている。鳥肉の…多分このお肉はアヒルもどきの魔物だね。臭みの無い美味しい肉なんだけど買うと結構なお値段がする。…シチューには小さくカットされた、いや違う。大きくカットして煮込んでいるうちに煮崩れた野菜がたくさん入っている。うーん、美味!ニジマスもどきの魚の魔物を蒸してほぐした身とハーブを混ぜて焼いたもの。胡椒とハーブでピリ辛で。いいね!これ、今度真似してみよう。定番の雑穀使った硬めの食事パン。薄くスライスしたものが二枚。デザートに一口大にカットされた胡瓜もどき。甘いクリームがかかっている。これは見た目は胡瓜そっくりなんだけど、味はちょっと酸味のある苺っていう…

実は植物の魔物で収穫しようとすると攻撃してくるんだよ。初めて出会った時に殴られた。

食事と一緒にハーブのお茶も来た。

これで珈琲が有れば完璧なんだけど、この世界でまだ珈琲に出会ってはいない。

私と同じものを食べているのは宿泊客かな。

単品料理にお酒って人もいるね。

仕事帰りに一杯ってやつ?5〜6人でワイワイ宴会しているグループも結構いるし、カップルで食事してる人もいる。

子供がいないのはお酒を出すお店だから?いや違うか。

この世界、庶民は6才から働くんだよね。6才からなんらかの見習いとして働いて、順当に行けば12才で見習いが取れる。成人は15才。

単に旅する子供がほとんどいないって事と、値段的にも雰囲気的にも子供向けの店じゃないって事だろう。

私の外見年齢は十代後半から二十代前半だろう。実年齢は数万才?億に届く?界渡りを何度も繰り返しているから年を数えるのは無意味だね。

変化の魔法を使えば外見なんてどうとでも変えられるし。

今はいちいち面倒だから変えて無いけどね。


食事を食べ終わってからもしばらくお茶を飲みながらぼんやりしていたが、8の鐘が聞こえたところで部屋に引き上げた。

明日は巡礼者らしく領都の神殿に参拝して、観光するつもりだ。

王都に行く道のりも調べる。

数日領都で過ごすつもりだが、位置的にこの宿だと不便だから中心地の宿を取るつもりだけど、そのうち食事しに来るのはありだね。


拠点に行く事も無く一晩ゆっくり寝て、朝食も期待を裏切られることなく堪能。

宿で教えてもらった中心地行きの乗合牛車に乗って神殿の前で降りた。

巡礼者は都に入るのは徒歩だけど、入ってからは乗り物で移動するのはありなんだって。

よくわからない習慣だ。

神殿には葹療院、孤児院、修道院が併設されている。

一般の人に紛れて参拝した後、ギルドの本店にやって来た。

狩人ギルドの依頼書をざっと眺めてから買い取りのブースに行く。

巡礼者は巡礼に出る時に各ギルド員としての資格を一度失う。

何者でもない者として巡礼しなくてはいけないからという事らしい。

ギルド員では無いので依頼を受けたりはできないが、巡礼者は各ギルドでギルド員に準じて買い取りをして貰える。

依頼書が貼ってあったカラビンの魔物の素材を売る。

カラビンっていうのは狼もどきのことだ。

襲ってきたのをやっつけたはいいが、食べても美味しくないし、取れる素材に必要なものは無いしで、収納したはいいが不良在庫と化している。

一般にはカラビンから取れる素材は武器や防具、魔道具などに需要がある人気の素材だ。

狩人が集団で退治する魔物をどうやって倒したのかとか、面倒な詮索受けそうで町で売り捌くのは控えていたんだけど、巡礼者なら「加護により」って言い訳できるからね。

さすがに在庫を一気に捌くと目立つだろうから一匹ずつ買い取りしてもらおう。

買い取りブースでカラビンを丸ごと一体引き取ってもらいたいと告げると、巡礼者の札を確認した担当者は特に驚く事なく受付の横の広いテーブルの上に出す様に言う。

うーん、5メートル四方のテーブルだと乗らないんだけど。

「もっと広い場所の方が良いと思います。」

それを聞いて少し目をみはったが、何も言わずに解体場に案内してくれた。

広めの体育館位の解体場では数人の男性がそれぞれ解体作業をしていた。

「ケビン、ちょっと来てくれ。」

そのうちの1人を呼びつけると「こちらの巡礼者の方がカラビンを一体出すから場所を空けてくれ。」

「カラビン?でかいんだな?あー、じゃあ、そこの空いている所に出してくれ」

10メートル四方の何も置かれていない床にマジックバックから無造作にカラビンを出す。

ギョッとした様に目を見開く職員達。

ですよね。驚きますよねー。

拠点の森の魔物だからこの辺りの魔物より大きいんです。

これがこの世界の標準かと思ってたから町のそばで出会ったカラビンが狼もどきだと知った時は逆の意味で私も驚きましたー。

内心そんな事を思っているうちに、ワラワラと職員さん達が集まってきた。

「なんだこれ⁈変異種か⁈」

「でかい‼︎」

「傷が無いぞ⁈どうやって仕留めたんだ⁇」

「急所を一撃か‼︎あんたがやったのか⁈すげえな‼︎」

みなさん大興奮だ。

固まっていた受付の男性がようやく再始動する。

「査定に時間がかかるので、7の鐘の後にまたおいで頂けますか?明日でも構いません。これだけ規格外に大きなものですと、解体してからで無いと正確な価値がわかりません。解体の後、値段に折り合いがつかず買い取りをやめる場合には、正規の解体料金がかかります。解体料金は銀貨3枚。先払いになります。買い取りする場合には全額返金します。」

「わかりました。では明日の朝伺います。」

受付に戻り銀貨3枚を預かり票と引き換える。

ギルドの売店で領都の簡単な地図が売っていたので鉄貨10枚払って購入した。

ギルドを出ると、早速地図を広げる。

ギルドの裏手を少し行ったところに領都最大の市場がある。

市場の周辺には宿や食事処、お店などが点在している。

市場を見つつ今夜の宿を決めてしまいましょう。

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